第27章 星屑爆弾

上官の話の要約として、悠太はこう理解した。

 あの結晶体を壊せば、月面計画自体が頓挫する。あの石を壊さなくてはならない。

 しかし結晶の周囲一〇メートルには監視カメラが仕掛けてあり、ぐずぐずしていると調査員が降りてくる。

 結晶体は、おそらく空気に触れれば崩壊する。あのガラスケースを壊せば、野望は阻止されたことになる。しかしあのガラスは防弾ガラスで、物理攻撃はおろか、拳銃の類でも傷付けることは出来ない。

 あれを破壊するためには、爆弾並みの威力を持った火器か、それと同等の威力を持った兵器を使い、一度に強い衝撃を与える必要がある。

「詰みじゃないですか」

 小林が、力なく言った。

 悠太も同感だった。

 そもそもここに来る時、何重にも身体検査され、身体中をスキャンされまくってここに来ることを許可されている。何も武器の類を持ち込めないよう、予め仕組まれていたわけだ。

「いや、待て。しかし、対抗手段が無いわけじゃない」

「あるんですか?教えてください」

 小林が言った。

「実は、特待生クラスではな、近いうちに地球の資源に頼らず鉱脈を発見する手段が考えられていた。その中に、ここで爆弾を自作する手段が、理論上だが、考えられていたんだ」

 上官は、そう言うと、紙とペンを取り出して、説明を始めた。

 爆弾と言っても、そんなに複雑な仕組みではなかった。

 ここで採取されたスターダスト、それを細かく砕いて、おが屑、石炭と一緒に混ぜる。後は、それを何かの容器に詰め込んで、着火する。すると、一気に内部の空気が膨張して、粉々に弾けるそうだ。

 スターダスト自体はそれほど固い鉱石ではないし、おが屑はここに持ち込まれていたものがある。石炭も、悠太たちはここで採取していた。

 あとは、理論上の作品を再現すればいいわけだ。

「小宮山さん」

 小林が、小声で言ってきた。

「なに?」

「その爆弾とやらを考えた人は、教えた人たちに利用されるとは思わなかったんでしょうかね?」

「さあ、どうだろう」

「ちなみに、これはそのうち、月面の鉱産を開発する時、ダイナマイトの代わりに利用されるはずだった。試作品を爆発させるのを私も何度か見たが、小型のペットボトルの容器で代用できるだろうな」

上官が、小林に厳しめの視線を送った。

「なるほど」

 小林は、ぷいっと視線を逸らした。

「これを、今からこの先の実験室に籠って、作るんだ。

 幸い、ここの近くには、以前掘られた坑道があって、石炭はある。あとの材料は、私が地上から持ってくるから、その間、君たちはこの奥で隠れながら、爆弾の開発をしてもらいたいのだ」

上官は、そう言った。

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