第124話(任せてくれ)
あの女は使えないと繰り返すその男の冷酷さに、俺は吐き気を覚える。
どうしてそんなに淡々と話せるのだろうか?
酷いことをしても平気でいられるのか?
自分とは違う“悪”というのを見て俺はそう思う。
そこで敵が、
「もうこんなところで話していても無駄のようですね。合流させてしまったのは“失敗”で、そちらのシーナ姫を逃がして、新しい未知の異世界人と接触させてしまったのも“失敗”です。ですが、一番危険なマサトの力もあの町に魔物を集めることで消耗させれたのは確実だ。呼び寄せる道具を使って……エリス共和国の方に関心が行かないようにという意味と、逃がしてしまった城の者を消耗させるか消すかすか実験台に使おうと思ったが、どれも失敗のようだ」
残念だというようにそう言ってすぐに敵は俺達の方を見て、
「もっとも、あのエリス共和国であの四角い道具と戦ったのであればお前たちも消耗しているはず。あちらにそれを仕掛けて、マサト達をそちらに戻らせることでいざとなればさらに消耗させる作戦でしたが……こういった意味では好都合か。あの四角い道具はなかなか防御力が高くて倒すのに大変なのは、魔族たちで証明されたからな」
それを聞いてそばにいたロゼッタとセレンの目が険を帯びる。
敵として先に相対していたのは彼女達なのだ。
だから事前に情報は知っていた。
それ故に、ここでこの敵を倒さなければ、この国にロゼッタたちの国が“介入”することになる。
それを阻止するために俺達は今ここにいる。そこで、
「まずは簡単な小手調べと行きましょうか。……“行け”」
敵がそう呟いた。
それと同時に、背後の大穴から四角い怪物が入り込んでくる。
その穴はおそらくは俺達が城に向かう中で聞こえたあの爆音の原因だろう。
もしかしたら呼び寄せるためにわざと開けたのかもしれない。
そして俺達の方に迫るその怪物に向かってマサトが、
「これらにも俺の特殊能力(チート)は作用する。認識をずらして魔法攻撃が当たらない要領で……」
「その力は、これからの魔法戦の方で温存してくれ。この怪物を“壊す”のは俺の能力の方が“楽”だ」
「アキラ? そうなのか?」
「任せてくれ」
そう俺はマサトに返す。
そして剣を抜き出して、その怪物に向かって魔法を意識しながら剣をふるう。
「“凍える風”」
そう俺が叫ぶと同時に、その四角い怪物は一瞬にして凍り付き、すぐさま壊れてしまったのだった。
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あとがき
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