夜中に河童小娘がやって来た?
第1話 引っ越し記念パーティー
ボクの名前は
多分、今、この瞬間、世界で最も疲れてる男だと想う。
♠
すっと眼を覚ましたボクは、ぐぐっと伸びをして身体の
疲れた⋯⋯
連日連夜のドンチャン騒ぎに、さすがに身体がついてかない。
あの後、師村たちを呼んでペントハウスの御披露目をした。
ま~~、奴らの驚くこと、驚くこと。
ま、当然だと想う。
ボクもこの広さに慣れるのに時間掛かったし。
で、それから部屋の模様替えの手伝いをしてもった。
正直、このペントハウスの構造をボクも把握仕切れてない。
コンシェルジュさんを呼んで、色々と相談しながら行った。
今日の彼女は三色の頭髪に、左右で異なる瞳をしていた。
固い仕事とは想えないライオンヘアだけど、なんだかとっても似合ってる。
師村と高城は彼女にメロメロになっていた。
「おい、ローリーなんだよこれ?」
中元とタンスを運んでいた嘉藤が、何かを見つけてボクを呼んだ。
所でローリーってなによ。
幼なじみのお前は、ボクのことをアキちゃんって呼んでたろ。
「これって何?、すんげえ重いんだけどこれ」
と、言ってボクに見せたのは、拳2つ分程の大きさの七色に耀くゴツゴツとした塊だった。
「なんだ、コレ?」
「いや、それを訊いてんのオレだし」
「どこにあった?」
「このデカいタンスの上だよ」
「なんで、そんな所に?」
「オレが知るかよ」
両腕を組んでふんぞり返るけど、嘉藤はチビだから迫力がない。
「ああ
肩越しに覗き込んだコンシェルジュさんが言った。
「オリハルコン?」
「はい。鬼様からの贈り物だと想われます」
「これが役得?」
「はい。大変に貴重なものですよ」
ふ~ん、と頭を掻いたボクは、取り敢えず綺麗だからキャビネットの上に置いた。
重い、重いって言うけど、そうでもない。
片手で持てる程度の重さだ。
4キロぐらいかな。
その様子に、嘉藤も中元も口をあんぐりと開けて呆れてた。
何に驚いてるのやら。
粗方模様替えが終わった所で、お礼にガーデンパーティーを開いてやった。
女の子を呼んで、プールにライト点して、風船やら何やら浮かべて、テーブルに酒を数種類。
ソフトドリンクとソーマを置いて、バーベキューグリルに火を
水着に着替えた師村たちは、大はしゃぎだ。
ただ、案の定トラブルが起きた。
酔っ払った新井がフェンスを乗り越えようとして、大人しくさせるのにエラい苦労した。
眼を離した隙に師村と高城が、勝手に酒蔵から酒を運び出して来た。
見たらコルヴォディスカスのゴールドが混ざってる。
フリッツなんたらかんたら六世さんのお気に入りだ。
すぐに取り返して酒蔵に戻した。
そうこうする内に中元が女の子としけこむし。
も~、大変。
我が友嘉藤よ、お前だけは変なことをしないでくれよ。
と、想ってたら、ミーたんのケージでボロ屑に変わった河童小娘の下着を見つけてボクに詰め寄って来た。
「なんで、こんな所に可愛い女の子パンツがあるんだよ」
「可愛い女の子って⋯⋯」
「パンツを見れば顔が分かる。オレを騙せると想うなよローリー」
「そのローリーって何よ?」
「ローリーは、ローリーだろう。子供の頃からのあだ名じゃないか」
いや違うし。
暁人だし。
酒が入ってるもんだから絡みが長い長い。
そんな感じで三日三晩ドンチャン騒ぎが続いて、ようやくお開きとなった。
部屋の模様替えのお礼としては、過ぎたお礼だと想うけど、喜んでくれたから良いか。
で、ボクはお風呂にゆったりと浸かって、全身の懲りを解したあとに全身ドライヤーで水気を飛ばすと、素っ裸でソファー横たわった。
時計を見ると夜中の2時だ。
風呂に入ったのは10時頃だから、5時間も寝てたことになる。
「あ~、静かだな」
この数日10人近い男女が暮らしてたんだもんな。
そりゃ騒がしいよ。
何故かコンシェルジュさんも混じってたけど。
師村たちを見張ってたのかな?
「あ~ぁ」
ボクは大あくびしながら立ち上がった。
寝なきゃと想ったけど、5時間も寝たもんだから眼が冴えてる。
冷蔵庫からパロマを取り出して、
ポン、
と、栓を抜きライムを沈めて一口飲んだ。
「今日の月夜はどんなかな?」
ドアを開けて屋上に出た。
バシャシャシャ
と、けたたましい水音にギョッとなった。
また、こんな夜更けに⋯⋯
「おい河童、風呂なら家の中に⋯⋯」
プールで人魚が溺れてた。
♠
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