第325話「妹皿屋敷」


 ガチャ……


「ただいまぁー」

「お兄ちゃんおかえりー」

「なぁ、妹よ……。何でお前はもう冬になるのにパーカーを着ながらソファーに寝っ転がってアイスを食べているの……?」


(アイスって夏に食う物だよ……?)


「お兄ちゃんは分かってないにゃ……冬だからこそあったかいお部屋で食べるアイスが最高なんだよ♪」

「堕落の極みなんだよなぁ……」


(あれ? てか、妹が着ているパーカー見たことない奴だな?)


「お前、そのパーカー……そんなの持ってたっけ?」

「にゃ? お兄ちゃんにしては良いところに気が付くじゃ~ん♪ えへへ、実はお母さんがちょっと早いクリスマスプレゼントで買ってくれたんだぁ~♪

 最近はやりの『オオカワウソパーカー』だよ! どう、似合うかにゃ?」

「いや、まぁ……似合うんじゃねぇの……『可愛い』と思うぞ?」


(ぶっちゃけその『オオカワウソパーカー』は良く分からねぇけど……いや、むしろキモ――でも、ウチの妹が着ればどんなイロモノパーカーも可愛くなっちまうから適当に可愛いとか言っておけば大丈夫だろう……)


「えへへ、そうかぁにゃ~♪ まぁ、お兄ちゃんが『可愛い』って言うからしばらくはこのパーカーを着ていてあげようかにゃ♪」


(だって、私はお兄ちゃんの『妹』だからね♪ 可愛い妹が兄のために可愛くいることは妹の『義務』だから仕方ないにゃね♪)


「あぁー、はいはい。可愛い可愛い……」


(どうだ! 最近は朝倉さんと付き合っている経験や、姉ヶ崎妹と話すことが多いおかげで、とりあえず困ったら『可愛い』と言っておけば大抵のことは何とかなるって、俺も学習したんだぜ!)


「でも、母さんがクリスマスプレゼントをくれるにしても少し早すぎないか? あと、兄ちゃんは新しい本棚を希望だって伝えてくれ」

「お母さん、今年のクリスマスはゴミ――じゃなくて、お父さんが『沖縄旅行に行かないか?』って、誘って来たから一緒に行くんだって~、ものすごい面倒くさそうなフリしてたけど、内心はウキウキで言ってたよ♪

 因みに、お兄ちゃんにお母さんからの伝言で『高校生にもなって男がプレゼントなんてねだるんじゃないわよ』だって~」

「返答を未来予知しているだと!?」


(てか、妹よ? お前さりげなく親父のことを『ゴミ』って言おうとしなかった……? 一応はアレでも俺達と血のつながった家族だからね……?)


「しかし、あのクソ親父が母さんに旅行のクリスマスプレゼントねぇ……」


(プレゼントが沖縄旅行とか、流石は腐っても社会人だな。俺には到底真似できな――)


「いやいや、お兄ちゃん。なんか勘違いしているみたいだけど、お父さんは『沖縄旅行に行かないか?』って誘っただけで、旅行のお金を出すのはお母さんだからね?

 つまり、お母さんがお父さんに沖縄旅行をクリスマスプレゼントするんだよ……」


「男がプレゼントなんてねだるんじゃねぇよ!?」

「お兄ちゃん、それものすごいブーメランだからね……」


(お兄ちゃん……そういうところやぞ)


(しかも、母さんの奴『高校生にもなって男がプレゼントなんてねだるんじゃないわよ』とか未来予知の伝言を残して来やがったけど、同じ『高校生』の『妹』に、同じ『男』の『親父』がプレゼントをもらえて『息子』の俺だけがプレゼント無しってなんか納得いかねぇんだけど! まさか、親父の沖縄旅行のせいでプレゼントの予算が無かったってオチじゃねぇよな!)


「なんか、納得いかねぇ……」

「まぁ、お兄ちゃんにはその分、サクラお義姉ちゃんがいるんだからいいんじゃないの? それに、サクラお義姉ちゃんにクリスマスプレゼントをするためにアルバイトも始めたんだしねぇ~?」 ニヤニヤ

「なっ! 妹、お前……気づいてたの?」

「そりゃねぇ~♪ だって、そうでもなきゃあのお兄ちゃんが『働こう』なんて思うわけないじゃん?」

「うん、ちょっと待とうか。その言い方だとお兄ちゃんただの『ダメなニート』みたいに聞こえるから言葉には気を付けようね?」


(どうりで、最近は俺がバイトで帰りが遅くなっても文句言わずに家の家事当番を代わってくれるわけだ……)


「まぁまぁ、お兄ちゃん。今日はバイトで疲れたでしょ? だから、今日はなんと! 可愛い妹の私が! 仕方なくだけど……本当に仕方なく、面倒だけど! 妹だから! そう『妹』だから! 仕方なくだけど……お兄ちゃんのごはんを作っておいてあげたよ♪」

「おう、ありがとうな」

「えへへ♪ まぁ、これくらいは『妹』だからねぇ~? じゃあ、ごはんの準備してくるから、お兄ちゃんはここで待ってて!」

「じゃあ、お兄ちゃんは疲れたからこのリビングで待たせてもらうわ」


(まぁ、中々に押し付けがましいのがたまに傷だけどな……)


「えーと、良い感じの大きさのお皿はどこかにゃ~?」 パリーン!

「…………」

「あっれぇ~? お兄ちゃん用のお皿ってこっちの棚だったかにゃ~?」 パリーン!

「……妹ぉ~? お皿だけでもお兄ちゃんが用意しようかー?」

「もう、お兄ちゃんはバイトで疲れているんだからそこで待ってて! ご飯は温めるだけだから、あとはお皿を出せばすぐに食べられるから!」 パパパ、パリーン!

「お、おう……わかった……」


(でも、このまま妹に任せていると後で家の皿を数えた時に……

『一枚どころじゃなく、お皿が足りな~い……』

 とかになりそうなんだよなぁ……)


「でも、お兄ちゃんが接客関係のバイトを始めたって聞いた時は、正直一週間くらいでお客さんに暴言でも吐いてクビになるんじゃないかと思ったけど、意外と長続きしそうで妹の私も安心したよ……」

「心配の仕方が、妹じゃなくて母親のそれなんだよなぁ……。

 まぁ、確かに俺一人だと接客のバイトなんて全然できなかったと思うけど、幸いなことに姉ヶ崎妹が同じバイトだったから、そこは助かったよ」


「は……? お兄ちゃん、ちょっと待って! 私……それ聞いてないんだけど?」 パリーン!





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「両手に妹」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



























【グー】


「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」

 

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