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「すかいはなしすき?」

「俺も好き」

「わぁいっしょだー!」

 すかい、と言うのは店の名前から来ていて、実際この辺りの人たちには「スカイさん」と呼ばれている。別に本名に【空】なんて言葉は入ってないけれど。

「ななはね、ぶどうもすきだよ」

「ぶどうも」

「あと、あとねもももすきだし、ばななもすきだしすいかもすき」

「好きなのいっぱいあるんだな」

「ぱぱもままもすき!」

「じゃあ俺は?」

 自分の鼻に人差し指を当てて訊くと、奈々子はニッと笑って「だいすき~!」と抱きついてきた。

 その小さな体をポンポンと叩いて「俺もだよ」と返す。

 可愛い。ほんわりと胸が温かくなって幸せな気持ちが湧きあがる。この無垢な愛情を分けてもらえるのはあとどれだけなのだろう、なんて実の親父でもないのに考えてしまう。

 子供、可愛いなぁ。

「奈々子は将来有望だね」

 門脇君からバックを受け取って言うと、照れくさそうに頭を掻いた。

「誰に似たんだか」

「商売上手なところは門脇君じゃない? 愛嬌がいいのはお嫁さんかな」

 帰りに奈々子が「またね~」と小さな手を一杯に伸ばして見送ってくれた。

 そのあと馴染みの店に頼んでいた酒を受け取りに行って、やっぱり帰りにコロッケを買い食いした。店に帰る頃には身も心もホッと温まっていた。

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