第9話 別の種族のようなものだから
とりあえず先ほどのシーナの説明を要約すると、
「異世界人の援助をしている城が、魔王軍に襲われて、シーナがそこから脱出し、今に至る、と?」
「大体そんな感じ。異世界人も含めて洗脳されてしまって、ちょっとまずいことになってる。あちらの魔王軍側も年々力を上げていっていたとはいえ、様子もおかしいし。こんな上手くすり抜けて入り込んでくるような存在は今までいなかったのに。異世界人以外」
「? 魔王軍の方にも異世界人がいるのか?」
「そうよ? ……貴方たちの世界の魔王とは違って、魔王軍といっても別の種族のようなものだから」
といったシーナが説明してくれた。
ただ魔王軍側に異世界人がいる、おそらくは“敵”としているのだろうけれど、それよりも気になるのは、
「あの~、俺たちの世界に、その、“魔王”なんてものはいないはずなのですが」
「え? でも、出身国は“ニホン”でしょう? あ……そういえば一般には知らされていない戦いだとかなんとか、そうった記録があったはず」
「……そうですか」
そこで俺はシーナたちから、俺の平凡な日常の裏で、漫画やラノベのような非日常が繰り広げられているかもしれないことを知った。
だがこれまでも接触することはなかったのだから、きっとこれからも何もないだろうと俺は片づけてから、
「それで城から逃げ出したが追手が来ているのか?」
「ええ、追いかけてきている彼らによってさっきの魔物をけしかけられてね、さっきは助かったわ。お礼を言うわね」
「は、はあ。でも、ここにいるとさっきの魔物に更に追いかけられたりしないのか? 後は別のその……追ってきている“彼ら”と遭遇したりとか」
「そうね、移動しながら話した方が良いかしら。次の町までは近いからそちらに行って人ごみに紛れてしまえば……彼らも私達を少しは見落とすかしら」
シーナがそう言って呟き、それから俺たちは移動を開始した。
あたりまえだがむき出しの土の道。
舗装されていない田舎の道だから、もう少し人が多い場所では変わってくるかもしれない。
ただ履いている靴が学生靴なのはいただけないので、後々普通の運動しやすそうな靴を探そうと俺は思った。
また、そうして歩きつつシーナと話をしていると、どうも戦闘戦闘、といったことに異世界人は呼ばれているがために、それ以外の文明の発達はなさそうだったのだった。
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