第5話 どうやら人はペットのようだ。

 戦闘後、またワープして店内に帰ってきた点心ちゃん。服装は元のメイド服に戻っている。

 拍手で出迎える客連中に手を振って答えながら、彼女は俺のほうに歩いてきた。


「……お疲れさまです」

「どういたしまして、でござる」


 俺がなんとなく頭を下げたら、彼女は唇の端っこで悪戯っぽく笑った。そしてそれから、わざとらしく続ける。


「ああ、そうでござった。拙者、ついうっかり忘れてしまっていたのでござるが……このお店、人間禁止なのでござった。うっかりうっかりー」

「人間はペットかい!」


 つい反射的にノリツッコミしたら、


「言い得て妙ね」


 素の口調で返されてしまった。

 ……うん、なんとなく分かっていた。ここの方々にとって、人間や人間社会はその程度の感じなんじゃないのかなー、と薄々感じておりました。

 でもひとつだけ、分からないことがある。


「あの……どうして俺を連れてきたんでしょ?」


 路地で見たことを口止めするつもりだったら、ここに連れてきたのは藪蛇だ。なのにどうして、彼女は自分から秘密を見せつけるみたいな真似を?

 俺が首を傾げていると、なぜか点心ちゃんも首を傾げた。そして、困ったように眉根を寄せて、言いやがってくれた。


「ん……ノリ?」


 ……うわー。

 これ、一番聞きたくなかった答えだったわー。対応の取りようがないやつだわー。点心ちゃん、思いつきで他人を巻き込んで平然としてるヤバい子だったわー。


 ……だというのに、俺の顔はなぜか、興奮を隠しきれない笑顔になっていた。

 いったい俺はこれから、どんなことに巻き込まれていっちゃうのか――考えただけで、わくわくが止まらなかった。

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エルフ・オブ・サムライガール 雨夜 @stayblue

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