第15話 同じ部屋
突如現れた強盗は、倒された仲間一人を置いて去っていった。
仲間は置いていくのか……と、自分の生命を最優先に動くのを見ながら俺は、ただの乱暴者はまともに戦闘しないといけない時には役に立たないのかもしれないという哲学を得ていた。
そこでシーナが、
「とりあえずここから離れましょう。そうね、先程の分かれ道のもう片方に向かいましょう」
と言って、俺の手を引いて歩きだした。
その別の方の道を歩いていくと、そこそこ人通りのある清潔な道にたどり着く。
どうやらあの分かれ道で選択を間違えたらしい。
そしてそこを少し歩いていくと、
「ここの宿がいいらしいぞ。矢印がそう示している」
「……周囲を見て、あとは……外に料金表があるわね。この値段だったら比較的安いからいいわ」
とのことで、周りを見て歩く。
特に怪しい人物がいたり、先程の強盗のいた路地のように汚れていたりはしない。
それを確認してから俺達はその宿に泊まることになったのだが。
「え、一部屋しか開いていないの?」
「はい、もう部屋がほとんど埋まってしまって。ダブルベッドなのでベッドの広さはあるのですが」
「そう、だったらそこで良いわ」
シーナがそう言って、料金を払う。
そして俺は、え? と思った。
一つの部屋に若い男女が二人きり……。
などという俺の心配はよそに、カギを受け取ると、シーナが俺の手を握り階段を上っていく。
俺たちが泊まる部屋は三階であるらしい。
でもいいのだろうか?
そう悩む俺は部屋の中に入った所で振り返ったシーナによって、解消された。
「逃げないようにするなら同じ部屋がいいわね」
「あ、はい」
「もっとも私に何かしようとしたら……分かっているわね?」
「はい!」
俺は姿勢を正して頷いた。
だって何をされるのか分からないから。
それにシーナが嘆息して、
「なんだか従順ね。もう少しこう……いえ、今はその方が都合がいいからそれで。でも、確かにこの方法だとこの宿にはたどり着けたわね。“概念”で特殊能力(チート)が使えるのは事実と見ていいかしら」
「そうだな。でも“設定”がどこまで出来るのかが分からない。それに方向だけだと、直線距離で現わされるから、実際に道に沿って歩くと近いとは言えないかもしれない」
「でもこのお値段の宿なら、十分よ。アキラがいればしばらく宿を探しに町の中を歩き回らなくて済みそうね」
そう、シーナは言って肩をすくめたのだった。
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