第329話「フリーパス」
「安藤くん、見て見て! 観覧車におばけやしき! あっちにはメリーゴーランドもあるわ!」
「朝倉さん、走ると危ないよ? それに、そんなに慌てなくても今日は一日フリーパスがあるから遊園地の施設は乗り放題だからね」
(バイトばっかりで朝倉さんをほったらかしにした責任として、久しぶりにデートで遊園地に来たけど……この様子だと来て正解だったな)
「昨日は一日中パパが安藤くんを独り占めしちゃったし、今日は私が安藤くんを独り占めするんだから!」
「いやいや……一応、昨日も朝倉さんの家でご飯食べたり、ラノベを読んだり、ゲームしたりと一日中一緒にいたよね?」
「でも、全部パパが一緒だったじゃない! だから、今日は一日安藤くんフリーパスなの!」
「あはは……じゃあ、せっかくのフリーパスだし、沢山遊ばないと損だね?」
「ええ! だけど、安藤くん。いきなり遊園地に連れて来てくれてしかもフリーパスだなんてお金は大丈夫なの?」
(ここまでの交通費とかフリーパスの料金とか考えたら、結構な金額になるわけだけど……)
「それなら、問題ないよ。最近はバイトに入る時間が予想よりも多くなって、むしろ……ちょっと無駄に稼ぎ過ぎたくらいだからね」
「そ、それは喜んでいいのかしら……?」
(でも、安藤くんが遊園地に誘ってくれるなんて珍しいし、今日は思いっきり安藤くんに甘えて楽しんじゃおうかしら♪)
(朝倉さん、喜んでくれているみたいで良かった。まぁ、朝倉さんが最近寂しそうにしているから、おすすめの遊園地を調べて……
『たまにはバイトを休んで、こういう場所にサクラお義姉ちゃんをデートにでも連れて行ってあげること! お兄ちゃん、分かった?』
――って、アドバイスをくれた妹には感謝だな……。帰りに高いコンビニのプリンでも買ってやるか)
「じゃあ、朝倉さん。まずはどの乗物から乗ろうか?」
「そうね♪ まずはメリーゴーランドにお化け屋敷……いいえ、最初からジェットコースターなんてのもありね!」
(ウフフ♪ メリーゴーランドで石破ラブラブメリーゴーランドするのもいいけど、お化け屋敷に入って――、
『キャー! 安藤きゅん! グレムリンのお化けが出たわー♪』 スカッ!
――って、ワザと抱き着いてみたり、またはジェットコースターで……
『キャー! 安藤くん、このジェットコースター最初っからクライマックスよ!』 スカッ!
――って、堂々と抱き着くことだってできるものね!)
「じゃあ、朝倉さんが気になる物から順番に乗っていこうか?」
「なら、安藤くん! まずはジェットコースターから乗ってみてもいいかしら? そのぉ~、いきなり絶叫系のアトラクションにはなっちゃうのだけど……」
「うん、全然大丈夫だよ♪ 今日は時間もたっぷりあるんだし、楽しもうよ」
「ええ、そうよね! 安藤くん♪」
(じゃあ、最初のアトラクションは、あの『ビッグバーンドラゴン』ってジェットコースターに決まりね!)
「どわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!! あ、安藤きゅぅううううううううううううううううううん!!」 メシメシメシ!
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああ!? 腕がぁああああああああああああああ!!」
十分後……
「あ、安藤くん、大丈夫……?」
「スカ……うま……」
(うわぁ~、ダメだ。一回ジェットコースターに乗っただけで完全に酔った……。
てか、ジェットコースターで朝倉さんが俺の片腕を思いっきり締め上げてたから、若干腕の感覚もヤバいんだよなぁ……)
「ゴメン、朝倉さん……。少し休ませてもらってもいいかな?」
「もちろんよ♪ じゃあ、このベンチで休憩しましょう! ほら、安藤くん。ここに横になって!」
「え! でも、それって……」
「ええ『膝枕』よ♪ だって、ベンチの上にそのまま頭を乗せるわけにはいかないでしょう? 私の膝を貸してあげるわ」
「いや、でも……流石にそれは――、うぐっ……」
「ほら、まだ酔いが残って気持ち悪いんでしょう? そ、それに……私は安藤くんの彼女なんだから、こういう時くらい遠慮しなくてもいいんじゃないかしら?」
「えっと……じゃあ、お願いします……」
(でも、膝枕って下からおっぱいを見上げるみたいでちょっと恥ずかし――)
「安藤くん、どうかしら?」
「……うん、朝倉さんの綺麗な顔がよく見えるよ」
(今日はいい天気だなぁ~) スカーン……
「もう、安藤くんてば! 何を言ってるのよ~♪」
「うぅ……最近バイトばっかりだったから……久しぶりに朝倉さんを喜ばせたかったんだけど、こんなことになって……本当にゴメンね」
「安藤くん、そんなこと気にいしていたの?」
「朝倉さん、そんなことって……」
(だって、俺がバイトばっかりで朝倉さんに構ってあげられないのは事実だし……)
「確かに、最近は安藤くんがバイトで会う時間が減っているのは寂しいけど……でも、安藤くんがバイトを始めたのは私のためなんでしょう?」
「え、朝倉さん……知ってたの!?」
「ウフフ♪ 安藤くんがバイトで忙しい間、誰が私とよくいたと思っていたのかしら?」
「え、それは……」
(そうか! 妹の奴が漏らしたのか……。あいつ俺がバイトいない間、朝倉さんと会ってたみたいだし、こっそりクリスマスイブの予定も決めてたもんな)
「確かに、安藤くんが私のことを思って遊園地に連れて来てくれたのは嬉しかったわ。でも、それは遊園地に来たことが嬉しいんじゃなくて、安藤くんが私との時間を大事にしようと思ってくれたことが嬉しいのよ♪」
「あ、朝倉さん……」
(あれ? じゃあ、フリーパスなんて金の無駄遣いしないで、俺の家で一緒にラノベ読むだけでも良かったんじゃね……?)
「因みに、安藤くん。酔いはもう回復したかしら?」
「うーん……乗り物酔いの方はちょっとは回復したんだけど、こんどはなんだか人の多さで酔ってきたかも……」
「人の多さで酔うってどういうことなの!?」
(でも……それだけ苦手な場所なのに頑張ってくれたって意味よね)
「じゃあ、安藤くん。しばらく回復するまでここでこれでも一緒に読みましょうか?」
「あ、それは『俺の弟がこんなに可愛いわけがない』の新刊じゃん!」
「ウフフ♪ もう元気になったんじゃないかしら?」
「アハハ、これも朝倉さんの膝枕のおかげだね。それよりも早く読もうよ! それ続きが気になってたんだよね」
「じゃあ、読みましょうか♪」
(結局、この後。俺と朝倉さんは最後まで遊園地でラノベを読んでいて、フリーパスは完全にいらなかったけど……でも、不思議と無駄遣いだとは思わなかった)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪
朝倉さん、久しぶりにちゃんとした出番だと思ったら、とんでもないヒロイン力を見せつけられたわね。やっぱり、メインヒロインはだてじゃないってところかしら?
さーて、次回の『何故かの』は♪」
次回「接客業」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パー】
「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」
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