第317話「ライフライン」


「安藤くん、この英文の問題は和訳できるかしら?」

「うーん……ギブアップ!」

「安藤くん? そんな調子じゃ次のテスト乗り越えられないわよ?」


(生徒会もお休み中だから、この機会に次の中間テストに向けて私の家で安藤くんの勉強を見てあげようと思ったのに……安藤くんてばアルバイトを始めちゃうんだもの!

 おかげで、中々イチャイチャ――げふん! もとい勉強を見てあげられないわ)


「もう、安藤くん。本当に私と同じ大学を目指す気があるの?」

「朝倉さん、もちろんだよ!」

「じゃあ、これくらいの問題は解けるようになりましょうね? ウフフ~♪」

「さいですね……」


(一応、来年の大学受験に向けてこうして朝倉さんの家で勉強を定期的に見てもらっているけど……やっぱり、元々の俺の学力が低いのか、朝倉さんの目指す大学のレベルが高いのか? または、その両方の所為か全然分からないなぁ……。

 まぁ、それでも何とか勉強を続けられるのは、朝倉さんの教え方が俺に合っているおかげなんだろうけど)


「仕方ないわね。なら、安藤くん。ここでライフラインの……『スキル』を発動してもいいわよ?」

「待ってました! 朝倉さん、今度はどんなスキルを俺に与えてくれるの!?」

「そうね……。じゃあ『大賢者』『鑑定』『アイテムボックス』この三つのスキルでどうかしら?」

「どれも、最高のチートスキルじゃないか!」

「因みに、スキルの使用は一問につき一個だけの使いきりだからね?」

「もちろん! じゃあ……ライフライン『アイテムボックス』のスキルを発動します!」

「アイテムボックスね。なら、安藤くんはアイテムボックスからこの『英和辞典』を取り出したわ! さあ、安藤くん。これを使ってその英文を和訳してくれるかしら?」

「このチートアイテム(英和辞典)さえあれば楽勝さ!」


(ぶっちゃけ、こんなのただ分からない問題の答えを辞典で調べているだけなんだけど……でも、不思議なことにこういう茶番を挟むと何故か調べた答えをちゃんと覚えているんだよなぁ……)


「分かった! この英文は『最愛の彼女はとてもスタイルが良くて美人です』だね?」

「安藤くん、正解よ♪」


(もう、安藤くんてば……『朝倉さんってとてもスタイルが良くて美人だね』なんて言われなくても分かっているわよ。ウフフ♪) ← 勝手に脳内変換する彼女


「じゃあ、次の英文はどうかしら?」



問題【Who is chopping a polar bear?】(皆も一緒に考えてみよう!)



「……スキルを発動します!」

「安藤くん、もう少し考えてもいいんじゃないかしら?」

「いや、大体の内容は分かるんだけど……ちょっと、分からない単語があってね? だから、その単語にだけ『鑑定』のスキルを使わせてください!」

「もう、仕方ないわね……。じゃあ、その分からない単語を教えてくれるかしら?」

「うん、この二つの単語なんだけど……」

「この二つはこの前の授業で習った単語ね。はい、安藤くん。鑑定で分からない単語の意味を表示したわ。これで和訳できるわよね?」



問題【Who is chopping切り刻む a polar bearホッキョクグマ?】



(よし、朝倉さんが分からない単語の意味を書いて鑑定してくれたからこれで読めるぞ!)


「分かった! この英文は『シロクマをみじん切りしているのは誰ですか?』だね?」

「安藤くん、正解よ♪」


(もう、安藤くんてば……『シロクマをみじん切りするくらい大好きだよ!』なんて言われなくても分かっているわよ。ウフフ♪) ← 勝手に脳内変換する彼女




「ふぅ、これでテスト範囲は軽く復習できたわね♪ 因みに、安藤くん明日も家に来れるのかしら?」

「あー、明日はバイトが入っているから来れないや……朝倉さん、ゴメンね?」

「アルバイトなら、仕方ないわよね。でも、安藤くん。どうして急にアルバイトなんか始めたの……?」

「え! そ、それは――」


(それは朝倉さんへの誕生日プレゼントを買うためだけど……こういうのってサプライズで秘密にしておいた方がいいんだよな? だとしたら、何か別の言い訳を……)


「じ、実は今年の『コミケ』に行こうとかと思ってさ!」

「え、コミケ?」

「う、うん! えーと、ほら! 最近、ついに書籍化された『何故カノ』のイラストレーターの東沢500㍉先生がコミケで新刊を出すから、それが欲しくて資金集めにバイトを始めた……みたいな?」


(くっ! この言い訳は流石に……苦しいか?)


「な」

「な……?」

「何それ! 安藤くん、どうしてもっと早く言ってっくれなかったのよ!」

「……え?」

「東沢先生って言ったら、私の大好きなイラストレーターさんじゃない! それに、実はコミケってラノベの内容にも良く出てくるからどんなところか興味があったのよね♪

 安藤くん! どうせ行くなら、今年のコミケ一緒に行きましょう!」

「……う、うん……そうだね!」


(しまったぁあああああああああああああ! コミケに行く約束までしてしまったあああああああああああああ!

 これ、自分から『行く』って言った手前『実は行く予定なんか無い』なんて言えないし,コミケに行くとなるとさらに予算が……バイトもっと増やそう)


「でも、安藤くん。アルバイト見つけるの意外と早かったわね? この前、アルバイト始めるって聞いたばかりなのに、もう働いちゃってるんだもの」

「それは、まぁ……姉ヶ崎妹のおかげかな? 今のバイト先は姉ヶ崎妹が紹介してくれたんだよね」

「そうだったのね! 確か、駅前の『モック』でアルバイトしているのよね?」

「うん、姉ヶ崎妹も一緒に働いているんだけど、なんか変な客ばっかり来るんだよね~」

「へぇ…………」


(『姉ヶ崎さんと』ねぇ……)


「じゃあ、今度は変なお客さんが来ないといいわね? ウフフ♪」






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとうね。委員長よ♪ 

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「ガールフレンド(笑)」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわね。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ? 

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



 グーかな?



    また、グーかも?



やっぱり、グーじゃない?




         きっと、グーだったりして……

















 もしかしたら、今日も『グー』を出すかもしれないわよ……?


















【チョキ】


「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪」


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