第4話 胸が重苦しい



 ♠



 ミーたんの鳴き声が聴こえて、スパッと目が醒めた。

 赤鬼さんがいる間どこに隠れていたのか、全く姿を見せなかったのに、気がつくとボクの胸の上に乗ってる。

 バスルームを覗くと、案の定赤鬼さんの姿は無い。

 あのドデカい金棒も無い。

 床に散乱する無数の酒瓶と、バーベキューグリルが赤鬼さんのいた証として残されていた。

「あ~、これを一人で片付けるのか……」

 憂鬱な気持ちになったが、管理人の仕事だしな。

 ボクは両手で自分の頬を叩いて気合いを入れた。

 ラム酒とウォッカの瓶が、それぞれ五十本近くあった。

 どんだけ飲んでんの?


 ガチャガチャ


 と、音を立てながら、片手で空瓶を詰めたケースを運ぶ。

 なんか軽いな~

 こんなに軽いモノだったかな?

 バーベキューグリルを外に出し、油で汚れた床にモップを掛けて・・・

 あ、その前に、潰れた椅子と、ソファーを何とかしないと。

 って、あれ?

 椅子とソファーが無い。

 あれ?

 あれ?

 あれ!?

 どこに行った!?

 あった。

 元に位置に、元の姿で配置されてる。

 何が起きたの?

 ボクは椅子を手に取ってみた。

 間違い無く赤鬼さんが潰した椅子だ。

「あ、これ」

 修理が加えてある。

 凄い技術で、復元してある。

 継ぎ目も見えない程だ。

 指先で触れても、古いパーツと新しいパーツの違いが、全く分からない

「なんだ、これ!?」

 ソファーを見た。

 これもだ、

 破れた布も縫ってある。

 それも完璧な復元で。

 たった一晩で?

 どこの誰が、こんな技術持ってんのよ。

 あ~、なんか頭がクラクラして来た。

 ちょっと一休みしよう。

 冷蔵庫からソーマを取り出して・・・

 あれ、牛乳が無い。

 テーブルの上に置いてたクッキーもだ。

 あれ~

 夕べ食べたか!?

 ウォッカとラム酒のツマミにクッキーを!?

 有り得ない。

 もう次のお客さんが来たのかな?

「誰か居ますか~」

 返事は無い。


 シーン


 と、静まり返った部屋で、突然携帯の着信音が鳴り響いた。

「うわっ、と」

 あれ?

 どこに置いたっけ!?

 ああ、そうだテレビの前のガラステーブルだ。

「もしもし」

 名前も確認せずに出た。

 怒鳴り声が聞こえた。

「暁人!! テメエ、いまどこにいやがんだ!!」

 師村だった。



 ♠


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