第59話 木製の腕
丸い球の形をした関節、それがついた木製の腕。
地面に落ちてきたのはそれだけだったが、先程の攻撃によって、人影らしきものはなくなっている。
ただ、遠隔操作の余韻のせいか、その木製の腕についた指が小さく動いている。
これだけでも十分不気味に俺は感じられたが、そこでシーナが崖の上を睨むようにみて飛び上がる。
通常の動きとは違い、かなり高い場所にまで飛び上がっているのを見ると魔法を使ったのだろう。
先ほどの人形が立っていたあたりに着地し、様子を見てから俺達に、
「人形の残骸のような物、気になるものが一つ転がっていたわ。どうしようかしら。アキラ、ここまで来れる?」
「今使った魔法はどんな魔法なんだ?」
「ああ、見せていなかったわね。“風の翼”よ。ちょっと散乱物が多くて一人じゃ持っていけなそうだから。そっちには一応ロゼッタにいて欲しいのよ。ミゲロさんもいるし」
シーナがそういうと、先程まですべてを俺にお任せしていて空気のように気配を消していたミゲロが、
「一応はそこそこ自分の身は守れるから安心してくれ」
「シーナ、俺が手助けするくらいで十分な量なのか?」
ミゲロは大丈夫だと言っているので俺はそう返すとそこでシーナが、
「この人形自体は中が空洞で、糸と幾つかの歯車で動いていていたらしくて、先程の魔法攻撃で結構……粉々になっているから、大きいものの衣類だけだから、もう一人いる程度で大丈夫だと思う」
「……もう少し魔法は弱めたほうが良かったか」
「いえ、下手にこちらに攻撃が行われる前に先制攻撃しないと危ないもの。アキラの判断は正しかったわ。それで来てくれる?」
「分かった、すぐ行く!」
そう言って俺は先程見せてもらい教えてもらった技名を使い、シーナの場所にまでやってくる。
そこには確かに人形の欠片と思しきものが散乱している。
とりあえずは衣類を回収しようと持ち上げるとそこで、ぼとりと何かが地面に落ちた。
持っていたそれらがやけに軽くなったので、その今落としてしまったものがこの人形で一番重い部分であったようだ。
そこでシーナが人形の腕や歯車の幾つかを拾い上げながら……一つ、明らかに異質と思えるものを拾い上げる。
それは銀色の手のひらに乗る程度の立方体に見える。
色は違うが、先程の黒い箱の怪物に似ているように見えた。
それを火に透かすようにシーナは見てから、
「魔力を感じるわね」
そう呟いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます