第61話 立方体

 そこで、先程の人形から取り出された立方体にシーナが目を移す。

 のっぺりとした、接合部分が存在しているのかどうかも分からない程度の立方体。

 このまま差し出されて金属の塊です、と言われても何ら疑問を持たなそうな外見ではある。


 と、シーナはその立方体を空に掲げてみるも、


「……日の光に透けて何か見えるわけでもない。……あ、耳に当てると、中から音がするわね。……凄く小さな音ではあるけれど。感じとしては、“ステータス・オープン”した時の音に似ているわ」

「見せてもらってもいいか?」


 そう言って俺はその四角い立方体を受け取る。

 そして耳を当てると、小さな……まるでパソコンを起動させるときの音のようなものが聞こえる。

 とても覚えのある音だと思いながら俺は、かといってこれで何かが分かるわけでもなかったので、特殊能力(チート)を使用して、


「“ステータス・オープン”……無機物の人形のようなものを操る装置らしい。操ると言っても操作ができる……というわけではなく? 遠距離からの指令によって動く装置で、この箱自体に魔力が入っている。……滑らかに人間のように声を発したり、動いたりする装置? であるらしい。……特殊能力(チート)を増幅させる効果が増えているが、それは……1km程度距離を増やす程度の効果しかない?」


 どうやら遠距離操作はそう簡単に増やせるものではないらしい。

 そう思っていると更に、


「“ステータス・オープン”耐性負荷。ただしもともと無機物の“ステータス・オープン”は非常に効率が悪く難しい部分もあり、使用されないであろうと思われていたが念のためつけられていた……そうだったのか。また、この立方体に攻撃をして亀裂が入ると爆発するので注意……爆発か」


 そこまで読んだ俺はその立方体を見た。そして、


「遠隔操作で爆破などはされる可能性がある? となるとこれをもっていくのはどうなんだ? それに、そういった人形のようなものに触れてしまえば、またさっきのやつのように動かせる人形が増える?」

「どんなものかこれ以上調べてられないとなると……せめて嫌がらせとして、この森のどこかに穴を掘って埋めておきましょうか」


 シーナがそう話して、俺は頷いた。

 と、そこで、


「そろそろ詳しい話は家で話していかないか? ここにいると魔物に襲われそうだし、話も俺は聞きたいし、マサト関係の話も知りたいんだろう?」


 そうミゲロが俺達に言ったのだった。

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