第348話 一年生編「連絡先(後編)」


(今日は土曜日。授業も午前中だけで、わたしみたいに図書委員の仕事とかじゃない限り殆どの生徒は帰宅しているんだけど……)


「何で安藤くんは存在しているのかしら……?」

「ついには存在することを否定されただと!?」


(もう、ついには『ぼっち弄り』すら放棄しやがった! てか、ここまで来ると普通にただの悪口なんだよなぁ……)


「あら、ゴメンなさい『何で安藤くんは当然のように図書室にいるのかしら?』と言おうと思ったのだけど、少し言葉が足りなかったわね? クフフ……♪」

「省略の仕方に悪意があるんだよなぁ……」


(まぁ、最近は図書室に委員長がいないと、このやり取りが無くて少し物足りなく――って、そんなこと無い無い! まさか、俺が委員長とのこのやり取りを地味に楽しみにしているなんて絶対に無いから……)


「……うん、絶対に無い」


(まぁ、委員長が隠れ巨乳なのはポイント高いけど、それだけだな……)


「……何よ? ちょっと、変な目で見ないでくれるかしら?」

「別に良いだろ? 何か減るもんじゃ無いし……」

「減るわよ? 安藤くんの財産が慰謝料でね♪」

「俺、訴えられるの!?」


(見ただけで訴えられるとか、どんだけだよ!)


「クフフ……♪ だって、安藤くんの視線がやらしかったんですもの?」

「ちょ、おま! べ、別に……ややや、やらしくなんか……無いし……」

「ちょっと、待ちなさい! 貴方、その反応……まさか、本当に変な目で見てたんじゃないでしょうね……?」

「さぁ、委員長! いつも通りラノベの話題に花を咲かせようじゃないか!」

「安藤くん!? わたし達、別にそれほどラノベの話題してないわよね!?」


(というか、明らかに誤魔化そうとしてるんじゃないわよ! で、でも……安藤くんでも、わたしをそういう目で見ることもあるのね……)


「とにかく……話を戻すけど、何で俺が図書室にいたらおかしんだ? 委員長」

「その様子だと本当に忘れているみたいね……。安藤くん、この前も言ったけど今日が何の日か忘れているのかしら?」

「今日が何の日……? MF文庫Jの発売日は昨日のはずだし……何かあったっけ?」

「その様子だと本当に覚えてないのね……。今週末にクラスの親睦会があるって言ったでしょう? それが今日なのよ」


(あの時、安藤くんの参加を聞くのをすっかり忘れていたから、まさか図書室にいるんじゃないかと思ったら案の定だったわね……)


「ああ! あれって、今日だったのか! すっかり、忘れていたよ」

「はぁ、そんなことだと思ったわよ」

「でも、俺は行かないかな……」

「……安藤くんのことだから薄々そうなんじゃないかと思ってたけど……でも、安藤くん以外の皆は参加するのよ?」

「え? だけど、委員長はここにいるじゃん?」

「わたしは図書委員の当番なだけよ。それに、ちゃんと後から参加する予定よ。開始時間だってまだ余裕はあるから全然間に合うわ」


(このわたしがクラスの親睦会に参加しないわけないじゃない。だって、親睦会というのは表向きで、本当はクラス内のポジションを皆に認識させる場なんだからね? ちゃんと、この親睦会でわたしの『委員長』としての目立ち過ぎず、ある程度の発言力のあるポジションを確立させなきゃいけないんだから)


「ふーん……。まぁ、頑張ってくれよ。俺はここでラノベ読んでるからさ」

「安藤くんは本当に参加しなくていいのかしら? いくら、ぼっちな貴方だってこの機会を活かせば友達の一人や一人半くらいは見つかるかもしれないわよ?」

「……遠回しに、二人以上の友達を作るのが無理って言うの止めてくれる?」

「あら、ゴメンなさい。クフフ……♪」


(まぁ、安藤くんでも……『一人』くらいなら直ぐに友達ができるかもね?)


「それに、俺ってそんなに『友達が欲しい』とは思わないんだよな……」

「へぇ……それは何でかしら?」


(無駄にひねくれた安藤くんのことだから、ただの強がりで言っているわけではないと思うけど……)


「そんなの決まっているだろ? 友達を作るより、ラノベを読むのが優先だからさ!」


(しかも、今読んでいるのは昨日発売したばっかりのラノベだからな!

 いやぁ~、この作品の続きがずっと気になっていたんだよね♪)


「はぁ、そんなことだろうと思ったわよ……」


(安藤くんってば、本当にラノベバカなんだから……)


「まぁ……だから、俺が友達を作る時はさ……」

「……『作る時は』何よ?」


(もし、こんな安藤くんに『友達』ができるとして……。

 それは、一体どんな時なのか――)


「ラノベよりも『優先したい人』ができた時なんじゃねぇのかな?」

「……そう、安藤くんらしいわね」


(だとしたら、連絡先を知っていることが友達の定義とは言えないかもしれないけど……)


「安藤くん。やっぱり、あなたの連絡先――」

「ん、何だ? 委員長」

「……いいえ、何でもないわ」


(だって、安藤くんの考えで言うのなら、この『セリフ』は安藤くんの方から言わせないと意味が無いものね……)


「そう言えば、委員長。もう結構な時間だけど、クラスの親睦会は行かなくていいのか?」

「それなら行くのは止めたわ」

「え! いきなり何で?」


(さっきまで行くみたいなこと言ってたのに……)


「クフフ……わたしも安藤くんと同じで本が読みたくなったのよ♪」

「そっか。なら、仕方ないな……」


(あれ? だけど、委員長が読みだしたその本って……昨日も読んでなかったっけ? 二日続けて同じ本を読んでいるなんて、委員長にしては読むの遅いな……)


(そう、わたしも安藤くんと同じで――『優先したいもの』ができただけよ。

 クフフ……♪)





 『何故かの』一年生編 終わり







【おまけ】『何故かの』二年生編


(明日は学年発表会の本番……。わたし達、二年生のクラスは演劇で朝倉さんと安藤くんが主演の『ぼっちとジュリエット』をやるわけだけど……)


「安藤くん、明日は『ぼっちとジュリエット』の本番だけど、朝倉さんの大根役者っぷりはどうかしら?」

「ああ、委員長。一応はなんとかなりそうだよ……」

「そう。なら、良かったわ」


(でも、あの朝倉さんの大根役者っぷりをよく何とかしたわね……)


「わたしがアドバイスした演劇デートの効果があったのかしら?」

「そんなわけねぇだろ……」


(あんな方法で、朝倉さんのポンコツ大根役者っぷりが解決するわけねぇだろ……)


「まぁ、そうでしょうね……」


(だって、朝倉さんの問題を解決できるのは安藤くん『貴方だけ』なんだから)


「てか、そうだ! おい、委員長! あの罰ゲームはなんだよ!?

 まさか『帰るまでロミオとジュリエット呼び』とか、聞いてねぇぞ!? そもそも、何で桃井さんにしか教えてないんだよ!」


(おまけで、あんな恥ずかしいセリフを朝倉さんに言う羽目になったんだからな……。 くぅあ~っ! 今、思いだしても恥ずかしくて死にたくなる……。

 何だよ『愛の言葉を伝える罰ゲーム』って……)


「だって、仕方ないじゃない。わたしは朝倉さんの連絡先は知っていても、安藤くんの連絡先は知らないのよ? だから、ここは桃井さんにメールして伝えてもらった方が公平だと思ったのよ♪」


(まぁ、本当は……ただの確信犯なのだけど――)


「じゃあ、委員長の連絡先教えろよ」

「……へ?」

「だから、委員長の連絡先だよ。これで交換しておけば、今後は同じような言い訳はできないだろ?」

「そ、そうね……」


(まさか、今更この男の連絡先が手に入るなんてね……)


「……クフフ♪」

「おい、委員長。何で笑ってるんだよ?」

「いいえ、何でもないわ」


(安藤くん、この勝負……わたしの勝ち負けね)


「……遅いのよ。バカ」







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう。委員長よ♪

 さて、わたしの出番が沢山あった『何故かの』一年生編楽しんでくれたかしら?

 クフフ……これでまた、わたしのファンが増えてしまったわね♪


 そして、今日はなんと! ついに『何故かの』4巻の表紙イラストがMF文庫Jの公式ツイッターで発表されたらしいわよ♪

 クフフ♪ ついに、このわたしが表紙に――」



↓MF文庫Jの公式ツイッター(ここから、4巻の表紙イラストが見れます!)

https://twitter.com/MF_bunkoJ/status/1190184199451316224?s=19



「ぁ…………」



「    」 シーン……



「……ん? おい、委員長?」 ← 委員長が急に黙ったので心配になって様子を見に来た安藤くん

「    」 シーン……

「おーい? 委員長ー? 大丈――」

「    」 シーン……

「し、死んでる……」


(一体、何が……)


「…………」 チラッ ← 4巻の表紙を見た安藤くん


(あぁ、なるほど……表紙イラストを見て心臓が止まったのか……)


「4巻の表紙が誰になったのかは是非、皆の目で確認してくれよな。

 さて、次回の『何故かの』は?」


次回「『何故かの』???ルート」 よろしくお願いします!


「今日は委員長の心臓が止まったから、じゃんけんは無しだぞ。

 その変わり『何故かの』4巻のあらすじを公開して終わりにするから許してくれ。


 因みに『何故かの』4巻を読んだ後に今回の一年生編を読み返すと、また違った感想が出て来るかもな……?」





何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが? 4


【あらすじ】

夏休みは終わり今日から新学期! しかし、朝倉さんの精神は崩壊寸前!?

そんな中始まる生徒会長選挙!! 何故か安藤くんは委員長と一緒に立候補する羽目になって……って、何で朝倉さんまで立候補しているのぉおお!?


選挙に勝つため委員長と私服デートしたり、金髪縦ロールの生徒会長を安藤くんがバニーガールにしたり、ウザ可愛い後輩ちゃんに気に入られたりなど、新キャラクターも続々登場! 


悩む安藤くん、暴走する朝倉さん、そして、安藤くんと委員長の出会いの秘密が今明かされる――。


Webで悶死報告多数! すれ違いが絡まり合う新世代の学園ラブコメディ第4弾! “ヒロイン”と“ぼっち”の関係が動く!? 



11月25日発売! 表紙はこちら↓

https://twitter.com/MF_bunkoJ/status/1190184199451316224?s=19

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る