第2話
しかし、その内容は大学で生物学を専攻しておきながらも留年しそうなくらいサボっている美砂子には難しすぎるようだ。
適当に、あーとかうんとかいう返事が返ってきて、僕は話題を変えた。
って、この話題を出してきたのは美砂子の方だったのだが…………
美砂子の関心は、研究機材が子供用のサイズには作ってないので使いづらいのではないかというところばかり。
どうやら、そんなところが気になって訊いてきたようだ。
僕はその興味本位な疑問に苦笑いしながら答えた。
それも飽きてきた美砂子は、やって来た料理を楽しみながら手料理を少し作れるようになったことを嬉しそうに話してきた。
僕の目の前にやって来たのは、一つのプレートに小さなオムライスとハンバーグ、エビフライにスパゲティとカップグラタン。
オムライスにはトドメとばかりに日本の旗が突き刺してあった。
僕は、美砂子に返事を返しながら、その旗を排除した。
「美味し~い!お子さまランチもすっごく可愛い!あっ、旗、もう取っちゃったんですか?勿体ない。」
何が勿体ないだ。
旗で喜ぶのは子供だけだ。
僕にとっては恥ずかしい以外の何物でもないのだから、すぐ取るに決まってるだろう。
口から出そうな気持ちを、エビフライを頬張って封じた。
タルタルソースのかけられたそれはなかなか美味で、少しだけ怒りが治まった。
それから、美砂子はインスタントラーメンしか作れなかった自分がようやくカレーや野菜炒め、味噌汁や卵焼きまで作れるようになったと嬉しそうに自慢していた。
僕は料理が大好きだから、けっこう何でも作るなんてことは黙っておく。
料理をする気になっている人に、やる気を削ぐような事は言ってはいけない。
「それなら、僕に作ってきてくれ。美砂子の手料理とか、是非食べてみたいなぁ!」
「いいですよ!」
美砂子はとても嬉しそうに承諾した。
何だ、美砂子も何だかんだ言っても僕のことが好きなんじゃないか、と嬉しくなる。
「じゃあ、明日先輩の職場にお弁当持っていきますから、楽しみにしといてくださいね!」
…………彼女が、自分の仕事場に手作り弁当を持ってくる。
僕のテンションはマックスまで上昇していく。
僕らは食事を終えた後、買い物に行くことにした。
僕の弁当箱を買うためだ。
ショッピングモールを手を繋いで歩く。
僕と美砂子は、人々の歩くなか絶対に親子連れというカテゴリに分類されている事だろう。
それを認めていないのは、僕だけだと思う。
美砂子も、僕の事を何かにつけて子供扱いしているから異性とデートしているという雰囲気が全くない。
それでも…………僕は傍にいたい。
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