第7話
ビール、チューハイ、カクテル、白ワイン、赤ワイン、スパークリングワイン、梅酒、清酒、焼酎…………
たくさんの酒。
そして、もう一つの袋がひっくり返されると、中からはこれまた大量のおつまみが現れた。
そのおつまみは僕とは全くかぶっていない。
茶豆にから揚げに揚げ出し豆腐に焼き鳥に鳥軟骨にちくわにチーズ…………
僕が買ってきたものとは全くかぶっていなかった。
「わあ、ミックスナッツとかいいてすね!せっかくだから、お互いのおつまみ全部はんぶんこしませんか?」
「ああ、良いよ。」
「やったぁ!」
嬉しそうにおつまみを全部開封していく楓。
「そう言えば、何で僕の家が分かったんだ?」
僕はずっと気になっていたことを訊ねてみた。
もう、すでに二人で宴を繰り広げているというのに、どうしても聞いておきたかった。
そして、もう一つ。
「君はストーカー?」
こっちの質問は、まずあり得ない事だと思いながらも訊ねてしまった。
「そうですね。私が増崎さんの家を知っているのは、仕事場が同じだからです。それで、家の場所を調べてました。それから、ストーカーかという質問の返事はイエスです。自分で考えてみて、確実にストーカーの部類だと思います。」
「同じ仕事場?」
自分の事をストーカーだと言っている人に何て言って良いか分からず、そこはスルーする。
しかし、ストーカーにしてはさっぱりしていて、こそこそ怪しいことをしている感じがないことは驚きだ。
「はい、増崎さんは知らないかもしれませんが、私は研究所内で雑用をやっています。増崎さんはいつも目立っていて、思わず目で追ってしまいます。それで、私は我慢できなくて、増崎さんの家の近くまで来てました。」
何なんだろう…………ストーカーだと告白している相手が、どうもストーカーだとは見えない。
「私の事は、知らなくて当然です。私は増崎さんのように目立つ存在ではなくて、端っこで事務をしているので。」
そんな身長が高い女性がいたら目立たないとかあり得ないような気がするが、そこのところは黙っておいた。
「何度見てもとても可愛くて、是非友達になりたいと思ってしまいます。でも、私みたいに身長が高すぎる女と増崎さんみたいに身長が低すぎる男が並んで歩いたら、一人で歩くより更に目立ちますね。」
僕もそう思う。
僕の身長は120センチくらい。
それに対して、楓は190センチくらいはあるんではなかろうか…………
身長差70センチが、もし並んで歩いたらインパクトは相当すごいと思う。
「僕はいつも研究室に籠ってるから、君みたいな綺麗な人が一緒の職場にいるなんて全く知らなかったよ。それにしても、友達になりたいなんて…………ストーカーするくらいに好いてくれてるのなら普通付き合うとか考えないのかい?」
僕は素朴な疑問をぶつけた。
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