第9話 そろそろ長いサブタイトルもネタ切れなので、何かないかと頭を捻ったけど何も出て来ないという困った状況なんだけど。そんな事にお構いなしに、ボク以外の三人が話を進めてる。
♠
「君は?」
男が、上樹先輩に眼を向けた。
「私はいかり、いえ、
「獅道瑠璃。なるほど」
何かを納得するように、男が、頷いた。
「かなりズレがあるな。すると、そちらが獅道――」
「
「コーラル!!」
「なるほど。これだけバースが違えば、大きなズレも生じるか」
「あなたは、どこから?」
「知っても仕方なんいだが。――ま、一ついえるのは、マルチバースの外にある世界さ」
マルチバースの外の世界だって!?
「僕の世界では、君の名は
するりと男が動いた。
いつの間にか、手に刀が握られてる。
どこから出したんだ!?
「僕に初めて剣の手ほどきをしてくれたのは、豹堂葵だった」
冷や汗が全身を伝った。
頭のてっぺんから、足の裏まで、全身をびっしょりと冷や汗が濡らしてる。
それに息。
息ができない。
なんだ、これ⋯⋯
鉛のように重たく、霧のようにまとわりつく気配に、身体を包み込まれてる。
動けない。
ボクに抱きついた琥珀さまが、カタカタと震えてる。
上樹先輩も、コーラルさんもだ。
「そして僕を斬りに来たのが翠 だった。これは、その時の
こめかみから頬に賭けて走る、長い瑕跡を指さした。
「戒めのために、消さずに残してるんだ」
「なんの戒め?」
「それはね――」
「そこまでよ」
ズドォォォォンッッッ
警告無しに背後から発射された50口径弾を、男は振り向くことなく刀で切り払った。
その刹那。
上樹先輩とコーラルさんが同時に動いた。
眼で追えない。
気配で動いたと分かっただけだ。
硬い、鍛えた金属が衝突する涼しい音が響いたとみるや、三人が空中に浮かんでいた。
男は、上樹先輩の刀を鞘で、コーラルさんの剣を刀で受けている。
あの両面攻撃を、受け切ったのか⋯⋯
「近くで見ると、本当に佳い女だな」
男がコーラルさん見つめて言った。
「もう少し若ければ、連れて帰ったのに」
「何を言っているの」
床を蹴って一気に間合いを詰めたコーラルさんの攻撃を、するりと外した男が、柄頭でコーラルさんの胸を突いた。
瞬間。
コーラルさんが壁際まで吹き飛んだ。
「セイッ!!」
「おっと」
一瞬にして、男の白いコートがズタズタに裂けた。
「恐ろしいな。やっぱり君の方が葵より腕が立つ」
「母の名は、珊瑚よ」
「コーラル」
「そこ!!」
ズドォォォォンッッッ
三人の間合いが開いた刹那、コンシェルジュさんの対戦車ライフルが火を噴いた。
「おっと」
ズドォォォォンッッッ
ズドォォォォンッッッ
ズドォォォォンッッッ
ああ、壁が。
また壁がボロボロに。
って、何なんだ、この男。
上樹先輩の攻撃も、コーラルさんの攻撃も簡単にいなして、コンシェルジュさんの銃撃も
三方向からのアルファ級の同時攻撃を、こんなに簡単に躱せるなんて凄いヤツだ。
「はははは、やっぱり恐いな。これ以上つきあうと命を落とすから、ここいらで引き上げるとしよう」
男が、そう言った瞬間。
ボクの胸に、男の刀が突き刺さっていた。
「え!?」
ボクの口から血が溢れた。
「
「さあ、
「茜とは、誰のことじゃ」
「ああ、君も名前が違うんだな」
グリッと、男が刀を
冷たい。
なんだ、この刀⋯⋯
氷河のように冷たく。
夜空の暗黒のように、全ての光を吸い込む暗い影をまとわりつかせた、この刃は⋯⋯
「ぐうっ」
膝から力が抜ける。
「彼女はもらって行く。悪いな暁人くん」
「暁人どの!!」
「ボクの琥珀から手を離せ、このヤロウ」
「なにっ!?」
咄嗟にボクから離れた男が、驚いたように引きつった笑みを浮かべた。
「驚いた。もう、そんな真似が出来るのか」
男の額から血が流れ、真っ二つに割れたアイウェアが床に落ちた。
ボクの手に握られた
「テレキネシスを使いこなすとはね。君は、僕よりも強くなるぞ。暁人くん」
「嘘だ⋯⋯」
ボクは愕然とした。
アイウェアの外れた男の顔。
こめかみに瑕が走り、眉間に新たな傷の入った男の顔。
それは――
「マジェンタ。帰るぞ」
「はい」
「伏せて」
上樹先輩とコーラルさんが、ボクの身体に覆い被さった。
その直後。
ペンとハウスが縛炎に包まれた。
♠
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます