第7話■映画


 ある日、前々から彼女が見たがっていた映画をなんだかんだで職員三人で見に行くことになった。

 仕事帰りに一緒に……のはずが、当日もう一人の女の同僚が急に都合が悪くなり、結局二人きりで行くことになってしまった。


 今まで二人だけでおおっぴらに出かけたことはなかったので、(彼氏いんのにいいのか?)と思ったが、彼女は至って普通で自分が見たい映画だからか行くことをためらっている様子はなかった。

 ただ、その日は水曜日でレディースデーだったので、自分だけが安くなるのを気にしたらしい彼女が着替え用に置いてある自分の服を持ってきた。


「悠希くん女の子っぽいから女装すれば大丈夫かも……」


(いや無理だろ……)と思ったら着れた。

 もちろん倫理的に着ていかなかったが……


 映画のチケットは各自で買ったが、当たり前のように払おうとする彼女がちょっと不憫でジュースをおごった。

 すると「いつも割り勘だから」と慌てて払おうとし、最終的に何度もお礼を言われた。

(益々不憫なやつだな……)


 予告が終わるギリギリの時間に駆け込み、彼女が僕の右側に座った。

 暗闇の中、一瞬の静寂の後……映画が始まる。


 それは『手紙』という題名の恋愛映画だった。

 男女がすれ違い、別れた後にお互いの愛に気が付く物語……

 主人公達はなんとなく僕らに似ている気がした。


 『BIRTHDAY』というエンディング曲を聞きながら、暗闇の中ですすり泣く彼女。

 見終わった後、「泣いてたでしょ」「泣いてないよ」で一悶着あったが、特別な彼女が見られた気がして嬉しかった。


「顔が似てると運命も似ちゃうのかな……」


 彼女が呟いた謎の言葉が少し気になったが、彼女はすぐに「なんでもない」とはにかむように笑った。


 このまま彼女といる時間がずっと続くような気がしていた……

 あの話を聞くまでは……

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