第109話(見つけた)

 カレンダーをめくるとそこには穴が開いていた。

 正確には溝のようなものがあって、その奥には金庫らしきものがある。

 使用人の人たちが、何らかの理由で貴重品を置いておかなければならない場合に、ここに入れているのかもしれない。


 だが、ダイヤル式ではないこの金庫は、鍵穴のようなものが見える。

 そこそこ大きいこれだが、その鍵を探しに行くかそのまま壊すか、あとは……。


「俺の“効率チート”を使ってうまく鍵を開けられないか? シーナたちは、ピンか何か持っていないか?」


 思いついたので聞いてみる。

 漫画やら何やらで、ヘアピンを使って鍵を開けるシーンがある。

 実際にできるかどうかはわからないが、この“効率チート”を付加させれば本物の鍵のように開けられるかもしれない。


 それにシーナが、


「緊急事態だから壊すのはどう?」

「金庫を破壊するといった衝撃で、またあの時の村でのように触れたりした瞬間妙なことになるのも困るから、できればしたくない。出来るだけ穏便な方法で処理をしたい、相手が今回も、あの村の物と同じ設定をしているとは限らないから」

「金庫ごと、アキラの能力でバッサリ行ってしまえば大丈夫な気もするけれど」

「……シーナは結構大胆だな」


 そう返しながら、確かに中の物ごと破壊してしまってもいいが、そもそも、


「ここの中にその“操作の樹”が本当にあるかどうかわからないじゃないか」

「あ、それは本当です。そこから音が強く聞こえています」


 セレンがそう言いだした。

 なんでも壁を伝わるように音がしているらしい。

 俺には全く聞こえないのでよく分からないが、そこで黒いピンのようなもシーナが渡してくる。


 それを手に入れた俺は、さっそく“効率チート”でそれを開けようとしたが、そこでシーナとロゼッタが振り返る。

 同時に先ほど倒したメイドのようなものが現れる。

 ここまでに来るのに時間がかかった、倒していない方のメイドかもしれない。と、


「ここにいる人たちは私達に任せて!」

「アキラは早くそれを何とかしてくださいませ!」


 シーナとロゼッタに言われて俺は急いで金庫に手をかける。

 予想通り特殊能力(チート)で金庫は開けることができた。

 そして中には忌々しいあの物体の小さい版が入れられている。


 この物体を“ステータス・オープン”でどんなものかを確認して、この前と同じように実験品ですと書かれているのを見て安堵し、そして魔法を使ったのだった。

 





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あとがき

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