第8話○プロポーズ


 彼と一緒に映画を見に行った1ヶ月後、私は夫にプロポーズされた。


 私が夫と出会ったのは大学1年生の時だった。

 夫とは同じ大学の同じゼミで……飲み会の幹事をたまたま一緒にやったのがきっかけで連絡を取るようになった。


 そして(よく電話が来るな~)と思っていたある日、突然告白された。

 初めてのことでびっくりし過ぎてよく分からないままOKし、初デートで『秘密』という映画を見に行った。


 私達は、よく大学の帰りに近くのファミレスやラーメン屋に行ったり、漫画喫茶やカラオケでデートをした。


 初めて一緒のクリスマスの日には編み物に挑戦して手袋をプレゼントしたり、ケーキを作ってお祝いした。

 バレンタインには色んな種類の手作りチョコをプレゼントしたり、誕生日は某テーマパークなどお互いが行きたかった場所でお祝いした。

 長期の休みには一緒にバイトをしたり、旅行や夫の実家に行ったりもした。


 大学を卒業して就職してからも付き合いは続き、一緒にいることが当たり前になっていた。

 色々ケンカもしたが、自分に自信がない私にしょっちゅう「好きだ」と言ってくれたり、仕事で色々あった時も親身になって話を聞いてくれた。


 新しい職場にもすっかり慣れて、前の職場では信じられない程楽しく生活できるようになったので、(いつか恩返しができればいいな)と思っていた。


 そんなある日、夫の父方のおばあさんが倒れた。

 おばあちゃん子の夫と何度か面識がある私は急いで実家に帰り、病院に行くと手の施しようがない亡くなられる間際の状態だった。


 私は少しでも安心してもらいたくて、手を握りながらおばあさんに言った。


「これからは私が彼のそばにいますから……」


 その後、私は夫にプロポーズされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る