第2話 戦慄!? 三者面談!!


 ♠



 背後からかぶとを支える。

 あれ?

 こんなに軽いモノだったかな?

 前は5キロぐらいに感じてたけど、いま持ってる感じだと100グラムくらいしかない。

 これなら被り続けても首が痛くならないと想う。

 テーブルの上に次々にパーツを並べる。

 うん、やっぱりそうだ前より軽い。

 軽量素材で作られたアクティブアーマーって感じだ。


「ふーっ、すっとしたぞえ」

 そう言った琥珀さまの眼は赤く腫れていた。

 多分、多分だけど、このニュースのショックで泣いてたんじゃないかな。

 ボクは服が汚れるのも構わずに、琥珀さまを抱きしめた。

「ごめんよ、不安な思いをさせて」

「ううん、違うの。わらわが勝手に誤解したのじゃ」

 背中に回された手が、ぎゅっとボクの服を掴んだ。

 あ~、駄目だ。

 駄目だ暁人あきと、我慢、ここは我慢。

 ああああああでも可愛い、可愛いぞ琥珀さま。

 このままだと押し倒してしまう。

「さ、バスルームへ行きましょう」

 琥珀さまが上目遣いにボクを見た。

「もちろん背中を、お流しします」

「わかった、それなら先にいっておる」

「はい」

 ボクは鎧をクリーニングする為にランドリー室に運んだ。

 洗濯機表示されてる鎧モードの使い道がやっと解った。

 取り敢えず胴鎧を一丁だけ入れて試しに回してみた。

 うん、上手く行ってるようだ。

 さて、ボクもお風呂に向かって⋯⋯

「アキト!! これどーゆーこと!!」

 甲高かんだかい声が部屋中に響いた。

 河童小娘かっぱこむすめのご登場だ。



 ♠

 


「これって、どれ?」

 ボクはぶっきらぼうに聞き返した。

 多分、多分だけど同じ要件だと想う。

「アンタいつの間にソードフィッシュのアンジェリカと」

 やっぱりだ。

「だから誤解だって」

「だから、誤解!? アタイはまだ何にも言ってないし」

「⋯⋯」

「これなに?」

 琥珀さまの鎧を指差した。


「えーっと」

「こ、れ、は、なに?」

 一言一句いちごんいっく区切りながら犯罪者を尋問じんもんする刑事のような声色で、ゆっくりと河童小娘が訊いた。

「鎧だよ」

「鎧!? ふ~ん鎧ね。誰の?」

「わらわのじゃ」


 いつまでもバスルームに現れないボクを探しに、全裸の琥珀さまが腰に手をやり仁王立ちで立っていた。

 ボクは片手で顔をおおいながらチラリと琥珀さまの胸を見た。

 相変わらず小ぶりで、ツンと上をむいたきれいな胸だ。

 あ、でも生々しい傷が増えてる。

 きゅーっとボクの胸が切なさで一杯になった。


 幾ら異世界の文化とはいえ、女の子が怪我をするような世界は間違ってる。

「ささ、琥珀さま。まずはお風呂に入って旅のあかをおとしましょう」

「お風呂!?」

「なんだよ」

「アタイも入る」

「なっ、えっ!?」

「アタイも入る。広いんだから3人入っても大丈夫なんでしょ」

 きっと琥珀さまを睨みつけた。

 琥珀さまも負けずと睨み返す。

 オレンジ色の視線と緑色の視線が空中で衝突し、激しく火花を散らしてる。


「って、お前お湯に入ったら死ぬんじゃないのか?」

 パア~ッと顔をほころばせた河童小娘がボクに抱きついた。

「覚えててくれたんだ。嬉しい」

 可愛い。

 くっそ生意気で、緑色だけどやっぱり可愛い。

 ズンっと突き刺すような視線を感じて背後を振り向いた。

 腕組みをした琥珀さまが、非常~に冷たいジト眼でボクと河童小娘を見つめてる。


「いや、ほら、久し振りの再会だから」

「久し振りなのは、わらわも一緒じゃ」

 そういって抱きついて来た。


 おほほほはほははほ


 胸が。

 ぷるんぷるんとした小振りな胸が腕に当たって気持ちいい。

「アキト。誰コイツ」

 ボクの胸に顔をうずめながら、河童小娘があっかんべした。

「わらわは獅道琥珀。そなたの名は」

「教えない」

「なっ、この河童小娘が」

「河童小娘とはなんだ!!」

 飛び退いた河童小娘が何だか分からない奇妙な構えを取った。

 河童格闘技?

 琥珀さまも構えを取った。

 あ、これは見た事がある。

 中元がやってる空手の構えに似たのがあった。

 両手をクロスするように構えた琥珀さまが、摺り足のままスルスルスル~と滑るように床を移動した。

 どうやったらあんな動きが出来るんだ。

 河童小娘も驚いた様子でそれを見ている。

 間合いが詰まる。

 河童小娘が動いた。

 一瞬、手と手が交差したかと想うと、また間合いが開いた。


「やるではないか」

 琥珀さまが肩を押さえてる。

「そっちこそ」

 河童小娘もだ。

 脚を庇うように半身になった。

 見ると腫れてる。

 え!?

 いつの間に蹴ったの。

「本気に成らざるえんな」

 そう呟いた琥珀さまが刀を手に取った。

 河童小娘が後ろに飛んで四つん這いの姿勢を取る。

 頭の皿をさらしてる。

 メキメキメキっと音を立てた河童小娘の背骨が奇妙な方向に曲がってる。

 四足歩行に適した姿勢だと一目でわかった。

 こっちも本気になった証拠だ。

「やめ、やめ、やめ、やめ」

 ボクは咄嗟に割って入った。

「お仕舞い、これで開き。2人ともお互いの力量は分かったんでしょ。だったら、ここはボクの顔を立ててイーブンってことで。ねっ!!」

 琥珀さまが刀を鞘に収め。

 河童小娘も、元の河童小娘の姿に戻った。

 可愛い女の子があんな姿になるなんて、嘉藤かとうが見たら卒倒しちゃうよ。


「ほら握手して、握手。お互いの健闘を称えるの」

「まあ、暁人どのがそう仰るのなら」

 仰るの。

 仰いますの。

 女の子の命懸いのちがけの喧嘩なんて見たくないんだから、こっちは。

「じゃあアタイも」

 そう言った河童小娘が琥珀さまの前に立った。

「アタイの名前はね⋯⋯」

「ローレンス。これは一体全体どーゆーことかね!!」

 フリッツなんたらかんたら六世さんの怒鳴り声が響いた。



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