第126話(敵の手)
自分を示す言葉が定まらない。
まるで常に別の誰かになってしまっているような、混乱して、混線しているように見える。
その奇妙さを感じながらもそこで敵は嗤う。
「そう、お前たちがいくらあがこうとも、この私にはかなわないのだ。すでに多くの人間を、そして異世界人をも支配下に置いた俺が、彼らの魔力を保存する方法を手に入れていたとしたらどうする? 予想はついたようだな。そう、今この時一瞬の容量しかないお前たちにすらも凌駕する力が俺にはあるのだ。そういった案を出すところも、この女は使えたか」
そう笑う。
それを聞きながら、遠くからにやってくる足音が聞こえる。
これはあの四角い怪物たちだろう。
だがそれにも混ざって何かがこちらに来るのを感じる。
俺達を倒すような作られた道具のようなものがたくさん来ているのかもしれない。
そう思っているとそこでシーナが、
「もしかして、私がアキラと一番初めに会った時に出会った羽の生えたクマのような怪物のようなものもいる?」
「それで済めばいいが、洞窟の出口付近にいたあの怪物などもいるかもしれない」
「ありそう、ロゼッタとセレンは何か思い当たる?」
そこでロゼッタたちに話を振ると、ロゼッタがセレンを介抱しながら、
「その羽の生えたクマのような怪物の類も以前の接触で見かけましたわ」
「何体くらい?」
「私が見たときは五対程度でしたわ。強くて対応がうちの兵たちでは大変なようでした」
といった話をしていると、敵が笑った。
「魔族たちには五体程度送ったな。あれは手持ちの“作った魔物”だから、そこそこ強化はしてある。だがこの城には15対程度配置した。頑張ってくれたまえ」
「そう。この前は状況が分からずに逃げるのを選択したけれど、それなら……今回は普通に戦えば勝てそうね」
シーナがそう言って笑う。
逃げる必要がなく、戦えばいいだけだから後れを取らないらしい。
さらにロゼッタが、
「そうですわね“倒せばいい”だけ。周りの巻き添えは考えずに倒すだけなら、私たち全員が“火力”には自信がありますものね」
「あ、ロゼッタ、ここは私の城だからあまり破壊しないようお願いしたいわ」
「この状況で周りのことを考えている余裕はないわ。介入されたくなかったら少しの被害はあきらめてね」
「ぐぬぬ」
シーナがロゼッタの楽しそうな声に呻いたのだった。
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あとがき
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