第69日「せんぱい、明日はいつ頃学校に行きますか?」

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 今日は祝日だというのに後輩ちゃんに連れ出され、家に帰ってきてからは宿題を片付けている。

 文化祭期間だからって、課題をいっぱい出すのは違うでしょ。確かにさ、運動部の奴らは特になにもすることないから暇なのかもしれないけどさ、文化部はいろいろやることあるの。

 まあ俺は、文化部の中じゃあ暇な方か。準備日の1日目、つまり開催2日前に暇してるわけだし。

 グループLINEで回ってきた連絡によれば、生徒会では、明日は朝11時に集合してバザーの設営をするそうだ。生徒会長だから、一応連絡はもらっている。組織の長なのに、流す立場ではないんだけど。まあうちの学校の生徒会長ってそういうもんだし。


 と、そんなことを考えながら、心を無にして単純作業の課題をこなしていたのだが、ようやく終わりが見えてきた。

 時計を見ると、もうじき23時半だ。キリがいいし、ひょっとしたら後輩ちゃんから何かLINEとか来るかもしれないし、寝るか。


まはるん♪:あの、せんぱい

まはるん♪:まだ起きてます?


 布団の準備をしてからスマホを見た。まさか、本当に来ているとは思わなかった。


井口慶太 :起きてる、というか

井口慶太 :もう寝る

まはるん♪:あ、いっしょですね


 もともと、寝る時間合わせて手先足先が温まるまでお話しましょうとかそういう話だったはずだ。それが何日か経つうちに、適当にLINEをするだけになってしまっている。


まはるん♪:というか、今日ははやいですね

まはるん♪:寝る時間

井口慶太 :宿題のきりよかったから

まはるん♪:出た

まはるん♪:宿題早く終わらせちゃう人


 ちょっと面倒なことは、前倒しでやってしまうタイプだ。

 もっと面倒なことは、現在進行系で放置してしまっているけれど。


井口慶太 :面倒だしな

まはるん♪:めんどうだからやらないんじゃないですか、ふつう

井口慶太 :じゃあ俺がひねくれてるんだろ

まはるん♪:ひねひねですね

井口慶太 :なんだそれ


 こんな調子で、他愛のないLINEを交わすことが日課になりつつある。


 * * *


 ラインをつなぎつつ、日付が変わるのを待っていました。

 もちろん、聞きたいことがあるからです。


井口慶太 :あ、0時だ

まはるん♪:金曜日ですか

まはるん♪:せんぱい、「今日の一問」です


 さて、これで、24日になりました。


井口慶太 :うおう

井口慶太 :これいきなりやられると結構びっくりするのな


 そうですよ。いつだかのしかえしです。


まはるん♪:せんぱい、明日はいつ頃学校に行きますか?

井口慶太 :は?


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 いきなり「今日の一問」するとか言われて。

 どんな質問が飛んでくるのやら、と身構えてしまったが、聞かれたのはどちらかというと事務連絡みたいな質問だった。思わず「は?」と返してしまう。


井口慶太 :「明日」だったら、たぶん昼すぎとかになると思うけど

まはるん♪:あ。

まはるん♪:「今日」でおねがいします

まはるん♪:せんぱいのいじわる


 はいはい。


井口慶太 :今日はね、えーと

井口慶太 :11時に学校集合

まはるん♪:なるほど

井口慶太 :後輩ちゃんは?


 文化祭の準備日だから、人、というか所属部活によって集合時間が変わるのだ。

 生徒会は特に大掛かりな設営をするわけでもないから、割と遅めの時間だけれど。


井口慶太 :おーい


 既読無視された。これってそういうことなんだろうか。


井口慶太 :↑↑「今日の一問」で

まはるん♪:使っちゃっていいんですか?

井口慶太 :使わせといて何を言う

まはるん♪:えへへ


 なんだその3文字。かわいいぞ。


まはるん♪:美術部は10時集合です

井口慶太 :がんばれ。

まはるん♪:え

まはるん♪:せんぱい、いっしょに来てくれないんですか?


 もう俺さ、今日、つか昨日か、つきあったからね? 後輩ちゃんの買い物というか、キンコーズ訪問。あれどう見ても美術部の仕事だし、俺の管轄じゃないと思った。

 それに、平日なのにいつもより2時間くらい長く寝てる背徳感みたいなの、味わいたいし。


井口慶太 :行かないから


 そんなことより、気になっていることがあった。


井口慶太 :なあ、それよりさ

まはるん♪:はい?

井口慶太 :なんでこれ、「今日の一問」で聞いたんだ?

井口慶太 :別に普通に質問すりゃよくないか?


 そう。

 別に特に面白い質問ではないし、内面に関わる質問でもない。

 なんでだろうって、最初から思っていた。


 * * *


 あー。

 せんぱいが、わたしより早い時間だったら、意味があったんですけどね。


まはるん♪:あ、それ聞いちゃいます?

井口慶太 :うん


 時間が間違っていない、そういう確証がほしかったんです。

 わたしの方が遅い時間だったら、せんぱいに合わせようと思ってたんですけれど。でも、意味なくなっちゃったんですよね。だから、どうしましょうか。うーん。


 しかたありません。

 今のせんぱいからの質問は「今日の一問」じゃありませんからね。

 ちょっとくらい隠しごとをしたって、許されるとおもいます。


まはるん♪:気分ですよ、気分


 せんぱいには、ないしょです。

 どうせ、今日はもう会わないでしょうし。

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