第22話○無視


 その次の日から、私は事務所の中で一人になった。

 薬入れ替え事件は結局私のせいになり、同僚も私を庇うことはなく、彼とも気まずくなってしまった。


 連携が大事な仕事なのに伝えても反応がないので、伝達事項はメモにして机に貼ることにした。


 私が何よりつらかったのは、あれ以来彼が私のことを避けるようになったことだった。

 所長は私が事務所の雰囲気を悪くしていると思い込み、どんどん冷たく意地悪になっていった。


 ある日ふと彼の机を見ると、彼がカギにつけていたはずのお揃いのクマが机の隅に置かれていた。

 書類やメモは入れ替わり立ち替わり無くなっていくのに、何日も何日も同じ所に……


 私はそれを決別のサインのように感じていた。

(いっそのこと捨ててくれればいいのに……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る