第69話  焼き魚

 こうして一晩泊ることに。

 とりあえず実際の村までの距離がここからだとどれくらいなのか、といった事や、いつ頃あの村は奇妙になったのか、その前に何かなかったかといった詳しい説明をこの主人に、食事をしながら聞いてみることに。

 ちなみに一晩泊ることにしたのは、ここの宿の主人が客でなければ、引き留めるためにうその村アマでの距離を言うかもしれないからだ。


 すでに宿代は前払いで払っているので、そのあたりの懸念は排除できたはずだった。

 だから、ここ周辺にある湖で丁度朝大量に釣ってきたのだというここの宿のおじさん自慢の魚の塩焼きを頂くことに。

 値段はやや高め? であるらしいが、鮮度もいいのもあって非常に美味しい。


 とれたての魚を食べたのは今回が初めてだった俺は、このふんわりとしながらも表面がこんがりと焼かれた魚を塩味で楽しんだ。

 素材の良さを感じられる一品だった。

 それを素直に伝えると、ここの宿の主人は喜んでくれて……俺達が聞いてもいないことを愚痴として話してくれた。


「しかしまあ、この先の村“ピッケル村”がおかしくなったおかげで、この宿は商売あがったりだよ。気味悪がって、人が近づかないからね。一応はその村を通らずに別の迂回路を通る方法もあるからね。まあ、小国エリス共和国も様子がおかしいから皆行きたがらないのもあって、この道を使う人がめっきり減ってしまって」

「俺達、実はそこの村の方に友人がいったかもしれず、探しに来たのです」

「ええ! あそこに行ったのか……ん? もしかして貴方は異世界人では? 確か同じような服を着た人物が以前ここに泊まったことがありました。同じように女性を連れて」

「そ、そうですか。あ、そうそう、俺も異世界人で、その友人を探していて……もし何かご存知でしたら教えてもらえると助かります」

「やはりですか! 珍しい異世界人に二人も会えるとは。どうせなら村の異変も解決してもらえると助かりますな」


 そう言って笑いながら話してくれたのは、その村の奇妙さだった。

 なんでも村人たち全員が、他から来た人たちとも話さず、また、お互いも何も話さないらしい。

 以前は人の往来のそこそこある村だったが、宿もずっと閉まったままなのもあって気味悪く思う人たちが多く、あそこには何か恐ろしい儀式でもしているのでは、といった噂が流れているのだそうだ。


 そういった話をこの宿の主人から俺達は聞いたのだった。

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