俺の姉と幼馴染は……
激写
顔を赤く染め、俯きながら俺の枕を胸に抱きかかえる姉、五十嵐カザネ。そしてそれを無心で見つめる男、五十嵐タクト。
圧倒的カオスな状況真っ只中で俺の部屋、
さぁ、どうしたもんか。
残念なことに俺は某ラノベ主人公のような鈍感主人公ではないため、見なかった振り、又は知らないふり、というのは出来かねる、だがソレ以外でこの状況を回避できるすべを持たない俺は、只でさえない脳みそをこねくり回して出した結論が、
「姉ちゃん、……ブラコンかよ」
「はう!?」
ありのままを伝える、と、いうことだ。
因みにその言葉で姉に致命傷を与えたことに関しては俺の知るべきことではない。
「学校ではクールぶってる会長様、家では弟の枕に顔を埋めて表情を恍惚させるブラコン姉貴……」
しかしこの状況は大変俺にとって有利だ、何せ俺の目的はこの姉を陥れることであり、その為ならば自らの犠牲など厭わない。
だから俺はここぞとばかりに姉を攻め立てる。
「コイツはいいネタだぜ!! 姉ちゃんには悪いがコイツを使って姉ちゃんのイメージを百八十度変えさせてもらう!!」
俺はベットに女の子座りで座っている姉に指を指して高らかに宣言する、
「……た、タッくん」
姉はこちらを見上げて瞳を潤ませている、不覚にも可愛いと思ってしまったのは何かの間違いだろう、
頑なに目をそらしているのは恐らく部屋の埃が俺の瞳に入ったからだろう!!
「こ、これで姉ちゃんの学校生活も終わりだな、俺はこのネタを公表し、姉ちゃんを生徒会長の椅子から引きずり落とした後で、ついでに生徒会長にでもなってやるぜ」
そんな俺の言葉に、
「いや、それは無理だと思う」
「う、うるさい!!」
真顔で正論言うな! そんな事俺が誰より知っとるわ!
「と、とにかく! 姉ちゃんの弱みは俺が握った。今までの非礼を詫びるなら今の内だぞ!」
そうだ、俺はあの天下の生徒会長様の弱みを握っているんだ、ここで攻撃せずしていつ攻撃するんだ、
恐らくこんなチャンス二度と来ない。
しかし、目の前の姉ちゃんは俺の言葉には臆せず、それどころか不敵な笑みを浮かべる、そして、
「ふふふ……私の弱み? 何を言ってるのかしら?
……そんなもの、弱みでもなんでもないわ、いいわ、公表するならしなさいタッくん、しかし、これだけは覚えておくことね」
そういうと姉は腰に手を置き、反り返りながらドヤ顔でこう言った。
「世の中には情報だけでは屈服させられない事もあるわ!」
「な、なん……だと!?」
俺はオーバな反応をして姉に乗っかってあげる、それが礼儀というものだろう、何せ悪役はヒーローの長ったるい変身時間を律儀に守ってやるものなのだから、って、悪役って認めちゃうのかよ。
「いい? よく聞きなさい? 私には人望という名の武器があるわ、しかし悲しきかな、タッくんにはそれがない、残念なことにね」
「余計なお世話だ!!」
「そして私とタッくん、互いの主張をぶつけたとしましょう、そしてどちらがただしいか決めるのはその他大勢よ」
憎たらしい態度で勝ち誇ったかのようにベッドの上から俺を見下ろす姉、まぁ、言いたいことは大体わかる、確かにこのままでは俺の主張はその他大勢には届かない。
「そして私は信頼厚き生徒会長、対するタッくんは人望ゼロの生徒Bよ、どう考えてもわたしには……」
「言いたいことはそれだけか!」
姉の言葉を途中で遮り、俺は切り札を切る。
「……姉ちゃんの言ってることは確かに正しい、俺、生徒B、いや、不良Bである俺の主張など生徒会長様に刺さるわけがない」
まるで某裁判ゲームのように、俺には切り札たるものがあるのだ、姉はソレの存在を忘れていたらしい。
「しかし、俺の真実たる主張を、生徒会長の姉ちゃんより人望も信頼もある、広報委員会の出す校内新聞のネタとして提供したらどうだ?」
「な、何ですって……」
我らが十河高校の特色をひとつあげるとしたら、ソレは校内新聞の異常なまでの支持率だ、誰もが興味を抱きそうな記事を書き、そして圧倒的な影響力、この学園で一番支配力が強いのは広報委員会と言っても過言ではない。
そしてその人気度も圧倒的で、月三回程出版される『十河新聞』は近所のおじいちゃん逹にも大変人気である。
そんな十河新聞だが、これに一度名前が乗ったらもうその人物は一年ぐらい顔をあげて街を歩けないだろう。
……色んな意味で、
「さぞかし大スクープだろうな、あの生徒会長がまさか重度のブラコンだとは」
「そ、そんなことをしたらタッくんの地に落ちてもはや穴掘りまで始めている評判も、ブラジルまで開通するわよ!」
「俺は姉ちゃんを陥れる為だったら自分の評判などどうでもいい!」
そんな風に言い争いをしていたら、
カシャ! と、不吉な音がなった、その音の発信源は俺の部屋に一つだけ設置されている窓の向こう、隣の家に立つデカイ木の枝の上から。
俺はすぐさま窓を開けて盗撮の犯人を視認する、姉も外を見るため俺の背中に抱きつきながら頬を寄せる、
そして、カシャ、と、もう一枚、
「二人とも仲良しで何よりだね、この仲良しさをボクはみんなに伝えたい!!
よって……スクープだよね☆」
キラリとウィンクをし、枝の上から死刑宣告を行なったのは、
広報委員会会長、もとい、俺と姉ちゃんの幼馴染、
春日井マドカ、別名、
『死を告げる(フ)レンズ』
この二つなの意味はいつでもそばにいる死を告げる(フ)レンズ、うん、我ながらいいネーミングセンスである。
と、そんな事を考えつつも、枝から飛び降りた春日井を沈黙しつつ目で追う俺と姉は恐らく同じ事を考えただろう。
『『……これはヤバイ』』
と。
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