第23日「体育の種目、何が好きですか?」
# # #
まはるん♪:せんぱい、さすがに起きてますよね?
まはるん♪:おはようございます
3回ぶりの、忌み嫌われない月曜日。前は、敬老の日だったか。
俺は、目覚めていたとはいえ、ベッドの上で、だらだらネット小説を読んでいた。
スマホは枕元に置いているから、寝転んだまま読書を開始できるというのは、非常にいい。あと、本を両手で支える手間も無く、片手でページめくりまで完結するというのも、とてもいい。
そんな自堕落なことをしていると、LINEの通知が視野にカットインしてきたのだった。
ちなみに、時間はきっかり正午だった。
井口慶太 :まあ、さすがに
まはるん♪:せんぱい、今日って
途中で区切られたメッセージに、身構えてしまう。
「この後あいてますか?」とか続いたら、3連休の3日とも出かけるハメになる。そんなの、俺は嫌だぞ。3日のうちの1日くらい、家でぼーっとして、のんべんだらりとぐでぐでする日があってもいいじゃないか。いや、あるべきだ。
まはるん♪:何の日か知ってますか?
素直に答えてもいいんだけれど、それじゃ言わされた感じがあってつまらない。
何かあてずっぽに言って、当たらないかな。俺が知ってる記念日はそんなに多くないから、そもそも推測の種自体が少ないけれど、がんばろう。
勘で言って当たりそうなのは語呂合わせ系だよな。歴史と一致とかのタイプは俺は知らん。えーと、今日は10月9日だから。
井口慶太 :塾の日、とか?
まはるん♪:それもそうですけど、、
まはるん♪:ほかですほか
まだだ。もう一度引っ張りたい。んーと、他には……
10とか9とかを別の読み方すればいいんだ。きっと。
10って、「とう」って読むよな。そしたら……
井口慶太 :
まはるん♪:はい。浜急ユーザーのわたしたちには関係ないですね
井口慶太 :うっせえ。たまには東急だって乗るわ
こないだの学園祭の大学行く時とか。
まはるん♪:にしても、よく思いつきますね、せんぱい
まはるん♪:ウィキとかみてたりしませんよね?
井口慶太 :そんなチートはしてないです
見るとしたら、答え合わせだな。このやり取りが一段落したらになるけれど。
まはるん♪:あーもう、せんぱい。今日は体育の日です
まはるん♪:せんぱいも大喜びの祝日です
井口慶太 :勝った……!
まはるん♪:なににですか
井口慶太 :「どちらが先に体育って言っちゃうかなチキチキチキンレース」
まはるん♪:わたし、参加した覚えないんですけれど
井口慶太 :まあまあ
我慢比べ、になるのかなあ。あとは俺の発想力というか連想力次第。
まはるん♪:体育ということで、今日のせんぱいへの「一問」はこれです
まはるん♪:体育の種目、何が好きですか?
質問への持って行き方、はじめからうまいとは思っていたけれど、最近磨きがかかっているような気がする。落語家かよ。
にしても、体育の種目、かあ。
「好きなスポーツ」だったら、テニス大安定なんだけれど。体育でテニスをやる学校なんて、めっちゃレアだろう。少なくとも俺がこれまで通ってきた学校では、やらなかった。
うーん……
井口慶太 :ドッジボール、かな
まはるん♪:あらかわいい
井口慶太 :うるせえ、茶化すな
まはるん♪:わたしは思ったことを書いただけです♪
「縄跳び」とかは種目に入るんだろうか。嫌いじゃなかった。
まはるん♪:そもそもドッジボールなんて高校でやるんですか?
井口慶太 :男子だとへたすると死人が出るからな
井口慶太 :めったにやらないし、やるにしてもボールはやわらかいバレーボールだ
まあ、それでもひとりくらいの突き指患者は発生するんだけれど。仕方ないね。
まはるん♪:なるほど……
まはるん♪:どこが好きなんですか?
井口慶太 :ひとりが下手でもチームの大勢には影響しないところ
まはるん♪:あー
まはるん♪:せんぱいらしい理由ですね
井口慶太 :だろ?
ドッジボールは、相手の攻撃は避けまくって、隙あらばキャッチして、パスを回して、相手の陣形が崩れたところにぱこーんと打ち込むゲームだ。
パスを回すだけなら下手でも下手なりに回せるし、打ち込むのは肩の強い運動部の皆さんにおまかせすればいい。下手なやつはほどほどに球を避けて、まあ当たっちゃっても外野でパス回しにほどほどに参加していれば、戦犯にはならないし、ほどほどに貢献した気になれるのだ。
体育の授業で扱うスポーツとしては、いいバランスだと思う。
井口慶太 :例によって、俺からも「今日の一問」
井口慶太 :後輩ちゃんは、体育の種目、何が好きなの?
まはるん♪:わたしは、んー
まはるん♪:バレーボールかなあ
そもそも、女子って何やるんだ?
バレーボールと、バスケと、あと卓球とかもやるのかな、他は……ダンスとか? サッカーみたいのはやらなそうな感じする。
井口慶太 :あれ難しくね?
井口慶太 :サーブ入らなかったら終わりじゃん
まはるん♪:サーブくらい入りますよふつー
おかしいなあ。
俺はいつも、バレーのサーブ打つときなんて心臓バクバクなんだけどなあ。同じチームの奴らに迷惑はかけられない一心で。ジャンプサーブとかしてる人たちはすごいなあって思ってるよ。
井口慶太 :そうか……
井口慶太 :どの辺が好きなんだ?
まはるん♪:あー、考えてませんでした
井口慶太 :お前なあ……
人に聞いといて、自分がいざ聞かれたら答えられないって、それ、おかしいだろ。
まはるん♪:名前、ですかね
井口慶太 :名前
まはるん♪:はい。名前です
まはるん♪:なんか、かわいくないですか? ばれーぼーるって響き
井口慶太 :そうか?
まはるん♪:そうです。かわいいです
まはるん♪:ほら、せんぱいも言ってください
この流れは、何か、危ない気がする。
ここで「かわいい」なんて書こうものなら、どう加工されるかわからない、みたいな。マスコミに囲まれてる政治家じゃあないけれど。
まはるん♪:後輩ちゃんかわいい!って
ほらー。やっぱりトラップじゃん。
俺が「はいはいかわいいかわいい」って入力してノータイムで送信するくらいの時間を見切って、その発言の直前に入るようなタイミングで投稿してきている。これだから、油断ならないんだ。
さて、これにどう返すか。どう返すのが、面白いのか。
ちょっとだけ、考えよう。
* * *
せんぱいのメッセージ間隔は見切った! つもりだったのですが、見切られていたのはわたしだったんでしょうか。せんぱいからの返事は、まだ来ません。
既読はついているので、電池切れとかではなさそうですけれど……
井口慶太 :後輩ちゃんかわいい!
あ、来ました。
それにしても、このメッセージ内容は……明らかに、わたしの書いたのを見てから書きましたよね。何も考えずにぼーっとスマホをいじっているせんぱいを想像していたんですけど、思った以上に真面目にこちらにかかってきているのかもしれません。
まはるん♪:なんですか、今のタイムラグ
井口慶太 :名前ももちろんかわいいし
井口慶太 :顔もかわいいし
井口慶太 :動きも、ちょっと毒舌なところも
まはるん♪:あの、せんぱい?
井口慶太 :かわいいよ
まはるん♪:酔ったりしてませんよね? 違法ですよ?
いきなり親御さんに見つかって、お酒を飲まされたとか、そんなことはないですよね。
井口慶太 :いや、酔ってないし
井口慶太 :ともかく、上みたいに思ってるのはほんとだから
何があったんですか。あんなに素直じゃないせんぱいが。対面ではないとはいえ、こんなことを言ってしまうなんて。
今日ばかりは、ラインでのやり取りでよかったかもしれません。
こんなにやけ顔、あの人に見られたら、どういう風にいじられるかわかりませんから。
色々書きたいことはありましたし、いっそ通話してみてもいいなって思いましたけれど、そんなことをしたら、わたしの感じているものがせんぱいにバレてしまう気がして、それはまだ隠しておきたくて。
結局、せんぱいに送ったのは、送れたのは。こんな11文字だけでした。
まはるん♪:ありがとうございます♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます