熱狂のあとで思うこと
さて、新しいソーシャルメディアとして注目を集めた『Mastodon』の日本での広がりを『Pawoo』を中心にしてお送りいたしました当コラム。長い間更新せずに申し訳ありません。
30万ユーザーを超えたあたりで更新しようと思ってましたらいつのまにか達成していたようで……おめでとうございます。'17年10月25日のことのようです。
20万ユーザー突破した時に企画されたマスコットキャラのイラストを募集した『20歳のパウ―ちゃん』というコンテストがあったのですが、その計算でいくとパウ―ちゃんはわずか半年ほどで10歳……それ以上はいけませんね。
『Pawoo』をめぐっては、Twitter上で再びちょっと話題になり、多くの方がつぶやいた「トレンドワード」に登ったこともありました。
それは'17年9月29日、Twitterでも一部のアニメファンの間で恒例行事となり、日清食品さんなど名だたる企業も数多く乗っかるようになった「バルス祭り」の時でした。
「バルス」というのはジブリの名作アニメ映画『天空の城ラピュタ』に出てくる重要な呪文です。幾度となく再放送されているのでいまさらネタバレに配慮する必要もないようには思われますが、それでも一応このように述べるに留めたいと思います。
スタジオジブリさんの映画はどれも名作で、老若男女に楽しまれているわけですが、『ラピュタ』はその中でも特異な扱いを受けています。
地上波放送される時に多くのアニメファンがこぞって映画の内容やセリフ、感想をリアルタイムで「実況」することで一体感を得るのです。
この「祭り」はクライマックスで発される「バルス」なる謎めいた呪文をみんなで同時に唱えることで最高潮に達します。
当初はあまりにも大勢の人が同時に「バルス」と書き込むものですから非常に大きな負荷がかかり、処理が追いつかずサーバーがダウン。しばらくの間Twitterにアクセスすることができなくなってしまう事態に陥っていました。
そんなことがあって以来、『ラピュタ』の地上波放送があるたび、サーバーのストレステストのごとく「今回はTwitterはサーバー落とさず無事乗り切れるか?」といったことを見守りつつ参加する「祭り」が恒例化していったのです。
この『ラピュタ』実況――「バルス」祭りに『Pawoo』は耐えられるか?
運営元のpixivさんはこの日に備えてサーバーを増設し態勢を整えました。
――結果、どのようになったでしょうか?
Twitterのほうではさすがに何回も恒例となっているのでサーバーのダウンは起こりませんでしたが、『Pawoo』では想定以上のトゥート(書き込み)に耐えきれずダウンしてしまいました。
この様子が面白おかしくTwitterにも伝えられたことでちょっとした話題となったのです。
そのような形で話題に登ることもありましたが、11月3日現在の『Pawoo』および『Mastodon』はブームから一段落したように見受けられます。
とはいえ現在もユーザー数増加は途切れず、一部の絵描きさんは居心地のよさを感じて定着しています。絵描きさんとそのファンとの交流ツールとしては一定の地位を占めつつあるようには思います。
しかしそれ以上に日本におけるTwitterのユーザー数が増加。
一時は「身売り」が検討されるほどだった業績も回復傾向にあるということで勢いを取り戻している状況があります。
なので、そのままTwitterを主要な活動場所としているクリエイターさんも数多くいらっしゃり、多くの人が移住ないし併用するというまでには至っていない、というのが『Pawoo』を取り巻く現在の状況ではないかと思います。
当コラムを集中連載させていただいてからおよそ一月あまりが経った今あらためて申し上げるとするのでしたら。
Twitterの代替を目指すよりは、その補完を行う場所――好きな絵描きさんとより近い距離感で交流できるコミュニティとして無理せず少しずつ発展するのが望ましいのではないかと、個人的には思います。
絵描きさんとなると、1,000人以上、トップクラスですと100,000人以上もの膨大なフォロワーさんを抱えています。そうなりますとほぼ必然的にすべてのユーザーさんを把握しつつ交流することなど実質不可能に近いといえます。
その点、ある意味で『Pawoo』ほどの規模ならば把握しやすい人数のユーザーさん同士でコミュニケーションが図れるのではないでしょうか?
宣伝や拡散の意味では大きく穴を開けられてるでしょうけど、見方を変えれば、よりコアなファンを取り込むことのできるチャンスが眠っている場であるはずです。
そして万が一Twitterないし他のサービスが使えなくなってしまう、という可能性もいまだゼロではありません。『Pawoo』への移住を呼びかけたアダルトを主戦場とする同人絵描きさんだけでなく、非アダルト分野――背景を中心に描いている絵描きさんも一時凍結されるなど、創作界隈の間では予断を許さない状況が続いています。
かつて話題を集めた時のように、いざという時のための「避難先」という形で『Pawoo』ないし他のインスタンスを選ぶことも依然として有効な選択肢といえるのではないでしょうか。
『Pawoo』ないし『Mastodon』はいまだ発展途上にあると同時に、将来のユーザーさん獲得の受け皿となりうる多くの可能性を残していると思います。
イラスト鑑賞が好きないちユーザーとして、これからも『Pawoo』さんを利用させていただきながら、今後の行く末を見守っていきたいと思っております。
最後になりましたが、当コラムが『カクヨムチャレンジカップ フクロウ杯』と題されたコンテストの、全4回に分けて競われている中での第1回おいて7位入賞と相成りましたことを、深く御礼申し上げます。
とはいえ、私個人と致しましても「次は小説サイトの投稿者として、小説でも確固たる結果を出したい!」という思いを新たにしているところでございますので、当コラムや、第2回のフクロウ杯で20位となりました過去のエッセイ『私書店員~』などを通して、「コイツはどんなヤツなんだろう? ほかにはどんなものを書いているんだろう?」とご興味を持たれた方はどうかほかの私の作品にも触れてみてくださいませ。
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