第264話「コンテスト」


「安藤くんの部屋に来るのも、なんだかずいぶんと久しぶりな気がするわね」

「そうだね。朝倉さんの家にはしょっちゅう行っているけど、ここ最近は生徒会も忙しかったから俺の家に朝倉さんが来ることはなかったもんね。だから、妹の奴も朝倉さんが家に来てくれて喜んでいたよ」

「私だって久しぶりに妹ちゃんとたくさん話せて楽しかったわ」

「因みに、妹とはどんな話をしたの……?」

「そ、それは……ウフフ、私と妹ちゃん二人だけの秘密よ♪」

「うわぁ……。余計気になるなぁ……」


(なんだろう、俺の悪口とかで盛り上がってたんじゃないよね?)


(冬は厚着ができるから、自然と胸のサイズをコーディネートでごまかせるって話題で盛り上がってたなんて言えないわ……)


「でも、久しぶりに来ても安藤くんの部屋はあまり変わってないのね」

「まぁ、俺はあまり買い物もしないからね。買ったといえば相変わらずラノベだけだよ」

「そう言われてみれば確かに本棚だけ前に来たよりもスペースが埋まっているわね……。因みに、ここ最近の安藤くんのおすすめは何かしら?」

「最近のおすすめか……。そうだね、これなんかどうかな?」

「これは『編集部怖し』? タイトル的にラノベ作家ものライトノベルかしら?」

「そう思うよね……? ところがどっこい! このラノベはラノベ作家ではなくラノベ編集に焦点を当てたライトノベル、つまり編集ものラノベなんだよ!」

「編集ものって、また珍しいわね……」

「確かに、ラノベではあまり聞かないかもしれないけど、マンガだと昔からあるジャンルなんだよね。ほら、少し前に実写ドラマ化した売れない漫画家が重版を夢見ながら借金してガチャを回す『重版失態!』とか、去年アニメ化もした『七色カラーズ』の作者さんもラノベ編集が主人公の『金の玉GO』ってマンガを描いているんだ」


(まぁ『金の玉GO』の方は二巻で打ち切りになっちゃったんだけどね……)


「ふむふむ……なるほど、どれも面白そうね。それにしても、安藤くんってラノベも詳しいけど、マンガもかなり読んでいるのね。それにしては本棚にマンガが少ないけど……?」

「うん、マンガって大体……十分から二十分くらいで読めちゃうから、ラノベと比べちゃうとコスパが悪いんだよね。だから、マンガに関してはなるべく雑誌で読んで雑誌がある程度溜まったら処分するようにしているんだよね。じゃないと、本棚が足りなくて……」

「その気持ち私も分かるわ~」


(本棚のスペース問題はすべての本好き共通の悩みよね……)


「そういえば、安藤くん。モモから聞いたんだけど、姉ヶ崎さんとミスコンの参加者集めをしているのよね? 参加者集まりそうかしら?」

「それが、あまり順調じゃないんだよね……。実はまだ五人しか集めれていないんだよ」

「やっぱり、難しいのね。どうすれば参加者が集まるのかしら……?」

「朝倉さんが出た去年のミスコンもやっぱり参加者はなかなか集まらなかったのかな?」

「えっと……去年のミスコンまでは三年生の誰かが優勝するのが当たり前だったからか、一年、二年生はともかく、三年の女子生徒は辞退する人以外はほぼ参加するのが当たり前になっていたみたいね」

「ああ、そうか。そう言えば委員長もそんなこと言っていたような気がするなぁ……」


(それで、去年のミスコンで一年の朝倉さんが優勝しちゃったから、今年は上級生は下級生に負けるのを嫌がって参加しなくなり、下級生も参加しようとすると下手に目立つので参加を控えるという負の流れができてしまったわけだな)


「こうなると、ミスコンのシステム自体に問題があるような気がしてくるな……。なんか、もっと他の生徒が気軽に参加できるシステム変えるとか……」

「でも、安藤くん? 文化祭まであと数週間しかないのに、いまさら大掛かりな変更はしている時間はないんじゃないかしら?」

「そうなんだよね……。せめて、文化祭の二か月前とかに言ってくれてればなんとか卑怯な手段を使うこともできたんだけど……」

「安藤くん? 別に、時間があっても卑怯な手段は使ってはいけないと思うわよ?」

「なんか、手軽に参加者が増えるいい方法はないかな……」

「そうだわ! 安藤くん、こういう時は別の物事を参考にしてみればいいのよ!」

「別の物事って……例えば?」

「そうね……。やっぱり、私達って言ったら『ラノベ』でしょう? ほら『ラノベ』でコンテストって言ったら何か思い浮かばないかしら?」


(そう! ラノベでコンテストって言えば、あの角●が経営する小説投稿サイト『カクカク』の『カクカクコン』が現在開催中――)


「うん『な●コン』だね! 朝倉さん!」


(安藤くぅううううううううううううううううううううううううううううん!?)


「でも、確かに『な●コン』の参加システムって便利だよね。作品のタグ付けだけでコンテストのエントリーができるんだから」

「そ、そうね! でも、他の小説コンテストでもタグ付けだけでコンテストにエントリーできるものはたくさんあるのよ! そう、例えばカクカクの――」


「か、カクカク……? コンテスト……最終選考……う、頭が……!?」


「安藤くん、この話はやめましょうか……」


((コンテスト受賞って……いいなぁ……))


「まぁ、そう考えると……ミスコンも、な●コンも似たようなものだよね」

「いや、全然違うと思うわよ……?」


(でも、中々いい案は浮かばないのね……)


「はぁ……もし、私もミスコンに参加できたら……」


(そしたら、一名だけでも参加者を私で埋めることができたのに――)


「え……朝倉さん、何を言っているのさ? 別に、今更ミスコンに参加しなくても、朝倉さんが『学校一の美少女』なのは俺が誰よりも知っているよ!」

「ふへぇ!? いや……あ、安藤くん? 私が言いたかったのはそういうことじゃなくて、私が参加出来たら参加者枠を一人でも埋められたって意味で……」

「うぇ!? あ、そうか……ごめん! お、俺ってば少し勘違いしちゃった……」

「べ、別に、いいわよ……だって、安藤くんがそう言ってくれるのは嬉しいもの……」


「朝倉さん……」


「安藤くん……」



((あ、なんか久しぶりに良い雰囲気……))





「ぐんみゃぁ~」 ← ドアの向こうから響くノベの鳴き声


「「…………」」


(念のためにドアの向こうを確認してみるか……)


 ガチャ ← 安藤くんが部屋のドアを開ける音


「あ……お、お兄ちゃん!? えっと……デザートでもどうかな~? なんて――」

「…………」


 バタン! ← ドアを閉めた音


「朝倉さん、なんかごめん……」

「と、とりあえず! どうすればミスコンの参加者を増やせるか考えましょうか!」

「そ、そうだね! 朝倉さん!」


(うぅ、いつもはヘタレな安藤くんが積極的になってくれたチャンスだったのに……


妹ちゃんってば、何でそんなところにいるのよぉおおおおおおおおお!)






【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 あれ……もしかして、わたしの出番またスルーされてない?


 そういえば『何故かの』1巻の重版が決定したわよ。これも、書籍を買ってくれた皆のおかげね。どうもありがとうね♪

 また、書店に行ったけど売ってなかった! なんて人は来週あたりには大型書店に重版分も並ぶと思うから買いに行くチャンスかもしれないわよ。

 皆、これからも『何故かの』と、わたしの活躍出番を応援よろしくね? クフフ♪


 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「Dは移る」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ? 

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 



 チョキかな?



    チョキかも?



チョキじゃない?




         グーだったりして……

















 本当はチョキを出してくるかもしれないわよ……?


















【グー!】


「皆のコメント、評価、待ってるわね♪」





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