第326話「両手に妹」


「いらっしゃいませぇ~キャピ!

「いらっしゃいました~♪」


「…………」


(俺のバイト先に妹が来て、姉ヶ崎妹がニコニコ顔で接客しだした。

 何を言っているのかは分かるけど、何が起こっているのか分からねぇ……だって、二人とも笑顔のまま動かないんだもん……)


ご注文をどうぞぉ~☆何でアンタがここにいんの……?

オススメありますか~?こっちのセリフなんだけど……?

「そうですねぇ~、オススメは……テイクアウトです☆か・え・れ☆

「じゃあ、イチゴのサンデーを……店内で食べます♪お・断・り♪


((この野郎……っ!))


「ア、アンドウさん……アノオ客サン、怖イ……」

「ナ、何者アル? アルアゲニサレルアルヨ……」

「ただの妹です……多分……」


(おかしい……普通に接客しているだけなのに店内の空気が冷えてる気がするんだけど……)




「「お疲れ様でしたー」」


(ふぅ、ウチの妹と姉ヶ崎妹が終始冷戦状態のバイトもようやく終わったわけだが……)



「ふ~ん……つまり、お兄ちゃんはそのをストーカーから守るために、こうしてバイトが終わった後も家まで送り届けていると……?」


(結局、妹の奴……俺がバイト終わるまで店にいて一緒に帰るとかいうから、俺が姉ヶ崎妹を家に送り届けていることまでバレて余計に不機嫌になったんだけど……)


「あぁ……まぁ、隠していたつもりは無いんだけどな……」


(だって、ただ成り行きでそうなったわけで……それに、結局はバイトで帰りが遅くなるのは同じことだからそんな言わなくても良くね?)


「そういうわけでぇ~す! だから、これは【仕・方・な・く?】アタシが送られているだけなんですけどねぇ~キャピ!

「へ、へぇ……」 イラッ!

「そうだぞ、妹よ。別にこれは――」


「センパイは黙っててください!」

「お兄ちゃんは黙ってて!」


「あ、はい……」


(理不尽だ……てか、コイツら何でいつも仲が悪いの……?)


「ふん! 私だって、仕方なく……そう! 私だってお兄ちゃんが頼りないし不安でしょうがないから、実の【妹】として【仕・方・な・く!】私もお兄ちゃんと一緒に帰ってあげているだけなんだから!」

「おい、妹よ。ちょっと待ってくれ! その言われ方は、いくらお兄ちゃんでも、男として――」


「お兄ちゃんは黙ってて!」

「センパイは黙っててください!」


「あ、はい……」


(もはや、ここに俺の人権は無いようです……)


「そう言えば、もうすぐクリスマスになりますけど……センパイっていつまでウチのバイト先で働くんですかぁ~キャピ?

「え? ああ、そうだな……一応、目標の金額はそろそろ溜まりそうだし、今週いっぱい働いたら十分かな?」


(本来の予定ならクリスマスギリギリまで入るつもりだったけど、姉ヶ崎妹の送り迎えをする関係上、思ったよりもバイトに入る時間が増えて予想以上のペースで稼げてるんだよなぁ……)


「だとしたら、店長には早めに言った方がいいですよぉ~? クリスマスシーズンって人がいなくなるんで、早めにシフトの予定言っておかないと、クリスマスとか年末年始は勝手にシフトに組み込まれちゃいますからねぇ~」

「勝手に組み込まれるって何それ!?」

「ほら、ボイさんやチンさんいるじゃないですか? あの二人とか一部のバイトはクリスマスや年末年始に予定無いだろうって店長が勝手に判断してシフトを組んじゃうんですよ。多分、センパイも店長の『クリスマス、年末年始に予定がない人リスト』の中に含まれていると思うんで……」

「ツッコミたい所は腐るほどあるけど……でも、そのリストに俺が入れられるのは仕方ない気がするから何も言えねぇ……畜生!」

「お兄ちゃんのバイト先って、ブラックすぎるでしょ……」


(それって労働基準法とか守っているのかにゃ……?)


「だから、早めに言っておかないと朝倉センパイのデート日にシフトを勝手に入れられるということもあるかもしれないですよぉ~キャピ?

「まぁ、そうなったら……俺はバックレても朝倉さんとのデートを選ぶだけだけどな!」 キリッ!

「言っていることがイマイチカッコ悪いのがお兄ちゃんらしいよねぇ……」


(でも、そこはサクラお義姉ちゃんを選ぶだけ、まだマシだと思っていいのかにゃ?)


「因みに、センパイは朝倉センパイとのデートの予定はもう考えてあるんですかぁ~?」

「いやぁ……実は、それがバイトで忙しくてまだ――」

「クリスマスイブなら、当日は家にサクラお義姉ちゃんを呼んで盛大にクリスマスパーティーをする予定だよ? 因みに、翌日の25日はサクラお義姉ちゃんの家の方でパーティーするんだって♪」

「何それ!? 俺、全然聞いてないんだけど!?」


(妹ぉお!? いつの間にそんな予定を朝倉さんと立てていたんだよ!)


「もちろん、お兄ちゃんの妹として、私も両方の日程で参加するから!」

「やっぱり、聞いてないんだけど!?」


(ということは、俺は24日も25日も朝倉さんと二人っきりにはなれないのか……いや、別に期待してたわけじゃないんだからね!? むしろ、気を使われて下手に二人っきりにされるより、妹が一緒にいてくれた方が安心するかも……)


(はぁ、本当は気を使ってサクラお義姉ちゃんと二人っきりにしてあげるべきなんだろうけど、そんなことしたらヘタレのお兄ちゃんのことだから何もできずに終わりそうだし……ここは『妹』として仕方ないけど、サポートしてあげないとにゃ♪)


「ふーん……ブラコン」 ボソ

「は、はぁあ!? 何か言ったぁあ!?」

「なーんにもぉ~キャピ?

「ちょ、お前らケンカするなよ……」

「そもそも、姉ヶ崎さんはクリスマスの予定はあるの~? あ! もしかして、クリスマスもアルバイトだったりして……」




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その頃 何処かのバイトさん



「ぶぁーくっしょん!! うぅ……何処かのイケメンが私の噂してるのかな……?」




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「はぁあ!? そんなわけないでしょ! アタシの場合クリスマスは……お姉ちゃんがいるから、ほぼ強制的に家でクリスマスパーティーなんだよねぇ……アタシが参加しないとお姉ちゃんが泣いちゃうし……」

「そう言えば、生徒会長がお姉さんだったけ……?」

「ああ、あの姉ちゃんか……」


(確かに、会長は姉ヶ崎妹がクリスマスに誰かと過ごすとか言ったら、発狂しそうだもんな……)


「にゃくちぃ!」

「おいおい、妹よ。くしゃみなんかして大丈夫か? もう冬だって言うのにマフラーくらいして来た方が良かったんじゃねぇの……?」

「うぅ~、だってお兄ちゃんのバイトがこんな遅くなるのが悪いんだもん……」

「しゃねぇな……。じゃあ、そこら辺の自販機でコーヒーでも買ってやろうか?」

「わーい! じゃあ、私スタバがいい~♪」

「自販機のコーヒーって言ってるんだよなぁ……」

「むぅ~……」


(ちょっと、二人で兄妹だけの世界を作らないでくれますかねぇ~? アタシもいるんですけどぉ~? むむむ、これは……)


「へくちぃキャピ! センパ~イ、何だがアタシも冷えて来ちゃったんですけどぉ~?」

「ちょっと、姉ヶ崎さん! ウチのお兄ちゃんにたからないでくれる!? しかも、姉ヶ崎さんはマフラーもちゃんとしてるよね!?」

「アタシだって寒いんですぅ~! それに、アタシの場合スカートの丈が短いから足元が冷えるんですよねぇ~キャピ!」 チラリ ←スカートを少しまくる音

「おい、姉ヶ崎妹。そこの所を詳し――」

「お兄ちゃんは見ちゃダメ!」 グサ!

「あぎゃぁああああ! 目が、目がぁあああああああ!」

「大体、姉ヶ崎さんのあのくしゃみは何? くしゃみでキャピ!とかあざといだけど!」

「はぁああ!? それを言うなら安藤さんのくしゃみだってあざといんですけどぉ~?」

「うう、目がぁ……」


(もう、何でこいつらすぐにケンカするの? とりあえず、ここは二人にコーヒーでも買ってカフェインで落ち着かせよう……)


「分かった! 二人ともコーヒー買ってやるから、この話はもうやめよう! 二人ともあざとくないし、可愛い! それでいいだろ? ハイ、やめやめ! な?」

「むぅ~、お兄ちゃんがそう言うなら仕方ないにゃ……」

「まぁ、センパイがそう言うなら仕方ないですねぇ~キャピ!


((可愛いって……もう、仕方ないなぁ~♪))


「そうと決まったら、お兄ちゃん! 早く、暖かい飲み物買いに行こう♪」

「おい、妹。右腕に抱き着かれてると歩きづらいんだけど……?」

「えっと……だって、寒いから仕方ないよね♪」


(それに、兄に抱き着くのは妹の特権だにゃ♪)


「そうですよ! センパイ、アタシも寒いんで早く飲み物買いに行きましょうキャピ!

「えっと……姉ヶ崎妹? 何で、お前も左腕に抱き着くのかな?」

「だってぇ~、寒いから仕方ないじゃないですかぁ~キャピ?


(それに、先輩に抱き着くのは後輩の特権ですからねぇ~キャピ!


「ちょっと、何で姉ヶ崎さんまで、お兄ちゃんに抱き着いているの!?」

「後輩の権利ですぅ~! てか、安藤さんだって抱き着いてるしぃ~?」

「分かったから、お前らもうケンカするなよ!」


(てか、これだと俺の両腕が妹で埋まって動きづらいことこの上ないんだけど……まぁ、温かいからいいか)






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪

 今回の『何故かの』はどうだったかしら? え、わたしの出番が足りない? クフフ……そうよね! 皆もそう思うわよね? でも、大丈夫よ! きっと、書籍版『何故かの』4巻が出たら、このわたしがばばーん!と表紙を飾って内容もほぼ8割くらいはわたしがメインの話になると思うのよ。だから、皆は『何故かの』4巻が出るまで、わたしの活躍を楽しみにしてくれるかしら?


 ああ、そう言えば今日は一つお知らせがあったんだわ。実は『何故かの』の作者の出井愛先生がYouTubeの動画にゲストとして出演したらしいわよ?

 動画はライトノベルの紹介やレビューをしている「やまさきりゅう」さんのチャンネルよ。メインのチャンネルでは、やさきさんとの対談動画、そして後日サブチャンネルで別の動画も上がる予定よ。


出井愛先生のサイン入り『何故かの』1巻が当たるTwitterのRTキャンペーンもやる予定だから詳しくは「やまさきりゅう」さんのTwitterをチェックしてね♪」


【やまさきさんのYouTube動画】

https://youtu.be/8yjWUwBHuVg


【やまさきりゅうさんのTwitter】←こちらでサイン本のプレゼント企画やってます

https://twitter.com/@tomoya98822306




「さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「クレーム」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



























【グー】


「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」

 

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