第8話 (彼女は誰か)

 こうして俺は異世界人と気づかれて、力を貸してほしいとここに来て初めて出会った少女に言われてしまった。

 それはそれでいいのだが、


「とりあえず“ステータス・オープン”は消しておこう。いつまでもつけておいても、“俺は異世界人です”と示しているだけになるし」


 俺はそう呟きながら、それを消した。

 そして変なことに巻き込まれなければいいなと思って話を聞くことにした。

 すると目の前の少女は、


「私の名前は、シーナ・スカイメソッド。普段はシーナ・スカイと名乗っているわ」

「? 偽名の方を俺に名乗ればいいのでは?」

「“ステータス・オープン”される相手にそんな所で嘘をついても仕方がないもの」

「確かにそうだが、でも、偽名?」


 そういえば彼らの仲間ではなさそうといった話や、偽名を使っている所から察するに、


「追われているのですか?」

「そうね。ただ、それに関しては貴方も無関係じゃない」

「どういう意味ですか?」

「……実はうちの城の方も、呼び出された異世界人の援助を行っていたのだけれど、ちょっと城がまずいことになっていて。その説明をする前に、名前を教えて。名前を呼べないのは不便だわ」

「俺は定木瑛(さだきあきら)です」

「そういった音の形だと、アキラが名前かしら」

「はい、そうですがよく分かりましたね」

「異世界人はよく呼ばれているからこちらも、幾らかの情報を手に入れているの。それで貴方のいた世界の西暦は今何年?」

「2018年ですが」


 そう返すと少し彼女は黙ってから、


「最新の異世界人ではなさそうね、この世界にやってくる異世界転移者は、100年程度差があるから……それでも、新し目なことには変わりないか」

「あの……未来人がここにいるのですか?」

「ええ、貴方たちの世界で言う未来人はいるは。ただそんなにアキラと変わっている風ではないのよね」


 そう言って一度黙ったシーナ。

 それから俺はシーナに、


「そういえばうちの城と言っていたが、シーナはお姫様か何かなのか?」

「そうよ。今は追い出されたというか逃げてきたから、どうなるか分からないけれどね。……女中という形で潜り込んできた魔王軍の一人にまんまとやられてしまったわ。……どうにか私だけは脱出が出来たけれど……資金も幾らかは逃げた時に持ってこれたけれど、まだまだ状況は悪いままよ。解決の糸口を探さないといけない状況ですもの」


 そう返してきたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る