第262話「五人目の名」


「センパ~イ、今日もミスコンの参加者集め手伝ってくれますよねキャピ!

「姉ヶ崎よ……。俺は今日もお前を手伝うとは一言も言ってないのに、何で誘い方が手伝う前提になっているのかな……?」

「だって、センパイって生徒会でやることなくて暇じゃないですかぁ~キャピ?

「俺、これでも生徒会長なんだけど!?」


(まったく、失礼だな! 生徒会長ってのはいつもなんかめんどくさい仕事が日々たまっていて忙し――)


「じゃあ~? そんな、忙しいセンパイが生徒会室から抜け出して、何処で何をするつもりだったか教えてください♪」

「……た、ただのトイレ休憩ダヨ……」


(ほ、本当ダヨ……? ただ、トイレに行ってから生徒会室に戻るのが二時間くらい遅れるだけのトイレ休憩ダヨ?)


「安藤のバカは何処だぁあああああああああああああ!」 ← 生徒会室から響く石田くんの叫び声


「…………」

「…………」


(ヤッベ……俺の分の仕事をこっそりと石田の仕事分に混ぜたのがバレたかな……)


「今、石田センパイの声がしましたねキャピ♪

「ウン、ソダネ……」

「石田センパイが呼んでいるみたいですけど、戻らなくていいんですかキャピ?

「別に……いいんじゃないかな?」

「じゃあ、アタシが石田センパイを呼んで――」

「あ! あぁー! なんか、急に後輩の仕事を手伝いたくなってきたなぁ~? どうしようかなぁ~? 何処かに、仕事を手伝ってほしそうにしている後輩はいないかなぁ~? いたら今なら喜んでお仕事のお手伝いしちゃうんだけどなぁ……?」 チラッ

「えぇ~、どうしましょうかねぇ~? アタシもそんなにどうしても人手が欲しいわけじゃないんですけどぉ~?」

「あ、そう? じゃあ、俺はこのままトイレに行くから――」

「石田センパ――」

「あぁあああ! ウソ、ウソ、めっちゃウソ! 本当はどうしても姉ヶ崎のお手伝いがしたいです! 姉ヶ崎が一人で大丈夫かなぁ~!? もう、心配で心配で……だから、どうかこのわたくしめに貴方様のお仕事を手伝わせていただけませんでしょうかぁああああああああ!」

「えぇ~、そうですかぁ~? もう……なら、仕方ありませんね♪

 じゃあ、センパイにもアタシの手伝いさせてあげますよキャピ!

「あ、ありがとうございます……」


(こいつ、やり方が姉に似てきたな……)



「それで、姉ヶ崎はこの後、どうやって参加者を増やすつもりなんだ?」

「へ……? それは、センパイがこれから考えてくれるんじゃないんですかぁ~キャピ?

「お前なぁ……。いいか、それを俺がやったら『手伝い』じゃなくなるだろ? 確かに昨日はサービスで俺が説得に回ったりもしたが『ミスコン』は姉ヶ崎の仕事なんだから、自分の仕事は自分でやらなきゃ意味がないだろ?」

「せ、センパイ……」

「それに、お前……それだと俺が石田に仕事を押し付けて楽してるのと一緒だならな?」

「あ、自覚はあったんですねぇ~」


(もう少しで、センパイが言うな! って、ツッコむところでしたよぉ~キャピ!


「でも、実際にこれ以上の参加者を集めるのも難しいんですよねぇ~?」

「姉ヶ崎って、クラスではそこそこ人気なんだろ? 自分のクラスメイトに『アタシも出るから一緒にミスコン出ようキャピ!』とか言えば皆出てくれるんじゃないのか……?」

「センパイ……それ、マジで言ってます……? アタシがそんなこと言ったら、断られるどころかクラスの女子を敵に回すことにことになるじゃないですかぁ~」

「え、何で!? 今のどこが悪かったの!」

「悪いも何も全部ダメダメですよぉー! いいですか? 今、センパイが言ったキモイ台詞は女子にとってはこう聞こえるんですよぉ~?」

「おい、キモイは余計だろ……。で、どう聞こえるんだ?」


「『アタシも出るから一緒にミスコン出ようアタシのために前座になってくれるよねキャピ!』」


「被害妄想も甚だし過ぎだろ!?」

「センパイ、実際にどういう意味で言ったかは重要じゃないんです! 大事なのは……相手がどう受け取ったか? なんですよぉ~キャピ!

「ど、どう……受け取ったか?」

「はい! そうですねぇ~? 例えばですけど、石田センパイがやってきて……。


『安藤、君は知らないと思うから、僕が親切で教えてあげよう。

 おっぱいは湯船につかると浮き上がるんだ!

まぁ、君には一生縁のない光景かもしれないと思うがな……。

ハッハッハ!』


 ――って、言ったらどう思いますかぁ~?」

「余計なお世話じゃコンチクショォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


(何が親切じゃぁぁあああああああ! 一生縁が無くて悪かったですね! 畜生……俺だって……俺だってなぁ……)


「うっ……うぅ!」


(うわぁ……。センパイ、マジ泣きとかドン引きなんですけどぉ……)


「センパイ、これで分かりましたか? つまり、これを石田センパイが本心でセンパイにとって一生縁のない光景だと思って親切で言っていたとしても……」

「なるほど、受け取る人によれば相手の意図は関係なく悪意にとらえられる可能性があるわけか……」

「そういうことですキャピ!


(でも、ムカついたから、石田には今度会った時に仕返ししてやろう……)


「センパイの方こそ、桃井センパイみたいに、誰かミスコンに誘える友達いないんですかぁ~? こういうのは女子に誘われるより、男の子にお願いされた方が女子も出る口実になるんですけどねぇ~」

「そう言われてもなぁ……。そもそも、俺にそんな友達が多ければこんな苦労はしてないんだよなぁ……。てか、男子に誘われた方が『出る口実になる』って、どういうこと?」

「まぁ、簡単に言えばプライドの問題ですかねぇ~? こういうミスコンってある程度、自分に自信がある女の子は大抵興味はあるんですよ。でも、それで負けたらやっぱりプライドが傷つくから出るのを止めちゃうんですよね。

 そ・こ・で! 男の子から誘われたら『この子が是非って言うから仕方なくて~』って、負けても言い訳の保険が効くじゃないですかぁ~?」

「ああ、そういうことね……」


(つまり、桃井さんが参加条件として、俺に煽てられて仕方なく参加したのと同じ理論ってことか。なんか、女子って難しいなぁ……)


「う~ん、このままじゃ、五人目で手詰まりですよぉ~……センパ~イ!」

「そうだな……。よし!

 とりあえず、委員長の名前でも勝手に入れとくか?」

「そ、そんなことしていいんですかぁーっ!?」

「え、だって……


『男の子にお願いされた方が女子も出る口実になる』


 ――って、言ったのは姉ヶ崎だよ?」

「その『お願い』すらしてないんですよねぇ~……」

「大丈夫、大丈夫! 本番当日に司会だって騙して呼び出せば断るに断れなくなるだろ。それに、姉ヶ崎の言葉を信じるなら委員長も『興味はあるけどプライドが邪魔して出れないタイプ』だから、俺はその委員長の胸を押してあげるだけさキャピ!

「センパイ、押すのは胸じゃなくて背中です……。胸を押したらただのセクハラですからねぇ~?」


(う~ん、アタシの感からすると委員長センパイはガチでミスコンとかに興味ないタイプだと思うんですが……)


「センパイ、本当にいつか刺されますよ……」





【次回予告】


「皆、あけましておめでとう! 委員長よ♪

 新年最初の『何故かの』更新だからもっと話したいことはあるのだけど……

 残念ながら、このあと『包丁凶器』を買いに行かないとダメなのよね。


 だから、今回の次回予告はパパっと終わらせるわよ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「サービス」 よろしくお願いします!


「クフフ……次の被害者は誰なのかしらね……。

 じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



 チョキ包丁かな?



    チョキ包丁かも?



チョキ包丁じゃない?




         チョキ包丁だったりして……

















 本当にチョキ包丁を出してくるかもしれないわよ……?

















グー包丁!】


「クフフ……冗談に決まっているでしょう?

 皆のコメント、評価、待ってるわね♪」


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