第7話 “ステータス・オープン”

 とりあえず正直に俺は、目の前の少女に“異世界人”だと話した。

 彼女は俺の言葉に絶句しているようだが、


「嘘よ。“異世界人”は城に全員集められるはずだわ」

「……そうだったのか。説明してくれる人がいるところに送るよって話が、うっかり間違えたらしくて違う所に送ったと聞こえたが」

「……ミスね。確かに魔法を使ったことがないしこの世界の事を知らないのも筋は通るし、最近、“異世界人”がよく呼ばれているのも知っているけれど……そんな“異世界人”のふりをしている可能性だって否定できないわ」

「え~と、異世界のものを見せれば、納得していただけるでしょうか」


 いつまでもナイフを向けられているのは先端恐怖症になりそうだったので、そう語りかけると少女が、


「いえ、物なんて幾らでも誤魔化せるわ。そうね……だったら“ステータス・オープン”ね」

「……は?」

「だから“ステータス・オープン”よ。自分だけではなく相手の能力まで開示してしまう、“異世界人”がなぜか持っている固有の能力! あの恐ろしい能力を自分に向かって使ってみて」

「えっと、どのように使うのでしょうか」

「私が知るわけないわ。“異世界人”が使えるようだったもの」


 そう返された俺は、先ほどの杖を使った魔法が俺が使った一番初めの魔法ですがと言い返したかったものの、未だに突き付けられたナイフが怖かったので、


「……“ステータス・オープン”」


 俺は小さく呟くと、ピコン、と変な電子音のようなものが聞こえた。

 そして目の前には俺の能力データのようなものが出てきて、


「ここに魔力量などが書かれているな。職業:異世界人ってなんだ? あ、特殊能力(チート)についても書いてあるな。『“効率チート”、例えば、杖などの増幅器を使うときに併用すると、高威力の魔法が使えます。詳しい説明はこちら』ここを触ればいいのか?」


 というわけで目の前に現れた光の板のようなものに俺は触れようとしたところで、俺にナイフを突きつけていた少女が、


「ほ、本当に異世界人だったの!?」

「だからさっきからそう言っているじゃないか」

「……、まさか、こんな所にいるなんて。でも、これは私にとっていい機会かも?」

 

 そこで少女が何やら算段を始めた。

 そして俺はこの特殊能力(チート)の詳しい説明を見ようとしてそこで、


「ぜひ、“異世界人”である貴方の力を貸して欲しいの。代わりに貴方が欲しい情報は何でも話すわ」


 そう彼女は俺に言ったのだった。

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