第227話「禁断の果実」
『ついに、残る競技もあと二つです! 両高校のポイントは北高320点に対し南高240点と結構な差を付けられていますが、しかし! この「二人三脚」と最期の「リレー」の結果次第では十分に逆転のチャンスはあります!』
「安藤くん! もう、残り二競技だけだけど……このままで、本当に勝てるの?」
「朝倉さん、それは正直厳しいね。予定ではもう少し追い詰めてほしかったんだけど……」
(やっぱり、北高のお坊ちゃまが金の力で集めた選手が強かったり、こっちの主力として期待していた山田や沢渡の運動部が思ったより活躍しなかったのが痛いな……。特に山田なんか、昼休憩に『サンドイッチ食いたくなったから、買いに行ってくるぜ!』とか言ってコンビニに行った挙句、迷子になって午後の競技に間に合わず不戦敗になると言う『サンドイッチ・キル』をされたからな……)
『ここまでの二人三脚は北高の圧勝です! さぁ、次のレースも北高の強さを見せてくれるのでしょうか!? それとも、南高が意地をみせるのか!?』
「まさか、あたしが委員長と二人三脚のペアを組むとは意外だったなー。えへへ、宜しくねー、委員長?」
「え、ええ……わたしで桃井さんのペアが務まるか分からないけど、努力はするわ……」
(まったく、安藤くんってば……桃井さんのペアに何で私を選んだのかしら? 別に、私は桃井さんほど運動が出来るわけじゃないし、身長も全然違うから、他のこの方がペアにはふさわしいはずなんだけど……)
(うーん、安藤くんは『くじの結果で委員長がペアになったけどいいかな?』って、言ってたけど本当かなー? まぁ、あたしは委員長と二人三脚のペアを組むとか面白そうだから、引き受けちゃったけどねー)
「ねぇ、安藤くん。モモのペアって何でくじ引きで選んだの? もっと、モモと身長とか近い子を選んだ方が良かったんじゃないかしら?」
「まぁ、それでも良かったんだけど……体育祭のルール的に殆どの生徒が何かしらの競技に出るように調整が必要だったのが原因かな? 桃井さんのペアを決める時に、出場競技が少ない生徒だけで抽選したら、それがたまたま委員長だっただけだよ。ほら、委員長って実行委員もしてるから出場競技が少ないでしょ?」
「あ、なるほどね」
(まぁ、それは嘘なんだけどね。本当はくじなんてしてないし、桃井さんのペアを委員長にした理由はちゃんとある……。
そう、それは――)
『よーいドン!』 ビッグバーン! ← ピストルの音
「委員長、いくよー!」 ビッグ!
「ええ、桃井さん!」 バーン!
(これだぁあああああああああ!)
「いち!」 ビッグ――
「に♪」 バァアアーーン!
「いち!」 ビッグ――
「に♪」 バァアアーーン!
『こ、これは……なんと言うことでしょぉおおおおおおう!? ゆ、揺れています! は、はじけています! お、踊っています!? 南高の選手の両名の選手の胸がまるで火山が噴火するかのような勢いで上下左右にと縦横無尽に暴れまわってます!』
「「む、胸の揺れを実況しないで!!」」
「「「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」」」
『これには会場の男子も大興奮だぁああああああああ! おっと! 他の二人三脚の選手も男子が足を止めて見た所為であちらこちらで転倒したり、カップルの参加者が揉めたり、男子同士はもはや座り込んで鑑賞したりと誰一人走っておりません!』
「うぅ……まさか、安藤くんってばこれを狙ったんじゃないでしょうね……?」
「アハハー♪ もう、安藤くんてば……これは後でおしおきが必要だねー♪」
「桃井さん、とりあえず今はさっさとゴールしてこの状況から逃げないかしら?」
「うん、委員長。あたしもその意見に賛成かなー? じゃあ、行くよ――」
「いち!」 ビッグ――
「に♪」 バァアアーーン!
「いち!」 ビッグ――
「に♪」 バァアアーーン!
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
「「もう、見ないでーー!」」 ビッグバーン!
(おっしゃぁぁああああああああああああああ! 我が生涯に一片の悔いなし……ッ! 俺はこの光景を見るためだけに二人三脚の一レースを捨ててでも桃井さんと委員長のペアを意図的に仕組んだのさ! だって、二人三脚だよ!? 女子同士が組んだら二つのメロンが二倍になってメロンメロンになるんだよ? そもそも、メロンは二つで一セットだから、それが二倍になってメロンメロンメロンメロンになるわけだ! しかも、これはただのメロンではないぃいいい! 片方のメロンはメロンの中でもトップクラスのメロン!
そう、ビッグバンマスクメロンなのだ! 南高のメロンは世界一ィイイーーッ! さらに、もう片方のメロンも本人が目立ちたくない性格であまり知られていないが、アイツは名前がないメロンのくせに、南高でも四人しかいないという『Dのカップ』を受け継ぐ『隠れD』の一人なのだ! だからこそ、俺はこの『二人三脚』という競技を見つけた時に夢みたのだ……。そう、このグラウンドラインに四つの特大メロンが自由に駆け回る姿を見たいと――)
「安……藤ぉ~く――ん……?」
「――ハッ! あ、朝倉…………しゃん?」
「あらあら~、さっきから、視線が『ブルンブルンのバルンバルン』に揺れているけど……一体何をそんなに見つめているのかしらねぇ~?
「いや……朝倉さん、違うんだ! これは、禁断の果実がこのエデンに落ちただけで――」
(ヤバイ! このままだと、朝倉さんがまたバーサーカーソウルを発動してしまう!?)
「ねぇ、安藤くん……私を見て?」
「え、ちょ――」
(おわ! そ、そんないきなり顔を近づけられたら、胸元が見えて……って、もしかして、朝倉さん拗ねてる? そうか、俺が他の女の子の胸ばっかり見てたから、対抗してわざと自分の胸元を見せようとして……でも、俺にとって誰よりも好きなのは朝倉さんなんだ。そこに、胸が小さいとか大きくないは関係ない! それをちゃんと伝えるためにも……ここは、見えそうな胸元は無視して、朝倉さんの目だけを見るんだ!)
「――うん、見てるよ」
「あ、安藤くん……」
「朝倉さん……」
(そう、これでいい。今は胸元ではなく、目の前の朝倉さんだけを見――)
「何で私の『胸元』はガン無視なのよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお! ムキャァーーッ!」
「アダァダダダア!? あ、朝倉さん! ヘッドロックが! ヘッドロックがかかって――アダァダダダ!」
(畜生、正解は逆だったのかぁぁあああ!? てか、彼女に『私を見て……』って、言われてガラ空きの胸元をガン見する彼氏が何処にいるんだよ!? どんな孔明の罠だ!)
「……もう、次に私以外の『おっぱい』に目移りしたらこの程度じゃ許さないんだからね!」
「は、はい……てか、朝倉さん、最近ヘッドロックがやけに上達したよね……」
(ふぅ……何かあるたび、頭に噛み付かれる主人公の気持ちが分かった気分だよ……)
(ふ、フン! 私だって、安藤くんと付き合う前はこんなにヘッドロックを決めるようになるとは思わなかったわよ! もう、何かあるたびに、主人公にビリビリしちゃうヒロインの気持ちが分かった気分だわ!)
「なんだか、最近の朝倉さんって、どこぞの某『とある』メインヒロインみたいになってきたよね……」
ピキッ!?
「だ、だれが……存在感が薄いメインヒロインですってぇえええええええ!?」
「いや、違う! 朝倉さん、そういう意味じゃなくて!?」
「どうせ、皆そのうちに私のことを『朝……なんとかさん』とか『薄倉さん』って、言うんでしょ!? ええ、どうせ私は胸も薄ければ存在感も薄いわよ!」
「まさかの自虐ネタァ!? てか、朝倉さん実は気にして――」
「――って、誰が胸も薄ければ存在感も薄いよおぉぉおぉおぉおおおおおおお!? ムキャァーーッ!」
「しかも、逆ギレだとぉお!? アーダァアダダダアア!?」
『ゴォール! 一着は予想通りの「桃井さん、委員長ペア」でしたー』
「安藤くん……何してるのかしら?」
「さぁー? でも、あたし達がお仕置きする必要も無いみたいだねー♪」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
前回から、わたしと桃井さんの一人称が実は変わっていたりするんだけど、気づいた人はいるかしら?
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「最後の種目」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【グ――】
でも、そのまま【グー】
「また、変えると思った? 皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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