第338話「ホワイトクリスマス」
「「「メリークリスマス!」」」
「まさか、わたくしの妹が家にお友達を連れて来てくれるなんて今日はなんていい日なのですわ♪」
「べ、別に、アタシが呼んだわけじゃないし……安藤さんが勝手に来ただけだしぃ……」
「コラ、いくら何でもせっかく来てくれたお友達にそんな言い方は失礼ですわよ?」
「急にお邪魔してすみません。姉ヶ崎先輩」
「別にいいですわよ♪ 確か、安藤くんの妹さんなのですわよね……?」
(最初に聞いた時はあの男の『妹』と聞いて警戒しましたが、意外と普通の……いいや、あの男からしたらかなりまともな子ですわね)
「えっと……もしかして、お兄ちゃんが何かご迷惑をおかけしましたか?」
「そ、そんなことは全然! むしろ、安藤くんにはいつもウチの妹がお世話になっているみたいで感謝しかないですわ♪」
(本当は言いたいことも沢山ありますが……しかし『この世の万物を司る妹という存在』に罪はありませんですわね)
(あ、この反応……いつも私が自己紹介をする時の『あの安藤の妹か……』って反応と同じだ。お兄ちゃん、姉ヶ崎先輩にもやっぱり、何かやらかしているんだね……)
「ちょ! 二人とも外見て見て
「どうしましたの? って、あら……雪ですわね」
「わぁ……ホワイトクリスマスですね!」
(お兄ちゃんとサクラお義姉ちゃん、今頃上手くやっているといいなぁ……)
「あ、朝倉さん……」
「あ、安藤きゅん!? な、何かしら……?」
「いや、そう言えば……今日が『このラノ』の閉め切りだけど、もう投票はした?」
「あ、当たり前じゃない!」
「そ、そうだよね……あはは……」
(ヤバイ……変に緊張して、朝倉さんと軽い会話をするだけでもすごいギクシャクしちゃうんだけど……これじゃ、余計に変な勘違いさせるよな……) ← 上手くやってない
(安藤くんてば、さっきから私の様子を確認するかのように、ちょくちょく軽い会話を投げかけて来るけど……つまり、これは! そろそろ、サプライズ(意味深)のタイミングってことよね!) ← 上手くやってない
「そ、そう言えばなんだけどさ……」
(仕方ない。こうなったらタイミングは少し早いかもしれないけど、さっさとプレゼントを渡してこの空気を何とかしてしまおう!)
「今日って、朝倉さんの誕生日だよね?」
「ええ! やっぱり、安藤くんてば私の誕生日を覚えてくれていたのね!」
「あ、当たり前じゃないか! あはは……」
(桃井さんに聞いて初めて知ったとは言えない……。今度、桃井さんにいつもの喫茶店でパフェで
(つ、つまり……今から、安藤くんとサプラァ~イズのショーターム! が――)
「…………」 じゅるり
「えっと……お腹が減ってるなら先にケーキも用意しているから食べる?」
「――ッ!? ぜ、全然大丈夫よ! ウフフ♪」
「そ、そう……?」
(何だろう……。さっきまでは普通に彼女と家で二人っきりでただ気まずいだけだったんだけど、今になって急に身の危険が……朝倉さん、気のせいだよね?)
「じゃあ、朝倉さん。これ、俺からの誕生日プレゼントだけど……貰ってくれるかな?」
「え、安藤くん『からの』誕生日プレゼント……?」
(俺『が』誕生日プレゼントだよ♪ ……じゃなくて?)
「うん、俺からの『誕生日プレゼント』だよ♪」
(やっぱり、朝倉さんも俺が『誕生日プレゼント』を用意しているのには驚いているみたいだな。ちゃんと、用意しておいて良かった……)
「大きな箱ね……。開けてもいいかしら?」
「うん、開けてみてよ♪」
「じゃあ、開けるわね♪」
(もしかしたら、この箱の中に『俺が誕生日プレゼントだよ♪』って、書かれた『安藤くん一日自由券』とかが入っている可能性だってあるかもしれないものね!
――って、こ……これは!?)
「メロン社の……『タブレット』かしら?」
「うん! 朝倉さんって、ラノベ好きを隠しているからあまり外では主になろう小説をスマホで読むでしょ? でも、スマホだと画面の文字が小さいから目が疲れるって言ってたからその……なろうとかの読書用にタブレットはどうかなって……」
「わざわざ、そのために『タブレット』を買ったの!? だってこれ……結構な値段がするんじゃないの?」
「まぁね……。でも、お金ならこの前のバイトで予想以上に稼げたし……それに、年に一回しかない朝倉さんの誕生だからね」
「安藤くん……ありがとう。私、こんな素敵な誕生日プレゼントを貰えてうれしいわ♪」
(本当に、なんて贅沢なプレゼントなのかしら……ウフフ♪)
(良かった……。タブレットを誕生日プレゼントにしようとした時は、妹や姉ヶ崎妹も微妙な反応をしてたから渡すのが少し不安だったんだよなぁ……。
よし、何かいい雰囲気だし……ついでに、このまま――)
「あ、朝倉さん! 少し、目を閉じてもらっても……いいかな?」
「――ッ!? え、えぇ……」 スカァ~ ← 目を閉じる音
(こ、これは……ついにサプライズ(意味深)の瞬間が!? め、目を閉じてってことはまずはキスから……って、あれ? 何か首に――)
「……よし、朝倉さん。目を開けていいよ」
「これは……ネックレス?」
「うん、こっちはクリスマスプレゼントだよ」
(姉ヶ崎妹がタブレットを買った後に『普通にアクセサリーを買っても喜びそう』って言ってたのを思い出して、クリスマスプレゼント用に買っておいたんだよな。
まぁ、タブレットで予算のほとんどを使ってしまったので、ラノベ二冊分程度の安物なんだけど……)
(え!? まさか、あのラノベにしか興味の無い安藤くんがこんなちゃんとしたプレゼントをくれるなんて――、
これ絶対に何処か別の『女』の入れ知恵ね……。だって、安藤くんがこんなまともなプレゼントを用意できるわけないもの!
大方、委員長とモモにアドバイスを貰って、妹ちゃん姉ヶ崎さんの二人にプレゼント選びを手伝ってもらった感じかしら……?
でも、私は心と胸が大きくて広い女だから、これくらいのことで怒ったりしないわ♪ むしろ、安藤くんがそれほどまでに私のことを考えてくれているってことだと思うし、手伝ってくれた皆にも安藤くんの妻として、後でちゃんとお礼をしないといけないわね♪
でも、これが安藤くんのサプライズプレゼントってことは本当のサプライズ(意味深)はお預けなのかしら……?)
「ねぇ、朝倉さん。さっき俺はタブレットを『なろうとかの読書用』って言ってプレゼントしたけど……じ、実は、このタブレットを朝倉さんの誕生日プレゼントにしたのはもう一つ特別な意味があるんだ……」
「特別な意味……?」
(もしかして、それってサプライズ(意味深)――ッ!?) ← 幸せ過ぎて頭がポンコツになってます
「朝倉さんって、あまり電子書籍は使わないよね?」
「そうね『なろう』は読むけど書籍は紙派だから、安藤くんよりは全然使ってないわね」
(だから、このタブレットも、なろうの読書用って言われて納得したのだけど――)
「実はそのタブレットには、俺の電子書籍用のアカウントが登録してあるんだ」
「え……えぇええええええええええ!? じゃあ、このタブレットの中に今まで安藤くんが買った電子書籍が全部入っているってことなの!?」
「うん……」
「安藤くん『うん』じゃないわよ! そ、それって……」
(だって、安藤くんのアカウントが登録してあるってことは……私がこのタブレットで電子書籍を安藤くんのお金で勝手に買うこともできるわけだし……やろうと思えば、個人情報の流失やパスワードの変更だってできるってことよね!?)
「もの凄く危ないわよね!?」
「そうだね。だから、朝倉さんにそれを受け取って欲しいんだ」
「ど、どうして……? 別に、電子書籍なら今までみたいに読みたい時だけスマホを借りるでもいいじゃない?」
「ずっと前から考えていたんだ……。俺が朝倉さんに渡せる一番のプレゼントは何だろう? ってね……」
「それは……」
(もちろん、安藤くん自身……) じゅるり ← 心の涎が垂れる音
(朝倉さんと話すようになって過ごしたこの七ヶ月……俺は本当にいろんなことを朝倉さんに教わった。
『あ、安藤くん、何を読んでいるの?』
『て、転生したら悪役令嬢だった件……』
『私は――恥かしいなんて、思わない!』
『なら、私を信じて!』
『私が貴方を、幸せにするわ!』
『うん! 安藤くん、私も愛してる! だから、結婚しゅる!』
『ええい! 御託はいいからさっさとその唇を私に寄越しなさい! ギャウゥウウ!』
『うん! 暮らす! 一緒にいるわ!』
『ゆびきりげんまん~嘘ついたら、単行本サイズのラノベ千冊飲~ます、指切った!』
今思い返すと、まだ一年も経ってないんだな……。でも、俺にとって朝倉さんと過ごした日々は本当に濃くて……だから、これからも一生一緒にいたいと思ったんだ)
「それで『二人の共有できる物』が欲しいって、思ったんだ……」
「それが、このタブレットなのね?」
「うん、そのタブレットは俺の……そのぉ……『信頼の証』と言いますか……『将来を誓った証』というか……」
「それって……」
(あの時の――、
『俺と結婚してください』
……つまり、いずれ一緒になる証として、自分のアカウントを入れたタブレットを私にプレゼントしたってこと?)
「そ、それに! 最近だと俺と朝倉さんって好きなラノベもよく被るから……知らないで同じラノベを買っちゃたり、読んでいるラノベもかぶっているでしょ? だから、こうして二人で共有できるタブレットがあれば、二人とも読んでいるラノベの新刊とかはこのタブレットで買って共有できればラノベ代も節約できるし……そうしていけたら、一年後、十年後、五十年後と……このタッブレトの中のラノベが『二人の共有財産』みたいになるかな? って……」
「……安藤くん、ありがとう♪ 今日のプレゼント、本当に嬉しいわ! このタブレットを二人のラノベで一杯にしましょうね? ウフフ♪」
「朝倉さん、そうだね!」
(やっぱり、ちょっと気恥ずかしいけど……でも、最初の変な雰囲気はなくなったな。良かった……じゃあ、そろそろケーキでも用意しようかな……)
(二人の財産が『ラノベ』だなんて、本当に安藤くんらしいんだから……)
「もう……安藤くんが悪いんだからね?」
「……え?」
(朝倉さん、何を――)
(だって、こんなプレゼントされたら……私も気持ちが抑えきれ――ない!
のよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!)
「安藤きゅん! 私からもサプライズ(意味深)プレゼントしちゃうんだから!
ムキャァ~~ッ!!」
「ちょ! 朝倉さん、ストップ、ストップ!? 何で、何で俺の服をはぎ取ろうとするの!? 一体何処の追いはぎグレムリンかな!?」
「ええい! 御託はいいのよ! ギャウゥウウ!」
「あ、朝倉さん! ケーキ! ケーキあるから! まずはそれを食べてからに……い、イャァァアアア!?」
「はぁ、お兄ちゃん上手くやっているかなぁ……」
「安藤さん。そろそろ、ケーキを食べますわよ♪」
「このケーキ、美味しそう! いただきまーす
スカーン…… ← 上手くやっているかどうかは皆さんのご想像にお任せしますの音
【あとがき】
「皆、いつも応援してくれてありがとう。4巻で表紙を飾るはずの委員長よ♪
今回で七章は【クリスマス】編は終わりになるわ。
次回からは本編では書けなかった短編や他のキャラの番外編をしばらくはやる予定よ♪
クフフ……『他のキャラの番外編』と言うことはきっと、人気キャラであるわたしの番外編が一ヵ月くらい連載するという可能性も高いわね。
じゃあ、また次回の更新で会いましょうね? クフフ……♪」
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