第339話「生徒会長誕生秘話」


「これがウチのノベの写真だよ。ほら、かぁいいでしょ~?」

「ミャァー!? 何これ! メッチャ可愛いんですけどぉ~キャピ!キャピ!キャピ!

「こらこら、二人ともクリスマスだからと言ってそんなに騒いだら近所迷惑になりますですわよ?」


(でも、わたくしのマイスイートラブリーエンジェルこの世の果てまで探しても一輪しか咲いてない奇跡の妹があんなにも楽しそうに……去年はあんなにも尖っていたのがもはや懐かしいですわ……)




 一年前


「会長!」

「あら、石田くん。どうしたのですか?」

「会長、これを見てください!」

「これは……新聞部の記事ですの?」


(えっと……『もう直ぐ、冬休み! クリスマスに向けてのオススメヘアカラー特集』ですって?)


「まったく、新聞部は何を考えているんだ! いくら、冬休みが始まるからと言って学校内の部活動が、生徒の風紀を乱すような記事を書くなんて!」

「でも、石田くん。この学校の校則では、生徒の髪型や髪色などは特に規制されていませんですわ。だから、わたくし達にこの新聞部の記事をとがめることはできないのですわ」

「ですが、会長! それでは甘いです! 校則が特に規制していないからこそ、僕達がちゃんと取り締まるべきだと思います! それに、この校則が決まったのだって十年以上前の生徒会長が勝手にそう決めたって噂ではないですか!?」

「まぁ、そうですわよね……」


(確かに、わたくしも先生から聞いた話ですが、この学校の校則が緩いのも昔の生徒会長が――、


『ガッハッハッハ! 髪や服の着方なんかでゴチャゴチャ言ってるんじゃねぇよ! たとえ見た目が綺麗なスイカでも中身が腐ってたら意味がねぇだろ? つまり、見た目なんか関係ないってことだな! 大事なのは中身だろ? 結局、目に見える『情報』なんて『偏見』の塊でしかないんだよ! でも、俺はこの学校に人を見た目で判断するような人間はいないと信じているからな! だって、そうじゃなきゃこの俺が生徒会長なんかになれるわけが無いだろ? ガーッハッハッハ!』


 ――というような経緯が生徒会長と学校側であって、最終的に当時の生徒会長が生徒と一緒に暴動を起こしかけたことで『生徒の髪型や髪色などを特に規制しない』という校則が加わったと聞きますわ)


「まったく……何が『ヘアカラー特集』だ! オシャレと言う言葉を口実に生徒を非行に走らせているだけじゃないのか!? 皆も姉ヶ崎会長のように綺麗な黒髪が正しい生徒の在り方だと己を見つめなおすべきです!」

「石田くん、そこまでわたくしを褒めても何も出ませんわよ?」


(まぁ、確かにわたくしは石田くんの言う通り、髪も特にいじらずにそのままの黒髪のストレートヘアーで制服も正しく着こなしていますが……ただ、それはわたくしがオシャレに興味があまりないだけで、生徒会長として皆の見本であろうなどという考えはあまりないのですわよね)


「とりあえず、この新聞部の記事は少し注意した方が良いかもしれませんわね。石田くん、お願いしていいでしょうか?」

「はい! 会長、僕に任せてください! 今すぐに新聞部に乗り込んできます!」

「あ! でも、ちゃんとブレーキ役……もとい、お供に藤林さんを連れていくことをオススメしますわ」

「はい! 藤林の奴にも僕の働きを見て勉強してもらおうということですね!」

「あぁ……まぁ、そういうことですわね♪」


(正直、こんな問題に興味なんて無いので石田くんの方で勝手に処理してくれればいいですわ♪ それにしても、風紀の乱れですか……)





「はぁ~、今日も学校終わりましたわ」


(やっぱり、今年から生徒会長になりましたから覚えることが多くて大変ですわね。でも、面倒な仕事は石田くんに押し付け――もとい、任せればいいですわよね。そもそも、そのためにあの真面目バカ――もとい、石頭――もとい、石田くんを副会長に指名したんですもの♪

 でも、学校にはわたくの癒しであるマイスイートエンジェルの妹がいないのがキツいですわ。だけど、これも二年生までの辛抱ですわね! 来年は妹も一年生として入学しますし! そうしたら、生徒会で妹とイチャイチャ甘々ライフですわ♪)


「お姉ちゃん、ただいま~」 ガチャキャピ! ←ドアを開ける音

「あら、さっそく帰ってきましたわ♪ わたくしのマイスイートエンジェ――って、それはどうしたんですのぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」


「ん? お姉ちゃん、そんなに驚いてどうしたの? アタシどこかおかしいかなキャピ!


「『おかしいかな?』ではありませんですの! 何ですかその髪の色は! けけ、今朝見た時はお姉ちゃんと同じ綺麗な黒髪でしたのに……それにその派手な服と髪型は……」


(それじゃあ、まるで今時の『ギャル』みたいじゃないですの!?)


「えっへへ、いいでしょぉ~♪ 今日、染めて来たんだキャピ!

「いいわけないですわ! 貴方、来年は高校入学ですわよ!? なのに、髪を染めるなんて!」

「はぁ~? 別に、もう進学は決まっているんだからいいでしょ? それに、お姉ちゃんの高校は『髪型や髪色などを特に規制しない』って、ちゃんと校則にあるんだよねぇ~キャピ?

「そ、それはそうですが……しかし、貴方はお姉ちゃんの妹なのですわよ!? そんな姿で入学したら周りから貴方がなんて言われるか――」

「お姉ちゃんてば、嘘ばっかり……」

「え?」


「『アタシが周りから何か言われる?』違うよね? お姉ちゃんが気にしているのは『アタシの評価』じゃなくて『アタシみたいな妹がいる自分の評価』でしょ!」


「なっ!? そ、それは……」

「アタシはお姉ちゃんとは違うの! アタシはアタシのしたいように生きるから!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

「お姉ちゃんの指図なんかいらない!」


 ペッターン! ←妹の部屋のドアを閉める音です


「そんな、わたくしは……」


(自分の評価なんて――、


『ガッハッハッハ! 大事なのは中身だろ? 結局、目に見える『情報』なんて『偏見』の塊でしかないんだよ!』


 ……もしかして、わたくしは間違っていたのでしょうか?) ペターン…… ←ただ姉がショックを受けている音です





「皆さん、おはようございますわ!」

「会長、おはようございま――か、会長……?」

「あら、どうしましたの石田くん? わたくし、何か変でしょうか?」

「どうしたじゃないですよ! 会長、その髪は一体どうしたんですか!?」


(何なんだこれは!? ぼ、僕が尊敬する生徒会長が……き、金髪縦ロールになっているだとぉおおおおおおおおお!!??)


「あら、この髪ですか? 昨日、美容室に行ってやってもらったのですわ」


「会長! 僕はそう言うことは言っているのではなくて……生徒会長と言う人がそんな非行に走っていいと思っているんですか!? 生徒の見本となるべき生徒会長がそんな真似をするなんて……もし、他の生徒が会長の真似をし出したら!」


「非行? 石田くん、貴方は『非行』と言いましたが、実際にわたくしは何か『校則違反』を起こしましたでしょうか?」

「そ、それは……確かに、校則では髪に関しては規制されていませんが……」


「ですわよね? 石田くん、貴方は勘違いしていますわ。

 確かに、髪を染めたり派手な見た目になることで非行に走る生徒はいるかもしれません……。しかし、それは『見た目』が変わったから非行に走ったのではなく、変わったのはその生徒の『中身』なのですわ!


 石田くん、貴方は『生徒会長は生徒の見本となるべき存在』と言いましたわね? まさに、その通りですわ! だから、わたくしが見本となるのです!


 たとえ、髪を染めて派手な髪型になり、見た目が変わろうとも……。

 この、わたくしが生徒会長として正しい行いをしていれば、大事なのは『見た目』ではなく『中身』だということが伝わるはずですわ!」 ペッターン! ← でも、パッドで胸の見た目は誤魔化している人の擬音です


「か、会長……あなたと言う人はそこまで考えて……」


(僕は……なんて愚かだったんだ! 見た目だけにこだわって大事な事を見逃していた……。そうだ! どんなに見た目が変わっても大事なのは中身じゃないか! それに、今の時代はいろんな髪の生徒だっている。そんな生徒は見た目だけで変なレッテルを張られる可能性があるだろう。会長はあえて派手な髪になることで、自分を犠牲にしてそんな生徒達の盾にな当としているんだ!)


「会長、僕は一生貴方に付いて行きます!」

「それは……ちょっと、ゴメンですわね……」


(フフ……そうです。元からこうすれば良かったのですわ! わたくしは自分の妹を可愛すぎるあまり、自分の理想を妹に押し付けていました。しかし、妹にはちゃんと妹の考えがあります……。


 なら、わたくしの方がマイスイートエンジェルの理想に近づけば良いんですわ!


 自分が普通だと思って、妹の趣味嗜好を否定するのではなく……妹が髪を染めるなら、お姉ちゃんだってイケイケのパリパリパピデビューしちゃいますわ!


 ちゃんと、美容院さんでも『今風の歌舞伎町にいるようなギャルギャルな感じにしてくださいですわ!』と言ったのでこれが今の『ギャル風ヘアー』なのでしょう! 妹もこのわたくしの姿を見た時は『うわぁ……マジで……?』と、信じられないものを見るかのような目をしていたので、きっとわたくしの覚悟の重さが伝わって感動で打ち震えていたに違いありませんわ!


 それに……わたくしの方が派手な見た目になれば、あの子くらいの派手さなら悪目立ちしないですものね♪)




 因みに――、


「なぁ、イメチェンした生徒会長見た……」

「ああ……俺、冬休みに髪染めようと思ったけど止めたわ……」

「あれを見ると……意外と恥ずかしいんだなって思い知らされるよな……」


 何故か、学校の風紀は良くなったという……。


 ペターン……






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう。きっと、4巻で表紙を飾る委員長よ♪


 実は今回の更新でカクヨム版『何故かの』の本文が100万文字を突破したわ。つまり、今この次回予告を読んでいる皆は100万文字の小説を読んだことになるわね。

 100万文字も『何故かの』を読んでくれてありがとうね♪ そして、これからも『何故かの』をよろしくね? クフフ……♪


 さーて、次回の『何故かの』は♪」


次回「リトル・クリスマス」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。

 皆、出す手は決まったかしら? わたしはいつも通り『グー』を出すかもしれないわよ……?


 ペタペタ・ペタりん♪


   じゃん・けん・ポン♪」 



























【グー】



「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」


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