第125話(人称の変化)
こうして俺は、目の前の四角い怪物を一なぎで倒してしまう。
数が少なかったとはいえ、それは敵にとって衝撃的な光景であったらしい。
「エリス共和国の件も含めて、お前は全く消耗していないのか!? た、確かにあの町の洞窟の時は……だが、少しも疲労しているようには見えない。よほど魔力が強いのか? それとも……そうだ、その持っている剣の影響に違いない」
混乱するように目の前の敵は言うが、確かに俺はそこまで疲労を感じない。
自身の魔力を事前に確認しておけばよかった、そう思いはするものの……魔力がなくなる事での疲労らしきものは俺は全然感じていなかった。
おそらくはまだ大量に残っているからだろう。
そう思いながらも油断はしないようにして、魔力は節約と思い黙っていると敵が、
「黙っているのは、図星だからか? そうだろうな、確か力を増幅するような効果のあると聞いて、そんなものに手を出されてはたまらないと対策を立てたはずなのに……なぜ、お前はそれらすべてを打ち破り手に入れた、俺の邪魔をする」
そこで敵の一人称が“俺”になってる。
装っている余裕がなくなったのかもしれない。
だが、相手が危険と認識したならこちらにも、最大級の攻撃を仕掛けてくるだろう。
たかだか一人の人間で、特殊能力(チート)を持っているのだから、この戦力差では敵には勝ち目はない。
だがこういった状況を予測して、何らかの対策はとっているかもしれない。
ここまで幾つも仕掛けをしている人物だ、これで終わるとは思えない。
そう俺が思っていると、敵が何かを叫んだ。
耳障りな高い音が聞こえる。
ふらりとロゼッタの後ろにいたセレンが倒れそうになる。
「セレン、どうしましたの?」
「……操るようなあの音の何重奏みたいな……今までと全く違う音が三種類ぐらい聞こえました」
そうセレンが言うとそこで敵が、
「その音を聞き分けたのか、そこの女は。正解だ。この僕の、四角いあの怪物といった怪物たちに、呼び寄せた魔物たち。そして……もう一つはとっておきの魔物だ。今のはそれが合図だ。もっとも本当はこれらは使う気もなかったがね。そして……この俺がやっていたのは、それだけだと思うのか? 操っている人間たちを……ただ操って、動かしているだけだと思っていたのか?」
まるで自分の勝利を確信したかのように、敵は語りだす。
だが俺は、次々に変わり始める自信の人称の変化に、不気味さを感じ始めていたのだった。
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あとがき
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