閑話休題 暁人の日常?
第1話 その名はマシキュラン
ボクの名前は
多分、今、この瞬間、世界で最も忙しい男だと想う。
このくだり、そろそろ良くない?
♠
コンシェルジュさんがお客さんを連れて来たのは翌日の事だった。
いままで、色んなお客さんを見て来た積もりだったけど、今度のお客さんはずば抜けて風変わりだった。
「&’☆☆♠@○:☆☆」
「えっと、なんて?」
「はじめまして、私はマシキュランの☆☆と申しております」
申しておりますって、会話が出来るの?
このロボットと。
シルバーメタリックの滑車と歯車とヒンジとチェーンで構成された、見るからにメカメカしいレトロなロボットに、ボクは疑いの眼を向けた。
「ロボットではございません。マシキュランです」
コンシェルジュさんの強い口調に気圧されて、ボクはチョッピリ
今日の彼女は黄金色の瞳に、燃え立つ炎のような赤毛を引っ詰めて丸ブチの眼鏡を掛けていた。
「マシキュラン?」
「左様にございます。マシキュラン」
そういや琥珀さまが以前に、
それと同じモノ?
「マシキュランって何?」
ボクは当然の疑問を口にした。
「ゲートの管理者とでも申しましょうか。ゲートの開発者でもあります」
「ゲート?」
「はい」
「異世界につながるゲートの事?」
「左様でございます」
「このロボットが創ったの?」
「マシキュラン」
語気を強めてコンシェルジュさんが言った。
「このマシキュランが」
「はい」
信じられない。
ミーたんを見つけて、両手を挙げて追い回してるキャタピラ駆動の出来損ないロボットみたいなのが、あの異次元ゲートを創ったってのか!?
有り得ない。
「今から5000世紀ほど昔の事です。金属生命体として誕生したマシキュランは、膨大な知性を持って発生からわずか3世紀で重力の井戸を脱出しました。宇宙という新天地を得て、さらなる多様性を得た彼らは、銀河と銀河を結ぶ超長距離ワープ航法の開発に着手しました。しかし、実験は失敗。3つ太陽系を巻き込む大爆発の果てに、異次元移動の理論を実証するに至ったのです」
SFだ。
SFの話だ。
「♥♥♥♥@:☆☆…◦¥=※※」
「なんだって?」
「非常に可愛い生き物だ。☆☆に譲ってくれないか? と」
「バカ言っちゃいけない。ミーたんはボクの家族だ。見ず知らずのロボットに譲れる訳がない」
「マシキュランですってば」
「マシキュランには、譲れません」
「(TT)☆☆※¥◑◑◑」
「悲しいが諦めよう。だそうです」
良かった。
話の分かるロボットで、本当に良かった。
「マシキュランですよ」
ボクの心が読めるの?
マジシャンですか、アナタは。
「違います」
やっぱりマジシャンだ。
「で、そのマシキュランさんが、今日は何の用で?」
「ひとつには謝罪だそうです」
コンシェルジュさんが言うが速いか、マシキュランが土下座をした。
キャタピラで。
器用だなマシキュラン。
「ちょ、ちょっと困りますよ」
ボクは片膝をついてマシキュランの手に触れた。
暖かい。
人の手のような温もりと、心臓の鼓動のような拍動が伝わって来た。
金属生命体って言ってたけど、良く見ると確かに動力源みたいなのは見当たらない。
「先日のグリフォンの件は、全くこちらの落ち度である。と」
「もう、もう良いから。済んだことだし、ボクにも誰にも怪我はなかったんだから。水に流しましょうよ。ね」
「♥♥♥♠♠♠」
「君は男だ。と、申しております」
君は男だって。
いや、まあ、確かに男だけどさ。
「部屋の損害賠償は全て我々が受け持つ。とも」
「え、あ、はい。それは助かります」
レプラコーンの負担も減る。
「このような事は今後2度と起きないようにする。と、申しております」
それは当然だね。
「さあ、手を挙げて」
「もう、泣かないの」
ボクは思わすマシキュランを抱きしめた。
優しくハグして、背中をポンポンして上げると、ボクの肩がマシキュランの涙でビショビョになってた。
涙もろいなマシキュラン。
「!!!!!!!」
何だ?
一緒にやって来た別のマシキュランが何か騒いでる。
「どうしたの」
「コレ、コレはははは」
あ、こっちは喋れるのね。
彼?
彼女?
が、持ってたのは、赤鬼さんが置いていった
河童小娘の津波に流されて、瓦礫の山に埋もれていたものだ。
「それが何か?」
「コレは、オーグアウラムムムム」
「オーグアウルム? 織波瑠魂でしょう」
「ソウともイう。とても貴重な金属。ナぜココににに!?」
「もらったんだよ」
「オオウ、オオウ、オオウ」
両手で捧げ持って大喜びしてる。
なに?
そんなに珍しいモノなの。
確かに七色に耀く綺麗な石だけど。
飾りでしかない。
「要るならあげるよ」
「オオウ!!」
ピタッと動きの止まったマシキュランの眼が、サイズを大きくしてボクを凝視した。
♠
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