第11話


 ♠



 ぁ~っ、死ぬかと想った。



 上樹うえき先輩超恐い。

 ボクは屋上でバーベキューグリルに火をおこしながら、首を左右に振った。

 料理の準備は整ってるから、あとはお客さんが来るのを待つだけなんだけど。

 上樹先輩たちは、もう来てるし。

 あとは師村しむらが来るのを待つだけなんだよね。

 あいつは昔っから、ちょっと時間にルーズなんだよな。


「始めようぜローリー」


 嘉藤かとうは、さっさと出来上がってるし。

 お前、今日泊まる気満々だな。

「そうらアキロー。始めちゃえ」

 河童小娘。

 お前まで、一緒になってなにしてんの。

 マシキュランのイメージ投影装置で、普通の女の子に変身した河童小娘は、か~な~り可愛い。



 うん。



 やっぱり肌色は偉大だ。

 重要なファクターだ。

 緑黄色野菜と抹茶アイス以外で、あの色を美味しそうな色とは思えないしね。

「あ~、も~、お前等も少しは手伝えよ」

「なんだと~、オレらはお客さんだぞ」

「だぞ~」

 河童小娘。

 お前は分かる。

 でも、嘉藤。

 お前はお客さんって柄じゃない。


暁人あきとさま。これはどこに置く?」


 酒蔵から八醞やしおりを運んで来たりんが、ボクに尋ねた。

「そうだな。そこに置いておいて」

 と、ボクはプールサイドを指差した。

 アルコール度数がバカみたい高いから、火の側には起きたくない。

「あら凄いわ。八醞酒ね」

 薫りを嗅いだ上樹先輩が、すぐに気づいた。

 さすが異世界のアルファ級モンスターハンター物知りだ。


「おい暁人。これ何の肉た?」


 創先輩が皿に盛られた塊肉を見て驚いてる。



 ムフフフフ



 それはですね。

「あらグリフォンの肉ね」

 早々に見破られた。

 そりゃないよ上樹先輩~

「グリフォン? 瑠璃るり が前に言ってた、あのグリフォン!? 食えるのか?」

「肉質は、かなり硬いんですけど、食えますよ。かなり美味いです」

 さらにドライエイジングで熟成させてるし。

 アミノ酸が増えて、もっと美味しくなってるはず。


「グリフォン? まじか!?」


 嘉藤が食いついた。

「どこで手に入れたんだよ」

「ちょっと前に部屋に乗り込んで来たんだよ」

「グリフォンが? お前の部屋に?」

「そーだよ」

「なんで、そんな面白いこと、オレに教えないの」

 いや教えるもなにも、教えようが無いじゃん。

 異世界のことが認知されてないんだから。

 って、お前馴染みすぎ。

 適応力高いよな~


「おーい暁人、来たぞ」


 花束と紙袋に包んだウィスキーを手に、師村がやって来た。

「エレベーターフロアーどったの?」

 聴いてくれるな、ボクが壊したんだ。

「ちょっとな」

「瑠璃先輩、お久しぶりです」

 そういってハグをした師村が、上樹先輩に花束を贈った。

 昔っから女の扱いがスマートだよな、師村は。

 花束と酒瓶を同時に持ってさまになるし。


 イケメンって得だよね。


和弥かずや

「創先輩。今日は飲みますよね」

 師村がウィスキーボトルを片手で持ち上げながら言った。

「もちろん。さとるたちは、今日来れないんだって?」

「中元は後から合流するってさっきメールがありました。直志なおしは仕事。まことは音信不通です。どっかで野垂れ死んでなきゃ良いけど」


 それ洒落になってない。


「和弥くん。紹介するわね。私の妹の琥珀こはく。琥珀ちゃん、こちらが私の後輩の師村和弥くん」

「はじめましてなのじゃ」

 イメージ投影装置で黒髪に黒い瞳になった琥珀さまが、変な言葉遣いでぺこりと頭をさげた。

 師村が眼を見開いて、琥珀さまを見てる。


 あ、これマズいヤツだ。


 黒髪に変身した琥珀さまは、師村のドストライクだ。

 そーいや、あいつも上樹先輩のこと好きだったよな~


 案の定、パーティーは荒れた。



 ♠


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