ギャップ萌え?

如月灯名

第1話

あるところにとても可愛らしい男の子がいました────


その容姿は愛らしくて、誰も放っておくことは出来ないと思わせるくらい、惹き付ける魅力を持っていました。



その男の子は、本当は子供ではない。


年齢で言うと、30才だ。


しかし、見た目が10歳くらいのため、周りからは必ず子供扱い。


毎回「僕は子供じゃない!」と怒って否定するけれど、それをちゃんと聞いてくれるやつなんて一人もいない。


そして、僕がお酒や珈琲を飲もうとすると、周囲が過剰に反応してくれる。


そりゃ、30歳にもなれば、酒も飲むし、珈琲なんて毎日飲むのだが。


しかし、それは見た目的にはとても受け入れられないようで、全くの他人にも注意されまくる。


「ボク~、珈琲なんて飲んだら身長が伸びなくなるわよ~」


…………もう成長期を終えて『これ』なんだから放っておいてくれ!


「ボク~、お酒は成人してからじゃないと飲めないからね~お父さんとかお母さんのおつかいかな?」


…………もう、成人してるし!


何度も直接言ってきた言葉も、無駄だと分かってからは心の中でぶつくさ言うだけにとどめるようになった。


口に出さない方が、面倒な事が少なくて済むから。


それでも、やはりいろいろと不便なことばかりで、免許証は必須アイテムになった。


もちろん、都合の良いときだけは子供になりすます。


「藤時くん、お腹空いたからご飯食べに行こう?」


女友達の美砂子に誘われて、夕食を一緒に摂ることになった。


そこは、滅多に行くことがないような、おしゃれなレストラン。


美砂子は女友達の一人とはいえ、僕にとっては片想いの相手でもある。


しかし、美砂子の方はそんなことには全く気付いていない。


「藤時くん、ここのお子さまランチすっごく美味しいらしいんだ!頼んでみてくれない?」


一応、僕の歳を知っているというのに、何て残酷な頼み事!


僕が、子供だと勘違いされるのがどれだけ苦痛かを知っているくせにやってるのはわざとなのか?


しかし、美砂子の嬉しそうな顔が見たくて、しぶしぶお子さまランチを、頼む事にした。


特に何かが食べたいとかもなかったし。


美砂子の注文は豚の香草焼きをメインにしたコース料理で、僕はお子さまランチ…………


美砂子の方が僕より10も年下だというのに、これはあんまりだ。


それでも、美砂子とデートしたりすることをやめないのは、何だかんだ言っても美砂子に夢中になってしまっているからだ。


料理が来るまでの間、僕と美砂子はいろんな事を喋った。


僕が話すのは研究室で使っている、電子顕微鏡や実験器具のこと。


こう見えても、遺伝子学の研究をしている。


別に、自分の姿をどうにかしたくて選んだ道ではない。


この姿でも、格好良いお陰でかなりモテるから。


子供だと勘違いされる不愉快さを我慢すればだが。



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