第226話「応援格差」
『合同体育祭もついに前半の競技が全て終了し、残るは午後の競技のみとなりました! 午後の競技は、両高校の応援合戦から始めたいと思います! まずは北高演奏団による『白銀坊ちゃま四重奏』です。では、どうぞぉー!』
「はぁ~、なんでミュンヘンのコンクールに出るような俺達がたかが高校の応援合戦なんかで演奏しなきゃなんねんだよ?」
「ハハハ! そんな嘆くなよ? たまには学生の相手もいいじゃないか。それに、このおままごとに付き合って演奏するだけで、コンクールで優勝する以上の報酬がもらえるんだからな?」
「ナッハッハ! まちがいねぇ! 確かに、金払いだけは最高だな! まったく、お坊ちゃまってのは最高だぜ!」
「ああ、こんな学生達に俺達の演奏なんか分からんだろうし、適当に演奏して金だけもらおうぜ!」
「そうだな!」
「……少し、よろしいでしょうか?」
「おっと、これは……確か、白銀の坊ちゃんに付いてたメイドの――」
「早坂です」
「そうだった! 早坂のお嬢ちゃんだったな……これから、おたくのお坊ちゃまに依頼された演奏をするんだが何か用かい?」
(おいおい……このメイドさん、英語喋れたのかよ……。母国語なら何を言っても分からないだろうと思ってたが……さっきの会話聞かれてないよな?)
「少し、演奏の前にお耳に入れておきたいことがありまして……北高演奏団もとい『ポータルプツィヒ弦楽四重奏団』の皆様、所詮は坊ちゃまの無駄金で雇われた外部の方々なので、坊ちゃまに対する応援の気持ちなどは皆無だと思いますが……それでも、貴方達と坊ちゃまを唯一繋いでいる物があります。それが分かりますでしょうか……?」
「わ、分かるか……?」
「さぁ?」
「契約書とか……?」
「それは『お金』です!」
「「「ッ!?」」」
「貴方達は既に十分な契約金を貰った上でこの場にいますが、それはあくまで貴方達にこの演奏を依頼した『お金』です。白銀坊ちゃまの『無駄遣い』に関してこの世で右に出るものはいないと、この早坂は断言いたします。はい?『何が言いたいのか?』ですか……そうですね。つまり、坊ちゃまにはまだ貴方達に『報酬』を支払う用意があると言う事です……。ええ、その金額は――貴方達の演奏の成果によるとしか、早坂は言えませんが……」
「おい、お前ら! この演奏だけは何があっても最高の演奏にするぞ! 白銀坊ちゃまに俺達の全てを捧げるんだ!」
「「「うぉおおおおおおおおおおお!」」」
『はぁ~い、とても素晴らしい演奏でしたねー♪ 一体、北高の生徒会長はこの演奏団を呼ぶためにどれほどのお金を使ったのか怖くなっちゃいますね~?』
「ハッハッハ! あの素晴らしい演奏を生で聴けるのなら対した出費ではない、ね
「坊ちゃま、僭越ながら『黙れ』でございます」
――円だ、よ
『この北高の演奏による応援に、はたして我が南高は対抗できるのでしょうか!?
では、南高美少女チアリーディング部隊による応援です!』
「フッ……白銀。人には金で買えないものがあるってことを見せてやるよ!」
(確かに、金では北高には勝てないだろう……しかし、南高には南高にしかないモノがある! そう、それは『美少女』だ! こっちには俺の彼女でもある『学校一の美少女』の朝倉さんの他にも『ビッグバンメロン』こと『学校一の巨乳』である桃井さんや、中身はともかく『見た目だけなら文学少女』で『メガネ属性』の委員長にと『美少女』の多さだけなら、負けてないんだよ! さぁ、見やがれ! これが、これこそが! 俺達の作り出した美少女チア部隊――名づけて『チアーズ!』だぁあああ!)
「う、うぅ……何で、委員長のわたしまでこんな格好を……」 ブルン!
「ほら、委員長も応援しないとねー? ファイオー! 南高!」 ビックバァァアーーン!
「安藤くーん! 私も安藤くんのために精一杯応援するわよ!」 スカーン……
「ふ、ふぇえ……こんな格好恥かしくて踊れないよぉ……で、でも、石田くんも見てくれるって言ってたし頑張らなきゃ……ふ、ふれぇ~ッ!」 ブルンブルン!
「キャハハ~! なにこのチア衣装メチャクチャスカート短いんですけどぉ~? マジでウケる~キャハ
「……やめたげてよお!」
(何、あの配置!? なんかものすごく悪意がある感じなっちゃっているんですけど!? てか、何で間に挟んじゃったの! ……くっ! そう言えば、花のある朝倉さんをセンターに俺が言ったような気が――。か、格差が……応援のダンスで揺れる酷い応援を見てしまった気がする……)
『はーい♪ 両高校とも素晴らしい応援合戦でしたね~♪ では、次の競技にいきましょう! 次の競技は北高VS南高、男子騎馬合戦です!』
「ハッハッハッハ! 最高にリア充な僕が指揮する選ばれたリア充だけで組まれた最強のリア充騎馬部隊が、君達たかが平民の暴徒に負けるはずがないじゃないか、ね
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
『さぁ、始まりました! この合同体育祭見所の一つ、男子騎馬合戦!
北高の生徒会長白銀くんは、高校生とは思えないほど屈強な北高部隊を使って、開始早々から全軍突撃命令を出しました! この猛攻に南高はどうするのでしょうかぁああ!?』
「……よし、敵さん来たぞ。山田、沢渡、罠の準備よろしくな」
「よっしゃぁああ! 安藤、この俺に任せろ!」
「ウェ~イ!」
『おぉおおと!? これは何でしょう! 南高軍、生徒会長の指示を受けた途端に、二組の騎馬がそれぞれ反対方向に走り出しました! ん……? 何やら二組の騎馬の間にロープのような物が見えますね? こ、これは……ハチマキです! よく見ると南高、騎馬の上にいる生徒はハチマキを付けていますが、騎馬を組んでいる方の生徒はハチマキを付けていません! これはその生徒達のハチマキを繋げて作ったロープなのでしょうか!?』
「安藤、準備オッケーだぜ!」
「ウェーーイ!」
「じゃあ、
『そして、南高! このハチマキで作ったロープを北高の軍勢の前に、まるでゴールテープのように力いっぱい張りましたぁあああ!』
「ハッハッハ! 全軍突撃~
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
「ちょ、待って! ロープ! ロープが!?」
「騎馬止まってください! ロープが見えないんですか!?」
「ダメだ! このロープ、下の騎馬の奴らからは視線の上で張られてるから、見えないんだよ!? 止まれ、止まれ! 止まれってば!?」
「生徒会長ぉお!? ダメです! 引いてください! このまま突撃したら――」
「ハッハッハ! キミ達はぁ~何を言っているのか、ね
「「「「「この大バカ坊ちゃまぁあああぁあああああああ!!」」」」」
「だぁーはっはっは! このまま、突っ込めば全員ロープに引っかかって騎馬が崩れるのに突っ込んでくるよ! 沢渡、見ろよ! アイツらバカだぜ? ぎゃっは――ぶぼぉ!?」
「ウェ――ェエエイ!?」
『……な、なんと言うことでしょう! 北高の騎馬部隊ですが……南高が張ったロープに突撃して、殆どの騎馬がドミノ倒しのように崩れてしまいましたぁああ! 僅かですが、後方にいた北高の騎馬は数組ほど数を残しています……が、残った騎馬の差は歴然!? 南高の騎馬はまだ一組も落とされていま――あ、いや……ロープを張っていた二組の騎馬はどうやら北高の騎馬部隊の突撃にロープごと引っ張られて転倒してますね……。し、しかーし! それでも南高の騎馬はまだ二十八組も残っています! 対する北高は僅か六組! これは、勝負あったかー!?』
「やっぱりな……。どうせ、あのお坊ちゃまのことだから、考えなしに脳筋騎馬でも作って全特攻しかけてくると思ったんだよ」
「安藤……お前、考える事えげつないよな……」
「何だよ。吉田? 別に、俺はこの『騎馬戦』に関してはなんらルールを破るようなことはしていないぞ?」
「事前に騎馬役の生徒のハチマキを回収して一本のロープみたいに結んでから騎馬戦に持ち込むのはルール違反じゃないのか?」
「騎馬戦は『競技に関係ない物の持ち込み禁止』だけど、ハチマキは元々この体育祭の用に北高は『白いハチマキ』南高は『赤いハチマキ』と見分けるために用意された物だろ? だから『競技に関係ない物』とは言えない。それに騎馬戦のルール上『騎馬の上に乗る生徒のハチマキが取られた場合、もしくは騎馬が崩れ場合、その騎馬は戦闘不能となる』ってあるけど、騎馬役の生徒もハチマキを付けなきゃダメなんてルールは何処にもない……。よって、俺は『白』だ!」
「いや、俺達は『赤組』だよ……。てか、安藤。お前は本当に山田と沢渡の二人で北高の騎馬を全部脱落させるつもりだったのか?」
「まさか、何十組も突撃する騎馬に、たった二組の騎馬で踏ん張るなんて、そんなの不可能にきまってるじゃん」
(でも――)
『山田、沢渡……俺はお前達を条理を覆すほどの
(って、言ってたきつけたのも俺だけどな……)
「だけど、たった二組の
さぁ、一狩り行こうぜ!」
「安藤……やっぱり、お前は『黒』だよ」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
安藤くんったら、わたしのことを『中身はともかく、見た目だけなら文学少女』って、酷くないかしら?
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「禁断の果実」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パ――】
と、みせかけて【グー】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
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