第322話「お客様は愛人です」



「へぇー、それで今後は安藤くんが姉ヶ崎さんを送り届けることになったんだねー?」

「モモ、そうなのよ。幸いなことに安藤くんと姉ヶ崎さんのバイトの日程は同じだから、帰りは安藤くんが姉ヶ崎さんを自宅まで送った方が良いだろう? って、ことになったのよね……」


(私としては、ちょっと不満はあるのだけど……でも、あんなナンパがあったからにはワガママを言っている場合じゃないものね)


「でも、ただでさえ同じバイト先で不安なのに、彼氏が後輩の女の子と定期的に二人で帰るなんて……彼女の朝倉さんからしたら不安じゃないのかしら?」

「委員長、そうなのよ! でも、安藤くんは……」


『バイトの後は夜も遅いし、朝倉さんにまで付き合わせるわけにはいかないよ。それに、何かあった時に朝倉さんと姉ヶ崎妹の二人とも俺が守れるとは限らないからね?』


「――って、言うから、私がバイト先に通って一緒に帰るのは反対なのよね」

「まぁ、それは確かにね……」


(だって、彼氏のバイト先に押しかけて一緒に帰ろうとする彼女って……結構、重くないかしら?)


「アハハ~♪ まったく、サクラは心配性だよねー? アタシはあの安藤くんのことだから浮気の心配とかは無いと思うけどねー?」

「わ、私だってそれくらい分かっているわよ! で、でも……」


「「でも……?」」


「安藤くんのことだから、無自覚で姉ヶ崎さんといい雰囲気になったりしてないか心配なのよね……」

「「あぁ~……」」


((それは確かに、心配かもしれない……))


「そもそも、安藤くんってバイトとかちゃんとできるのかしら? 朝倉さんが様子を見に行った時はレジで接客をしていたって言うけど……」


(わたしからしたら、あの男が笑顔で接客してる場面なんか全然想像できないのだけど?

 まだ、お客さんに笑顔で『ハウス』って言っている方が余裕で想像できるわね……)


「アハハ、そうだねー♪ 確かに、あの安藤くんがモックでバイトを始めたって聞いた時も驚いたけど、それがレジで接客だもんねー? あたし、最初はキッチンの方なのかと思っちゃったよー」

「もう、二人ともひどいわ! 安藤くんだって、やろうと思えばちゃんとできるのよ? 実際に、私が見に行った時もそれは素晴らしい笑顔で――」


回想の安藤くん『いらっしゃいませー』 ←棒読み


「……それは素晴らしい接客だったわね!」

「「へぇ……」」


(朝倉さん、わざわざ『笑顔』の部分を修正したわね……)


(うーん、これは安藤くんの『笑顔』は期待できそうにないねー?)


「それにしても、安藤くんはまだ教室に戻ってこないのかしら?」

「もう直ぐHR始まっちゃうけど、何処に行ったのかなー?」

「そう言えば遅いわね? 確か、HRが始まる前に『ちょっと、トイレ!』って出ていったきりだけど……」


 ガラガラ~♪ ←教室のドアが開く音


「よし、セーフ……。HRはまだかな?」

「あ! 安藤くんてば、やっと戻ってきたわね! もう、遅かったじゃない?」

「朝倉さん、ゴメン。ちょっと、トイレに行ったら石田とバッタリ会ってさ、少しトイレットペーパーの最適な紙の厚さについて語りすぎちゃったよ」

「もう、何よそれ?」


「ねぇ、委員長。少しいいかなー?」 ヒソヒソ

「……?」


(桃井さんのこの感じは……二人に聞かれたくない話かしら? 少し、朝倉さん達から離れて会話した方がよさそうね)


「桃井さん、何かしら?」

「少し、相談なんだけどさ……安藤くんのバイト先、興味ないかなー?」

「それは……無いと言えば嘘になるわね?」


(クフフ……そう言うことね♪)





 テロリ~♪ テロリ~♪ テロリ~♪ ← ポテトが上がった音


「おはようございます……」

「おはようございまーすキャピ!

「オウ! アネガサキさん、アンドウさん! オハヨウよ!」

「二人トモ、オハヨウネ! マルアゲネ!」

「…………」


(ボイさんもチンさんも、俺達が来るといつもいるし、俺達がバイト上がる時もまだ働いてるけど、一体どれだけ長時間シフト入っているんだろう……?)


「じゃあ、センパイ。アタシちょっと、カウンターの補充系やってくるので、それまでの間レジを見ててもらってもいいですか~?」

「ほいよ。任せな……」


(まぁ、この時間帯はそんなに混む時間でもないし、一人でも大丈夫だろ)


「アンドウさん、浮気ハ大丈夫カ? 怒られてナイか?」

「いや、ボイさん……浮気ってなんのことですか? 俺、浮気なんかしてないですからね?」

「アンドウ! 浮気シナイネ! 全部本気ネ! 海ニシズメルヨ!」

「そうそう……チンさんの言う通り、俺は浮気はしてな――ちょっと、まて! なんて言った……?」

「カノジョ(アネガサキさん)を悲しませる……ダメよ?」

「ボイさん、大丈夫ですよ! 俺は自分の彼女(朝倉さん)は悲しませんから!」

「アンドウ! 全部本気! マルアゲヨ!」

「チンさんのこれは日本語が変なだけで他意は無いんですよね……?」


(なんか、チンさんの発言に軽い殺意が練りこまれている気がするんだけど……)


 メロン~♪ メロン~♪ ← お店のドアが開いた音


(お! 客が来たみたいだな。ちゃんと、仕事しないとな……)


「いらっしゃいま――せ……?」


「ヤッホー! 安藤くん、来ちゃったよー♪」

「さぁ、神様お客様の登場よ? クフフ……♪」


「ゲッ……」


(何で、桃井さんと委員長がここに…………)



「アンドウさん、マタ別ノ女よ……」

「アンドウ、プレイボーイ、マルアゲヨネ……」





【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「愛人バリューセット」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



























【グー】


「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」

 

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