第263話「鉄壁エプロン」
「ただいまー」
「お兄ちゃん、おかえりー」
(お兄ちゃんが帰って来たというのに、妹の奴は相変わらず気の抜けた返事だな……)
「ぶなぁ~」
「おう、ノベ。お兄ちゃんが帰ったぞ」
(そう言えば、最近は妹の他にも新しい家族が増えたんだよな。まぁ、ただの捨て猫だけど、それでも帰りを出迎えてくれる存在っていうのは癒されるものだよな。
しかし、この猫の鳴き声も相変わらずやる気ないよなぁ……)
「安藤くん、お帰りなさい♪」
「うん、朝倉さん。ただいま」
(まったく、俺の帰りをちゃんと出迎えてくれる存在はもはやこの家だと、朝倉さんくらいだよ。妹の奴もノベも朝倉さんを見習って――)
「――って、朝倉さん!?」
「ウフフ、安藤くん。ごはんにする? お風呂にする?
それとも……ラ・ノ・ベ♪」
(そりゃ、もちろん朝倉さん一択に――って、ちがぁあああああああう!)
「いやいやいや! 何で、朝倉さんが家にいるの!?」
(しかも、まさかの制服エプロン姿……だと!?)
「えっと、それは……安藤くんは聞いていないの?」
「え、今日……家に来るとか言ってたっけ?」
(朝倉さんの家なら俺が行くことはしょっちゅうあるけど、朝倉さんが俺の家に来るときは部屋の禁書目録(美少女なラノベ)を片付ける都合もあるから事前に連絡をもらうはずだけど――)
「お兄ちゃん、サクラお義姉ちゃんなら、私が呼んだんだよ♪」
「え、妹……お前が? でも、何で朝倉さんを?」
「もう、お兄ちゃんが生徒会サボってどこかに行っちゃうから悪いんだよ?
サクラお義姉ちゃんが暇そうだったから、私が『ノベでも見に来ませんか?』って誘ってあげたんだよ」
(なんだそうだったのか……。俺はてっきり、朝倉さんが自分と俺の家の区別がつかなくなって脳内同棲でも始めてしまったのかと思ったぜ……)
(なんていうのは嘘で……実は、サクラお義姉ちゃんに頼まれて、お兄ちゃんの好きな料理とか味付けを教えてたんだよね~♪ も~う、サクラお義姉ちゃんってば……
『安藤くんと一緒に暮らす時のために、安藤くんより料理が上手になりたいの!』
――って、健気なんですから♪)
(はっ! 妹ちゃんてば、私に気を使って料理を教えてくれていることは内緒にしてくれたのね! 確かに……安藤くんの方が地味に料理上手だからって、隠れて妹ちゃんに料理を習っているって正直に言うのも少し恥ずかしいものね……)
「だから、朝倉さんがウチにいるのか……。
って、妹よ! 別に、俺はサボってたわけじゃないぞ!? ちゃんと、姉ヶ崎の手伝いで生徒会室を離れていただけでだな……」
(だから、別にやましい気持ちなんてこれっぽちも――)
「ふぅ~ん……ほへぇ~? そうですか~?」
「な、なんだよ……。その反応は……?」
「別に~? ただ……お兄ちゃんって、なんだか姉ヶ崎さんに甘すぎるじゃない……?」
「……はぁ? お前、何言っているの? 別に、それほど――」
「そうね。確かに、安藤くんは少し……姉ヶ崎さんに甘いんじゃないかと私も思うわ!」
「朝倉さん!?」
(まさかの彼女が後ろから刺して来ただとぉお!? 朝倉さん、いつからヤンデレ属性を手に入れていたのさ!)
「あ、朝倉さん。違うだ……こ、これは――」
「な~んてね。冗談よ♪」
「――へ?」
「最近、安藤くんが姉ヶ崎さんについてあげているのは前会長の姉ヶ崎先輩に頼まれているからなんでしょう?」
「なんだ……。朝倉さん、知っていたの?」
「ええ♪ だって、安藤くんがあんなにも強引な手で姉ヶ崎さんに実行委員を任せるなんてありえないもの。十中八九、裏があるのは確かだし、安藤くんがサポートをしているのを見てみれば大体の理由は察しがつくわ。
多分、石田くん達も気づいていると思うわよ? だって、そうじゃなければ石田くんが安藤くんに押し付けられた仕事を文句を言いつつも引き受けたりしないでしょう?」
「うわぁ……。石田にもバレてるとか少し、恥ずかしいなぁ……」
(でも、だから最近は怒りつつも仕事を引き受けてくれるのか……? よし、この際だから明日からはもっと押し付けるか)
「あの~、サクラお義姉ちゃん。お兄ちゃんが前会長に姉ヶ崎さんのことを頼まれているって、どういうことですか……?」
「えっとね……ほら、今の生徒会って一年生が姉ヶ崎さんしかいないでしょう? だから、安藤くんは私達が生徒会を引退した後も、姉ヶ崎さんが生徒会を引き継げるようにお姉さんの姉ヶ崎先輩から面倒を見るように頼まれているのよ」
「そういうわけだ……って、ことで妹よ。お前も同じ一年で姉ヶ崎とは仲が良いみたいだし、何かあったら助けてやってくれよ」
「は、はぁあ!? お兄ちゃんってば、何言っているの!?」
(別に、私と姉ヶ崎さんはそんな仲が良いわけじゃないし……)
「お、おう……俺何か変なこと言った? まぁ、別に今でも体育祭の時とか生徒会を手伝ってくれただろ? あれの延長だと思えばいいんだよ。それか、もういっそのことお前も来年は生徒会に入れば?」
「お兄ちゃんに、生徒会に入ればって簡単に言うけど……まぁ、いいよ。お兄ちゃんのお願いだし『仕方なく』だけど、ホント……妹! だから『仕方なく』だけど……何かあれば助けてあげればいいんでしょう?」
「ああ、頼む……悪いな。面倒なお願いで」
「別に、お兄ちゃんが『面倒』なのは昔から変わらないことだし気にしてないよ」
「おい、妹? そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、それだと単純に俺が『面倒な奴』ってニュアンスに聞こえるのは気のせいかな?」
「さーて、どうかにゃ~?」
(それに……姉ヶ崎さんを手伝うのは気が進まないけど、私がお兄ちゃんの後を継いで、生徒会長になってみるのは少し面白そうだよね♪
にゃふふ……それなら、姉ヶ崎さんを会計とかなら、私の生徒会に入れてあげてもいいかにゃ? なんてね♪)
「あれ? でも……朝倉さんは何でエプロンしているの?」
「ふぇ!? あ、安藤くん! それは……」
「もう、お兄ちゃんは鈍いな……。エプロンって言ったら料理に決まっているじゃん!」
「い、妹ちゃん!?」
「サクラお義姉ちゃんが、ノベを見せれたお礼に夕食の準備を手伝ってくれたんだよ。そうですよね~? サクラお義姉ちゃん♪」
(えへへ、お料理のことは二人の秘密ですよね♪)
(い、妹ちゃん……!)
「安藤くん、実はそうなのよ! 因みに、今日のご飯はロールキャベツよ!」
「ロールキャベツ! 朝倉さんの手料理が食べられるなんて、すごい楽しみだよ!
……てか、妹よ。お前は朝倉さんにだけ手伝わせて、ノベと遊んでるんじゃないだろうな……?」
「むぅー! お兄ちゃん、酷いな! 私だってちゃんとサクラお義姉ちゃんと夕食の準備したんだからね? 今はもうほとんど準備もできたから、休憩中なの!」
(まぁ、私はサクラお義姉ちゃんに教えるだけだから、作ったのはほとんどサクラお義姉ちゃんなんだけどね……テヘ♪)
「それより、サクラお義姉ちゃん! 料理はもうできるのを待つだけですし、こっちで一緒にノベと遊びませんかにゃ?」
「ぶみゃ~……」
「そうね。じゃあ、妹ちゃんのお誘いにのらせてもらおうかしら? ほら、安藤くんも一緒に遊びましょう♪」
「いや、まぁ……俺はいつでもノベと遊べるんだけど――ぉ!?」
(こ、これは……!? 妹と朝倉さんが寝っ転がっているノベを触ろうとして制服姿のまましゃがむからスカートの中が見え――って、畜生! 妹は見えるけど、朝倉さんのは制服の上からかけられたエプロンが邪魔で見えない……だと!?)
「ほら、ノベ~? ほらほら♪」
「ぐみゃ~」
「ウフフ、ノベちゃ~ん♪」
「ぐんみゃ~」
「…………」 じぃーー
(ぐぬぬ……み、見えそうで見えない! しかし、その状況が逆にイイ……)
「むぅ~、お兄ちゃんてば……ノベを見るフリして私達のパンツ見てるでしょー?」
「ふぇ……って、ほにょ!? あ、安藤くん!」
「……む、それに気づくとは、流石は妹だな。しかし、朝倉さんのはエプロンが邪魔で見えてない。見えているのは妹のだけだから安心していいぞ」
「あ、安藤くん!?」
「はぁ……もう、お兄ちゃんは本当に仕方ないなぁ……。まぁ、お兄ちゃんならパンツくらい見られても平気だけどね」
「い、妹ちゃん!?」
「いやいや、妹のパンツとか別に興味ないから……俺が興味あるパンツは朝倉さんのパンツだけだ!」 キリッ!
「あ、安藤にゅん!?
――って、二人とも何かおかしいわよ!?」
(普通、兄妹でもパンツは見られたら隠すわよね!?)
「「……え?」」
(でも、兄妹で暮らしていると普通に洗濯物で妹の下着とか干してる光景とか見ることあるしなぁ……)
(でも、兄妹で暮らしているとお兄ちゃんとかお風呂上りに平気でパンツ一枚だったりするしなぁ……)
「「……いやいや、兄妹ならパンツ見られるくらい普通、普通~♪」」
「絶対におかしいわよぉおおおおおおおおおおお!」
(お、朝倉さんが立ち上がったおかげでパンツが見えた……やったぜ!)
【次回予告】
「ここの兄妹って、明らかに何かがおかしいわよね……。
皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
皆は【ラノベニュースオンラインアワード】って覚えているかしら?
そう、毎月発売されるライトノベルを対象にした読者投票のアンケートよ。
以前『何故かの』でも紹介したと思ったけど、昨日ついに11月刊のアンケート結果が発表されたわ!
その結果なんと……
【何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?】
2018年11月刊【総合部門】【新作総合部門】【新作部門】
――の三冠を達成したわ!
結果は下のURLからも見れるわよ。
『ラノベニュースオンラインアワード2018年11月刊の投票アンケート結果発表』
http://ln-news.com/archives/86247/post-86247/
本山らのチャンネル 『読者が選んだ11月刊おすすめラノベ! ラノオンアワード結果発表 』
https://www.youtube.com/watch?v=bpV45hrlnWA
第256話でも、話題にしてた人気バーチャルYouTuber、本山らのちゃんのチャンネルでも紹介されているから気になる人は見てみてね?
今回のこの結果も『何故かの』を応援してくれた皆のおかげよ。本当にありがとうね。そして、これからも『何故かの』と委員長のわたしを応援してくれると嬉しいわ♪
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「なろコン」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
チョキかな?
チョキかも?
チョキじゃない?
チョキだったりして……
そう言えば……サ〇エさんって、新年最初のじゃんけんはかならず【チョキ】を出すらしいわよ?
【ちょきー】
「クフフ……皆のコメント、評価、待ってるわね♪
あと、今回はラノベニュースオンラインアワード三冠を達成した記念と感謝の気持ちを込めて、おまけssがあるわよ♪」
おまけss「初夢」
「朝倉さん……あさ――……さん、――さん……」
「むにゃむにゃ……あ、安藤くん?」
(安藤くんの声……。私ったらせっかく安藤くんが家に来てくれたのにコタツで寝ちゃったのね……。早く起きないと――)
「あ、起きた? 皆―、お母さんがやっと起きたぞー?」
「ほへぇ……? 安藤くんってば『お母さん』って何を言って――」
(あれ? というか、安藤くんなんだがやけに大人っぽくなっていないかしら……?)
「ママだ―っ! ママったらお寝坊さんなのー?」
「もう! ママってばお正月だからって寝すぎじゃないの?」
「ほへぇ? ま、ママ……?」
(え! この女の子達は誰なの!? てか……よく見たらこの部屋、私の家じゃない?)
「安藤くん、ここはどこ……? 私は誰かしら?」
「あはは、お母さんてばそれいつのネタ? 二人とも、どうやらお母さんはまだ寝ぼけているみたいだから、お母さんに何か目の覚める温かい飲み物でも持ってきてくれるかな?」
「ラジャなのー!」
「パパ、それなら私に任せて! あ、ちょっとこらー! アンタはまだ小学生だから、一人で勝手に走らないのー!」
バタン! ← 子供達がドアから出ていく音
「これって、もしかして……」
(ま、まさか、これは未来の私と安藤くん!? だ、だとしたら、あの小学生くらいと、中学生くらいの二人の女の子は、わわわ、私と安藤くんの……それって、つまり私と安藤くんが――って、キャァアアアアアアアアアアア~~♪)
「あ、安藤くん……」
「ハハ『安藤くん』って、その呼び方懐かしいね。でも、今はそうじゃないよね?
お・母・さ・ん?」
「え、えっと……そうね。
ダーリン♪」
「うん、正解♪」
(ハッ! もし、これが本当に未来の成長した私と安藤くんだというのなら、私の胸もいくらかは成長して――) チラッ
「…………」 スカーン……
ガチャ!
「ママ~、あたたちゃい飲み物もってきたのー!」 ボイーン! ← C
「ほら、ママがいつも作ってくれる特性豆乳ホットドリンクよ! べ、別に、これはついでだけど……パパも分も作ってあげたんだから感謝してよね!」 バイーン! ← D
「お、サンキューな娘たちよ」
「あわわわ……」
(って、何で私だけ成長していないのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)
「朝倉さん……あさ――……さん、――さん……」
「むにゃむにゃ……あ、安藤くん……?」
(い、今のは――もしかして、全部……夢?)
「安藤くん、ごめんなさい。私ったらつい夢を見ちゃっていたみたいね」
「アハハ、だとしたら初夢だね。どんな夢だったの?」
「そうね……。十年ちょっと分の幸せと絶望を一気に味わったような夢だったわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます