第16話 “触媒”とは?
そして宿の中で一息ついた俺は、
「それでこれからどうするんだ?」
「まずは目的の人物を探す。彼さえ見つかってしまえば、後は……第一段階クリア、といった所かしら」
「そういえばその異世界人の名前を教えてくれないか?」
そこで俺は、探している異世界人の名前についてようやく聞いた。
今後その異世界人について調べるなら名前を知っていた方が良いからだ。
するとシーナが呆れたように、
「本当に協力的ね。でもいいのかしら? 私がすべて本当の事を言っているとは限らないのよ? 復讐のために貴方を利用しようとしているのかもしれない」
「現状では、シーナ以外に頼る相手もいないし目標もないからな……。あとはもう、その場その場の状況で判断するしかないな。……それならこの町でアルバイトを探しながら生計を立てたほうがいいか?」
俺はそこで気づいてしまった。
俺にとって一番安全なこの異世界ライフはそれで何とかなる。
そう真剣に考え始めるとシーナが、
「待って、冗談だから。手伝って。貴方の力が必要なの!」
「どこまでが冗談だったんだ?」
「私がすべて本当の事~の後よ。はあ……嘘をついても仕方がない内容よね、そもそもが。はあ……私自身も追われている部分もあるしね」
「あの時襲ってきた魔物のような?」
「ええ。……といっても逃げだすことしかできないような、“小物”と判断されたからあの程度にすんだし、これ以上何かできると思われていないから、更に追手が来る気配がないのかもしれないけれど。これは好都合だわ」
笑うシーナ。
だが状況としてはこれから追っても来るかもしれないわけで……それはその時考えるかと俺は思った。
それ以上何もシーナは言わなくなったので今後の事を考えて俺は、
「もっと“効率チート”で魔法攻撃が出来るように、この世界の魔法について教えて欲しい」
「教えるなら本があった方がいいけれど……そういった魔法の教科書は高価なことが多いのよね。城にはたくさんあったから気にも留めていなかった。こんなことになるなら一冊でも持ってくればよかったわ」
「シーナが知っている魔法だけでも教えてもらえないか? “氷の雨”という魔法も使えたわけだし」
「そうね……本来杖といった媒体や“触媒”がないと使えないような魔法を、アキラはあっさり使うのよね」
「……媒体は分かりましたが“触媒”とは?」
また新しい言葉だが、俺の世界で聞いたことのある言葉(訳?)が出てきたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます