第238話「ハロウィン」



「「「トリック・オア・トリート!」」」



「フン、廊下が騒がしいと思ったら、ハロウィンか……くだらないな」

「石田、そんなこと言ってやるなよ? それに、放課後になるとリア充が騒ぎ出すのはいつものことだろ」

「安藤。だけど、ここは学校だぞ? 例え放課後としても校内で『お菓子』を配るような行為は控えるべきだ」

「はいはい、頭がお堅いことで……」


(しかし、暇だなぁ……。生徒会の女子メンバーは、何かミーティンがあるって何処か行っちゃったし……一体、何が悲しくて放課後の生徒会室で石田と二人っきりにならなきゃいかんのか?)


 コンコン!


「ん、誰か生徒会に用事か?」

「え、この時間に……? えーと、どうぞ?」


(一体誰だろう……。面倒な相手だったら石田にパスしよう)


「おじゃましまーす♪ あ、いたいた! 安藤くん、ヤッホー♪」

「桃井さん!?」


(え、何で桃井さんが生徒会室に……? てか、桃井さん! なな、なんで、ユニフォーム姿なのぉおお!?)


「桃井さん……その姿どうしたの?」

「えへへー、実はさっきまで部活しててその格好のまま来ちゃったー、てへ?」

「部活って……確か、バレー部だっけ?」

「安藤くん、私の部活覚えてくれてたのー!?」

「う、うん……」


(最初にバレー部って聞いて『だから、胸にバレーボール二つも詰め込んでるのか!』って、印象に残ったから……なんて言えない!)


「てか、桃井さん。生徒会に何か用事でもあるの? 朝倉さんならちょうど、出ているけど……」

「えへへー、用事なんてそんなの一つしかないに決まっているでしょー?

 安藤くん、トリック・オア・トリート!」

「いやいや……トリック・オア・トリートって、桃井さんハロウィンの仮装してないよね?」

「ぶぅー! 安藤くんてば、何を言っているのかなー? 仮装ならもうしてるじゃん! ほら、このユニフォーム♪」

「それは部活姿のまま来ただけだよね!? てか、それを『仮装姿』で押し切るつもりなの!?」

「もう! 男の子がそんな細かい所を気にしちゃメッ! だよー? そ・れ・に……安藤くんは私のユニフォーム姿を見て嬉しくないのかなー?」


(まぁ、本当は……ハロウィンにかこつけて安藤くんに部活姿のユニフォームを見せて、その反応を楽しみながら……ついでにお菓子も貰っちゃおうって作戦なんだけどねー♪)


「うっ……そ、それは――」


「んー?」 ビックバァーーン! ← ユニフォームに包まれた二つのバレーボールがミチミチになっている音


(神様……教えてください! この目の前にあるカボチャおっぱいは『イタズラ』ですか!? それとも『ごちそう』なんでしょうか!?)


「分かったよ……。答える代わりにこのお菓子をあげるから許してくれないかな……?」

「わーい!ハッピーハロウィンだねー! 安藤くん、ありがとう♪」

「う、うん……じゃあね? 桃井さん」


(ふぅ……もしもの時のためにと、持って来たお菓子があって助かったぜ……)


「……おい、安藤」

「ん? 石田、何だよ」


(そう言えば、桃井さんがいる間、石田の奴やけに大人しかったな……)


「浮気か?」

「ちげぇえよ!?」

「いや、スマン……僕が口をだすことじゃなかったな……しかし」

「だから、違うって言ってんだろ!? 石田、お前バカじゃねぇの!? 何で今のが浮気に見えるんだよ! てか、そんなの朝倉さんに聞かれたらヤバイから――」


 ガラガラ~


(ハッ! 生徒会のドアを開ける音!? ま、まさか、朝倉さんが――)


「安藤くん、いるかしら?」

「何だ委員長か……」

「入って早々に、失礼な言い草ね! わたし何かしたかしら!?」

「登場が紛らわしいんだよ……。それで、委員長。俺に何か用?」


(てか、今日の生徒会は来客が多いな)


「安藤くん、今日はなんの日か覚えているかしら?」

「まさか、委員長まで『ハロウィン』とか言うんじゃあないだろうな……?」

「クフフ、なんだ分かっているじゃない? 安藤くん、正解よ♪

 そういうわけで――」


(まさか、本当に委員長もハロウィンで来たのかよ……。てか、委員長が『トリック・オア・トリート』って言う姿、想像できな――)


「『トリート・オア・トリート』よ。さぁ、私にごちそうをよこしなさい!」

「ただの脅迫じゃねぇか!?」


(とんでもねぇ! 委員長の奴、ただお菓子を強奪しに来ただけだった!)


「てか、委員長? ハロウィンの風習しっている? ハロウィンってただの強盗じゃなくて仮装をしなくちゃいけないんだけど?」

「そんなの当然知っているわよ?」

「え、でも……委員長いつもどおりの制服だよね?」

「安藤くん、貴方の目は節穴かしら? ほら、この本を見て見なさいな」

「本って委員長が持っている本? えーと……なんだホラ吹きの少年が30歳の誕生日を迎えたある日、選ばれた魔法使いとして覚醒する有名なファンタジー小説の『ホラーポッター』だよね?」

「そうよ。ハロウィンだから、魔法使いモノのファンタジー小説を持って来たのよ!」

「本を仮装代わりにするなよ!」


(まったく、手抜きにもほどがあるだろ……。委員長なら、桃井さんまでとは行かなくても胸に立派な隠しカボチャが二つもあるくせに……)


「グダグダと小さい事にこだわる男ね? あるのは桃井さんから聞いて知ってるんだから、さっさとあるものを出しなさいな」

「言っていることが借金取りのソレなんだよなぁ……。ほらよ」

「安藤くん、お菓子ありがたく貰っておくわね? さらばよ。アデュー♪」


(まぁ、委員長には生徒会関係で迷惑もかけてるし、お菓子くらいなら安いもんだろ)


「安藤……君って奴は」

「な、何だよ……。石田?」

「一体、何股しているんだ……?」

「だから、ちげぇえって言っているだろ!? てか、石田! お前には今の俺と委員長がそんな関係に見えたの? 俺、ただ立ちの悪い取立て屋にお菓子を巻き上げられただけだよね!?」

「君がそう思うんなら、そうなんだろうな……。まったく、生徒会のトップがハロウィンなんかで浮かれるとは情けない……」

「これでも俺、判子を押すだけだけど、現在進行形でお仕事してるよ……?」


 ガラガラ~


(――って、また来客だとぉおお!? これじゃあ、マジで俺がスケコマシのハーレム系ラノベ主人公みたいじゃん!)


「えっと……い、石田くん。まだいる……かな? あ、いた!」


「藤林!?」

「藤林さん!」


(え、てか……藤林さんのその格好――)


「ふ、藤林……そのマントと帽子はどうしたんだ?」

「え、えっとね……石田くん。今日って実はハロウィンなんだよ……知ってた? だ、だから、魔女のコスプレで演劇部からマントと帽子を借りてきたんだ……。えっと、えっと……『トリック・オア・トリート』なんちゃって……」

「そ、そうか……」

「…………」


(藤林さん『仮装』じゃなくて『コスプレ』って言う辺り、オタク臭さが隠しきれてないよなぁ……)


「えっと、その……石田くん。わ、私の格好……に、似合っているかな? かな?」

「藤林……はっきり言わせてもらうが――」

「ッ!?」


(ヤベ! そう言えば石田の奴、さっきまでハロウィンで皆浮かれてるって怒ってたんだった! ちょっと、藤林さん! 頭の固い石田に学校でコスプレはまずいんじゃ――)


「何だ……まぁ、悪くないな……うん」

「ほ、本当!?」


「石田ぁ――あ、あれ……?」


(あっれぇ~? ちょっと、石田さん? さっきと様子が違いませんかねぇ……?)


「藤林、これはたまたまなんだが……今確認したら偶然お菓子が僕のポケットに入っていたんだ。そうだ! 確か今日はハロウィンだったな……。藤林、捨てるのももったいないし、貰ってくれると嬉しいんだが……」

「う、うん! ありがとう、石田くん!」


「あ、あれ? おーい? ちょっと、石田さーん? ここ、学校だよー? てか、生徒会室だよー? 俺もいるよー?」


「えっと……石田くん? 安藤くんが何か言っているけど……?」

「ふむ、外野がうるさいな……。よし、藤林! 今日の生徒会は終わりにして、もう帰るとするか!」

「うえええ!? 石田くん! そ、それはダメなんじゃないかな……? それに、衣装だって演劇部に返さなきゃいけないし……」

「演劇部に返すのは明日でもいいだろう? それに、生徒会の仕事なんか明日やればいいんだ! 藤林、僕達は付き合っているのを隠してないんだから堂々としていいんだぞ!」

「そ、そう言われると……そうなのかな? かな?」


(でも、石田くんのテンションがこんなに高いのも珍しいし……今日だけいいよね?)


(……ふむ、ハロウィンもなかなか悪くないものだな)


「いやいや、ダメだよぉ~? 石田ぁ~? いろんな意味で戻って来ーい?」


「よし、帰るぞ藤林!」

「う、うん……石田くん」


 ガラガラ~ピシャン! 


「マジで帰りやがった……」


(あの野郎、散々ハロウィンで周りが浮かれているとか言ってたくせに……)


「てか、石田も帰ったし朝倉さんが戻ってきたら俺も帰ろうかな」


 スカラカラ~ ← 朝倉さんがドアを開ける音


(お、この音は! 委員長とは違って、ちょうど良いタイミングで――)


「あ、安藤くん!」

「兄ちゃん!」

「センパーイキャピ!


「「「ハッピー・ハロウィン!!!」」」


「朝倉さん!? って、妹に、姉ヶ崎まで! 三人まとめて、もしかしてその格好するために外に出てたの……?」


(小さいツノと尻尾を付けて『小悪魔』の格好をした姉ヶ崎後輩に『ネコ耳』をつけた妹(おまえ少し手抜きじゃね?)……と、朝倉さんは何だ? 黒いマントに首からバケツをぶら下げたドヤ顔……あ! 牙がはえてる! って、ことは吸血鬼の仮装なのかな?)


「センパーイ、大当たりですぅ~♪」 キャピ!

「えへへ~、お兄ちゃん、すごいでしょ!」 ニャーン♪

「ウフフ♪ 安藤くん、どうかしら?」 スカーン!


(うーん、どうやら、俺も石田のことは悪く言えないみたいだなぁ……)


「うん、とても似合っているよ」


「「「わぁーい! ハロウィンドッキリ大成功!」」」


(朝倉さんはそれでいいのかなぁ……? 首からバケツをぶら下げた吸血鬼って……)


「じゃあ、安藤くん!」

「お兄ちゃん!」

「センパーイ♪」


「「「トリック・オア・トリート!」」」


「はいはい……あ!」


(やべぇ……桃井さんと委員長にあげた分で、お菓子なくなっちゃった……。)


「えっと……じゃあ『トリック』で……な、なんちゃって?」


「安藤くぅーん……?」

「お兄ちゃーん……?」

「センパァーイ……?」


「ご、ごめんなさーい!」



 この後、コスプレ少女三人による『イタズラおしおき』が安藤くんを襲ったのだった。





【次回予告】


「モグモグ……まぁまぁ、な味ね……あ!

 み、皆……? いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

『何故かの』の時間軸が現実とちょうど被ったことで急遽書いたハロウィン回どうだったかしら?

 さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「このへんのラノベがすごい」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 




































【チョキー】


「ハッピー・ハロウィン♪

 皆のコメント、評価、待ってるわ♪」

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