第60話 いなくなったあの子

 その四角い立方体の箱からは、シーナは魔力を感じるらしい。

 何かの“装置”なのかもしれない。

 そう思っているとロゼッタ達ものぞき込むが、


「……分からないわ。こんな一見金属の塊のような物、見たことがない。セレンは覚えがある?」

「……前に一度、“ミコ”がこんなようなものを作っていたような気がします。ただその時は、『これを埋め込むと、この亀さんがお茶を持ってきてくれるんですよ~』といった物であったような気がしますが」

「“ミコ”? いなくなったあの子はそんな事をしていたの? ……普通の魔道具や、この魔導書の作成にも関わっていたあの子が……でも戦闘などは望んではいなかった優しい子だったはずだけれど……」


 困惑したようなロゼッタ。

 ただ今の話を聞くとと思って俺は、


「その“ミコ”とは何者ですか?」

「貴方と同じ異世界人よ。私達の方に招かれた少女で、特殊能力(チート)は魔道具の生成。この魔導書も彼女の力を使って作っているの。彼女の作った“魔法インク”……これが魔力を通した時の途中での放出や変換をできる限り抑えて通りやすくすることで、より細かな魔法陣などの構造を構築できるようになり、また紙質も更にうまく適合しやすくその一枚の紙の両方にインクを通して接続しさらに広がりを見せつける三次元構造をより速く正確に、かつ今までにない魔力量での……」

「え、えっと、魔法的な詳しい説明は今は無しの方向で。それでいなくなったというのは……連れ攫われたという可能性はないのですか?」

「……自分で出ていきたいと思わないと出れないようなものになっていたから、というのもあるけれど……“彼ら”……“彼”かもしれないわね、接点が何処であったのかしら? あの時すでに入り込まれていたと?」


 ロゼッタがそう呟いてだまった。

 だがもしかしたなら、俺達と同じ異世界人がこの襲ってきた人物と関わっているのかもしれない。

 そこでシーナが、


「人間を操る能力なら、私を襲った敵にはあると思うわ。何しろ城が丸ごと乗っ取られてしまったのですもの。どうにかその場から逃げ出して……」

「そういえばどうしてシーナは大丈夫だったんだ?」


 俺が思って聞くとそこでシーナが、


「たまたま遊びに行っていて難を逃れただけ。それでこの立方体が何なのか、アキラの能力で分かる?」


 俺はそうシーナに聞かれたのだった。

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