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「いらっしゃい」

「ちわ」

 目当ての店に着いてそこの亭主と挨拶を交わす。【かどわき青果店】の門脇君は俺よりも三つも年下だ。

「今日は良いイチジクが入ってますよ」

「あー、それじゃぁそれを一皿。と、オレンジとあと巨峰も、それから・・・」

「すかいっ!」

 ドンッ、と小さな衝撃が足に走った。視線を落とすと小さな女の子が足にしがみついている。髪を頭の高い位置で二つに結んだ可愛らしい子だ。

「すかい、なしもおいしいよ」

「・・・じゃあそれも」

 この子は本当に商売上手だ。

「こら奈々子! すみません本当にこの子は」

「いや、丁度お願いしようと思ってたから」

「・・・ありがとうございます」

 勘定をしてもらってそこにしゃがみ込み、奈々子と視線を合わせる。奈々子は門脇君よりもお嫁さんに似て美人だ。

「奈々子は梨好きか?」

「すきー!」

 はーいと手を挙げて言う。無邪気で純粋無垢だ。奈々子は生まれた時から知っていて、もう三歳になることに驚かされる。小さい子の成長には驚かされてばっかりだ。この間までミルクしか飲めなかったのに、今や何だって食べるのだから。

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