第68話 宿に泊まる
こうしてロゼッタの“勧誘”は、シーナの『私とロゼッタ、どちらを選ぶの?』と言われているような様相を呈したため、危険を察知した俺はその場から逃げ出した。
女同士の喧嘩にはどちらの味方をしてはいけない、と以前知人に、色々と大変なことになった後の、愚痴という名の実体験から俺は学んでいた。
ふう、危ない所だった。
そう俺は思いながらようやく走る足を緩めた。
さっきから追いかける足音が全く聞こえなくなったがどうしたのだろうと振り返ると、そこには誰もいなかった。
視界の消失点となるような場所に、森が見えるので、道が蛇行しているのだろう。
その先にロゼッタやシーナ、セレンがいるのだろう。
「随分距離が出来ているな。しばらくここで待つか」
そう俺は思いながら、地図を広げて待つこと……数十分後。
俺、もしかして道を間違えたのだろうかというような不安に囚われ始める頃。
ようやく彼女たちの姿が見えた。
俺が手を振ると彼女たちも気づいたようで、俺の方に駆け寄ってきた、のだが。
俺の前にやってきて息を整えてからシーナが怒ったように、
「ちょっと、確かに私達が悪かったけれど、魔法を使ってこんな遠くまで来ることはないじゃない!」
「魔法?」
「そうよ、どんな速度で走っていたか、アキラは分かっていないの?」
そうシーナに聞かれたが俺としては、
「そんな魔法、使っていたのか? ……“効率チート”は俺の意思に作用するから……自動的に魔法が使用された?」
「……特殊能力(チート)は便利すぎて頭がおかしくなりそう」
シーナが嘆息するようにそう呟いた。
そして俺達は、ここ周辺の地図や、これから向かう場所のはなしをシーナたちから聞いたりしてゆっくり進んでいく。
とりわけ食べ物系の特産物関係が気になってしまうのは……仕方が無いのかもしれない。
それは置いておくとして、そうして進んでいくと一見の道に面した宿屋に辿り着く。
一応はやっているようだが……そう思った俺達は、ここで食事がとれるか聞くことにした。
玄関の呼び鈴を鳴らしてから入ると、宿の主人らしき人が久しぶりの客だと喜んでいた。
一応ここは食事も出しているらしい。
そして地図から見たここの宿から村までの距離を考えると付くのは夜になる事が分かる。
また、出来ればこの宿の主人からこの先の村についての話を聞きたいため、それもあって俺達は一晩この宿に泊まることになったのだった。
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