第327話「クレーマー」
「ボイさん、なんか噂で聞いたんですけどこの店ってかなりヤバイバイトがいるって本当ですか?」
「ヤバイバイト? ソレどんな人デスカ?」
「俺も昼帯のバイトの人達と交代する時に軽く耳にした程度なんですけど、何でも最近入った新人の中に貧乳から巨乳、年下から年上、ありとあらゆる女を愛人にして店に呼ぶクソリア充パリピ野郎がいるらしいんですよね」
「ナ、ナルホド……聞いたコトアル気ガスルヨ……」
「うわぁ……マジでそんな人いるんですね。俺が会ったことが無いってことは深夜メンツか朝帯の人なのかな? まぁ、そんなクソリア充野郎とか話すこともないし、むしろ会いたいとも思わないからこのまま合わないことを祈ろう……」
「安藤サン! オマエ、サンマイデオロスアルカ?」
「チンさんのこの間違った日本語って一体誰が教えているんですか……?」
(まぁ、チンさんが言う『マルアゲ』とかは本人が誉め言葉で使っているって、姉ヶ崎妹から聞いたから、きっとこの『サンマイデオロス』も悪い意味じゃないんだろうな)
(安藤サン……サンマイデオロシテイイアルカ?) ← 本気
「ちょ、センパ~イ! 補充から戻らないと思ったら、何キッチンでボイさん達と喋っているんですかぁ~!?」
「やべっ! いや……姉ヶ崎妹、違うんだ! これは、二人に日本語の勉強をだな!」
「日本語の勉強って……二人は既に日本語検定二級ですよ? そんな嘘言ってないでレジに戻ってください!」
「おい、ちょっと待て! 今何て言った!?」
(日本語検定二級ってこの二人が!? う、嘘だろ……?)
「そんなことより、ちょっと……いや、かなり面倒なお客さんが来たんですよ!」
「え、面倒なお客さんって……つまり、クレーマーか?」
「ええ、まぁ……そんな感じです。正直、アタシは相手したくないんで……センパイ、面倒なお客さん相手するの得意ですよね? この前みたいに『ハウス!』って言っていいんんで追い返してください!」
「別に、面倒な客の接客専門になった覚えはないんだけどなぁ……」
(でも、姉ヶ崎妹はこんだけ生意気でも一応は女の子だもんな。ストーカーナンパ野郎の件もあったしここは俺が出るか……)
「分かったよ。その客の相手は俺がしてやるから、お前はしばらくキッチンに隠れてろ」
「わーい♪ 流石はセンパイ頼りになりますね
「褒めたって何も出ないからな……」
(しかし『面倒なお客さん』って、今度はどんな客だ……?)
「お客様、お待たせしました――」
「遅いですわよ! 早くわたくしのマイスイートエンジェルを出しなさいな!」
「姉ヶ崎会長、お前かよ!?」
(そりゃあ、姉ヶ崎妹にとっては確かに『面倒なお客さん』だけどさぁ……)
「お客様? ご注文をどうぞ」
「チェンジですわ! 早くわたくしの可愛いマイスイートエンジェルを出しなさい!」
「お客様、すみません。ウチは指名制の店じゃないんですよ……」
「じゃあ、注文はウチの可愛いマイスイートエンジェルですわ! いくら払えばいいんですの!?」
「お客様、すみません。ウチは人身売買はしてないんですよ……」
「なら、このお店は何のために存在していますの!?」
「ハウス!」
(ここは普通のファーストフード店だよ! もうお前帰れよ……)
「安藤サン、マタアタラシイオンナヨ! マルアゲネ!」
「姉ヶ崎サン、アノお客さん誰デスカ……?」
「あぁ~、えーと……アタシは知らない人ですねぇ~? センパイの知り合いじゃないですかねぇ~
「「マタ新しい女カ……」」
「それで、何で姉ヶ崎先輩がここに来てんの?」
「……聞きましたわよ。あの子に変なストーカーが付いているんですって?」
「ああ、そのことか……」
(つまり、それで妹の様子が気になってバイト先にまで押しかけて来たと……まったく、姉ヶ崎先輩はどうしようもないシスコンだよなぁ……)
「一応、もう解決はしたことだから安心していいんじゃねぇの?」
「そうみたいですわね。わたくしもつい昨日ストーカーの件を母から聞いて驚きましたが、今日あの子が楽しそうに働いているところ見て少し安心しましたわ」
「え? てか、ストーカーのこと知ったの昨日なの? 先輩のことだからもっと早く知ってそうだったけど?」
「あの子があえてわたくしにだけ秘密にしてましたのよ! 大方、わたくしがストーカーの件を知ったら、心配してバイト先に突撃するとでも思っていたのですわ!」
「まさに、その通りじゃねぇか……」
(まぁ、でも……妹を心配する気持ちは俺も分からなくは無いからな……)
「てか、その話を聞いたんなら姉ヶ崎先輩もあまり遅くならないうちに帰った方がいいぞ?」
「あら、安藤くんみたいな人でも、このわたくしを心配してくれますの?」
「うぬぼれるな。先輩に何かあったらあいつ(姉ヶ崎妹)が悲しむだろ? 俺は『妹』が悲しむ姿を見たくないだけだ」
「フッ、流石は安藤くん。シスコンの鑑ですわね」
「先輩に言われたくはないんだよなぁ……」
「では、わたくしはこれで帰らせていただきますわ」
「はいはい、帰れ帰れ~」
(てか、マジで何も買わないのな……)
「そうでしたわ……。安藤くん、最後にこれだけは言わせていただきますわ」
「何? 注文でもする気になった? お勧めは持ち帰りだけど?」
「そうではありませんわ」
(いや、注文しろよ……)
「その……わたくしの可愛い妹を送り届けてくれてること……そ、それだけは感謝していますわ!」
「お、おう……」
(え? 会長、もしかして……今日来たのはそれを言うために……?)
「で、ですが! もし、わたくしの可愛い可愛いマイスイートエンジェルに手を出すようなことがあったら、可愛いマイスイートエンジェルが許しても、このわたくしが絶対に許しませんからね!?」
「何を言ってんだよ……。俺が姉ヶ崎妹に手を出すとか、ありえ――」
「お姉ちゃ~ん……いつまで、先輩に迷惑をかけるつもりかなぁ~
「ま、マイスイートエンジェル……ち、違いますの! こ、これは……」
「お願いだからバイト先には来ないでってあれほど言ったよねぇ~? お姉ちゃんはそんなことも忘れちゃうほど馬姉ちゃんだったのかぁ~? 言ったよね……もし、バイト先に来て迷惑を掛けたら姉妹の縁を切るって……
「待ってくださいまし! こ、これはですね……お姉ちゃん、貴方のためを思って――」
「御託はいいの! 姉妹の縁を切られたくなかったら、今すぐ帰って!」
「は、ハイですわ! 安藤くん! これで終わったと思ったら大間違いですからね!」
「お姉ちゃん!!」
「ハイ! すみませんですわ!」
「…………」
(シスコンもここまでいくとお終いだな……。
まぁ、俺はシスコンじゃないから関係ないけどな!)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪
予言するけど、この話のコメント欄は「お前が言うな!」であふれる気がするわね……。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「拗ね倉さん」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パー】
「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」
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