第111話(中の足音)

 外を走り回る四角い怪物。

 あれの防御力の高さを俺はよく知っているが、俺の特殊能力(チート)を使えばその効果でそこまで大変ではないが倒せる。

 だがこうやって窓の外をいかれては、倒しにくい。


 こんな風に壁に張り付くようにして疾走もこの怪物はできるようだと俺は思いながらも、俺たちが中にいるというのに窓の外で走り続けるのみで、こちらに入って来る様子はない。

 それも一つもだ。

 時折目? らしき場所に何度も俺たちは捕捉されているように感じるが、こちら側に襲い掛かる様子はない。


「もしかして、窓から外に出るものを攻撃するのか? 外から侵入しようとしたとき、俺達にはこれは襲い掛かってこなかったから、そういうことなのか?」

「なるほど、だったら……外に出られるのが困る人物が部屋にいるかもしれないわね。窓はこうやって封じて、入り口も封じているのだもの」


 シーナが楽しそうにそう答えて、そして軽くそのうちつけられた板を蹴る。

 だがその程度ではびくともしない。

 そこでそれを見て居たロゼッタが、


「ちょっとシーナ。なんでいきなりけりを入れているのよ」

「力などを無効化するんでしょう? せっかくだから様子見も兼ねてね」

「あのね。そうやってけりを入れた時に何か魔法が発動したどうするのよ」

「見た範囲では二種類くらいの効果しかなさそうだったもの。だから蹴ってもそこまでどうにかならないと思ったのよ。それに、押してみたけれど、その力を倍返しにしたり、というものではなさそうだったわ」

「……強い力で押し切って、それを無効化できなくなれば壊せるわね」


 そういいだした二人の女子を見ながら俺は、ここで“効率チート”を使って壊してしまえばとは、言い出せなかった。

 次の瞬間、彼女たちが身体強化の魔法を使って、目に見えるような何か強い力を感じた。

 簡単に言うと、『何か怖いものを感じた』だが。


 それゆえに俺は黙っているとそこで、


「こんな大変な思いをさせたあいつ、絶対にぶっ潰す!」

「この私に苦労を掛けたあいつ、絶対に踏みつぶしますわ!」


 思いを込めた二人の美少女の蹴りによって、その扉の封をしていた板が割れて吹き飛んだ。

 ストレス解消も兼ねた攻撃であったらしいそれ。

 そして大きな音を立てていたが吹き飛ぶ。


 その音は中にも聞こえていたらしい。

 誰かが扉の方に駆け寄ってくる足音が中から聞こえたのだった。



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あとがき

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